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【義妹SIDE】薬を必要とした義妹一家はアイリスを呼び戻そうとします
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「うっ……うう。眩暈がしますわ。頭痛が」
ディアンナは病魔に苦しんでいた。
「こ、こんなはずではないですわ。なぜ私が! 私が何をしたというのですかっ! こほっ!」
散々アイリスを虐げ、無実の罪を着せた。その上婚約者まで寝取り、さらには追い出しておいて。それでよくもここまで言えたものだという感じだった。
だがディアンナは本気で自分を悪いと思わない、そういう性格をしていたのである。
だからなぜ善良な自分にこうまでの不運が。ディアンナはそう思っていた。
「マリア、ディアンナ。聞いておくれ」
父は言う。マリアとは母の名前である。
「お前達がかかっている伝染病は世界各国の医者や薬師が苦闘している原因不明の難病らしい」
「な、難病……」
「ど、どういう事ですの!! 私達もう治らないんですの!! そんな、このまま死を待つしかないんですの!」
「ひとつだけ方法があるらしいんだ」
「ひ、ひとつだけ!! なんですのそれは教えてください!! 私なんでもしますわ! まだ死にたくないんですの!」
「それがなんでもその治療薬の調薬に成功した薬師が一人だけいるらしい」
「だ、誰なんですの!! その薬師を連れてきてくださいまし!!」
ベッドで悶えるディアンナは叫ぶ。
「実はだな……」
父は悲痛な顔で告げる。
「な、なんですの。お父様、もったいぶって、早くおっしゃってくださいまし!」
「その薬師は実は私達が追い出したアイリスなんだ!!」
「な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
病気で体力が奪われているにも関わらず、ディアンナは叫んだ。余程ショックだったに違いない。
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ。肺が苦しいのについ大声で叫んでしまいましたわ。な、なぜあの根暗……いえ、間違いました。お義姉さまの名前が」
「アイリスは薬師だった母の意志を継ぎ、薬の研究に没頭した。何でも母が亡くなった原因も、原因不明の病気のせいだったらしい。それからあいつは幼い頃から躍起になって、薬の研究をしていた。それでつい最近、その研究に成功したんだ」
父は涙した。やはり血の通った子供は違うらしい。
「あいつはそれだけ大きな仕事をしていたんだ。そんな尊い研究をしているとは知らなかった。それなのに私があの子が毒を作っていたなどという戯言に騙され、ううっ!」
「なんですのっ! お父様! それはあんまりではありませんの! それではまるで私が嘘をついていたみたいではないですかっ!」
「い、今はそれどころじゃないでしょう! これからどうするか考えましょうよ! でないと私達死んじゃうじゃない!」
マリアとディアンナは叫ぶ。やはり自分の命は惜しいようだった。三人は考えた後、父は口を開く。
「アイリスを呼び戻そう!!」
「根暗――いえ、お義姉様を呼び戻す! そ、そんな! せっかく追い出してロズワール様と婚約できたのに! あんまりですわ!」
「死んだら何にもならないだろう。私だって死にたくない。お前達の介護をしているうちに私の調子も段々悪くなってきた。間違いなく感染しているはずだ。今は大丈夫でもお前達のようにそのうちに寝込むようになるだろうな」
「ぐぬぬっ! ぐぬぬぬっ!」
ディアンナは表情を歪めた。まさかあれだけ大嘘をついて追い出したアイリスを呼び戻す事になるとは思ってもいなかったのである。
「い、今、根暗――いえ、お義姉様はどこにいるんですの?」
「なんでも隣国のルンデブルグで薬師として働いているらしい。ルンデブルグの宮廷に手紙を出そう」
「ぐっ……し、仕方ないのですか、これも」
ディアンナは仕方なく父の提案を飲んだ。こうして手紙を宮廷に出したのではあるが、やはり事態は思いもよらぬ方向に転がっていくものである。
ディアンナは病魔に苦しんでいた。
「こ、こんなはずではないですわ。なぜ私が! 私が何をしたというのですかっ! こほっ!」
散々アイリスを虐げ、無実の罪を着せた。その上婚約者まで寝取り、さらには追い出しておいて。それでよくもここまで言えたものだという感じだった。
だがディアンナは本気で自分を悪いと思わない、そういう性格をしていたのである。
だからなぜ善良な自分にこうまでの不運が。ディアンナはそう思っていた。
「マリア、ディアンナ。聞いておくれ」
父は言う。マリアとは母の名前である。
「お前達がかかっている伝染病は世界各国の医者や薬師が苦闘している原因不明の難病らしい」
「な、難病……」
「ど、どういう事ですの!! 私達もう治らないんですの!! そんな、このまま死を待つしかないんですの!」
「ひとつだけ方法があるらしいんだ」
「ひ、ひとつだけ!! なんですのそれは教えてください!! 私なんでもしますわ! まだ死にたくないんですの!」
「それがなんでもその治療薬の調薬に成功した薬師が一人だけいるらしい」
「だ、誰なんですの!! その薬師を連れてきてくださいまし!!」
ベッドで悶えるディアンナは叫ぶ。
「実はだな……」
父は悲痛な顔で告げる。
「な、なんですの。お父様、もったいぶって、早くおっしゃってくださいまし!」
「その薬師は実は私達が追い出したアイリスなんだ!!」
「な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
病気で体力が奪われているにも関わらず、ディアンナは叫んだ。余程ショックだったに違いない。
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ。肺が苦しいのについ大声で叫んでしまいましたわ。な、なぜあの根暗……いえ、間違いました。お義姉さまの名前が」
「アイリスは薬師だった母の意志を継ぎ、薬の研究に没頭した。何でも母が亡くなった原因も、原因不明の病気のせいだったらしい。それからあいつは幼い頃から躍起になって、薬の研究をしていた。それでつい最近、その研究に成功したんだ」
父は涙した。やはり血の通った子供は違うらしい。
「あいつはそれだけ大きな仕事をしていたんだ。そんな尊い研究をしているとは知らなかった。それなのに私があの子が毒を作っていたなどという戯言に騙され、ううっ!」
「なんですのっ! お父様! それはあんまりではありませんの! それではまるで私が嘘をついていたみたいではないですかっ!」
「い、今はそれどころじゃないでしょう! これからどうするか考えましょうよ! でないと私達死んじゃうじゃない!」
マリアとディアンナは叫ぶ。やはり自分の命は惜しいようだった。三人は考えた後、父は口を開く。
「アイリスを呼び戻そう!!」
「根暗――いえ、お義姉様を呼び戻す! そ、そんな! せっかく追い出してロズワール様と婚約できたのに! あんまりですわ!」
「死んだら何にもならないだろう。私だって死にたくない。お前達の介護をしているうちに私の調子も段々悪くなってきた。間違いなく感染しているはずだ。今は大丈夫でもお前達のようにそのうちに寝込むようになるだろうな」
「ぐぬぬっ! ぐぬぬぬっ!」
ディアンナは表情を歪めた。まさかあれだけ大嘘をついて追い出したアイリスを呼び戻す事になるとは思ってもいなかったのである。
「い、今、根暗――いえ、お義姉様はどこにいるんですの?」
「なんでも隣国のルンデブルグで薬師として働いているらしい。ルンデブルグの宮廷に手紙を出そう」
「ぐっ……し、仕方ないのですか、これも」
ディアンナは仕方なく父の提案を飲んだ。こうして手紙を宮廷に出したのではあるが、やはり事態は思いもよらぬ方向に転がっていくものである。
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