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社交パーティーで王子様とダンスをしてしまいます
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「アイリス様……大変お美しいです」
「ま、まあ……これが私」
真っ赤な赤いドレスを着て、メイドに丹念に化粧を施された私は、自分でも別人のように思えました。
流石に社交パーティーという事で普段の恰好ではいられません。当然のようにまともなドレスを持っていない私は王宮の方でドレスを貸し与えられる事となりました。
「それではアイリス様。向かいましょうか。パーティー会場では主賓のあなた様を皆が待っていますよ」
「え、ええ。ヴィンセント、向かいましょうか」
「はい」
私とヴィンセントはパーティー会場へ向かいます。
◇
パーティー会場は私が見てきたこれまでの光景とは別世界でした。煌びやかなドレスを着た貴族の娘達。それからタキシードを着た男達。煌びやかなシャンデリア。そしてテーブルには豪勢な料理が無数に並んでいます。
さらには音楽隊の達者な演奏も聞こえてきます。流れるような音の調べが会場の雰囲気を俄に盛り上げていくのです。
「まあ、あれがエル王子の命をお救いになった薬師のアイリス様だわっ!」
「あれがアイリス様……!!!」
パーティー会場にいるのは殆どが王族か貴族です。そんな身分の高い方々の注目を浴びた私は大変気恥ずかしくなってしまいます。
そして、件の人物が姿を現します。
「エル王子だわ!」
「エル王子! 本日も素敵ですわ!」
「かっこいい……エル王子」
エルは煌びやかな白いタキシードを着ていました。絶世の美青年である彼は否応なく周囲の視線を集めます。
しかしエルは迷う事なく、私のところまでやってきました。
「アイリス様……」
「さ、様付けはやめてください。エル王子」
「……すまないね。だったらアイリスと呼ばせて貰うよ」
エルは微笑んだ。その微笑みは凄まじく魅力的で私はその場で卒倒してしまいそうになる。
「僕の命を救ってくれてありがとう、アイリス」
「だから言っていますでしょう。エル王子。私は薬師として当然の事をしたまでです」
「それでも同じ事だよ。君の行いで僕は救われた。それに何の見返りも期待する事なく善行を行えるのは中々に出来る事ではない。それは偏にアイリス、君の心が綺麗だからだよ」
「え!?」
思わず私の心がときめいてしまうような事をエルは言ってくる。
社交パーティーが始まる。音楽隊の音楽が違う曲になる。これはダンス用の歌だ。
「アイリス……どうか僕と踊ってください」
エルは手を差し伸べてくる。
「う、羨ましい! あのエル王子とダンスができるなんて!」
「あ、あの女……私なんて、エル王子とダンスできたらその後一ヶ月くらい手を洗わない自信がありますわ!」
「あら! 私なら一年は洗いませんわよ!」
貴族の娘達は意味のわからないところで意地の張り合いをしていた。
「は、はい。エル王子……私でよろしければ」
こうして王子と私はダンスを踊り始める。
「そういえばアイリス……この前の話の内容を覚えているかい?」
「え? この前の話とはなんですか?」
「僕の妻になって欲しいって話さ」
「そ、それは……」
私は口ごもる。あまりに重すぎる提案だ。そんな簡単に決められる事ではない。自分の人生に関わるような一大決断なのだ。
「今はいいよ。今すぐに返事が欲しいわけじゃない。いつかでいい。返事が欲しいんだ」
「そ、そうですか……」
「でもひとつだけ決まっている事がある」
「なんでしょうか?」
「僕の君に対する気持ちはきっと永遠に変わらないだろう、って事さ」
エルは訴えてくる。その強い眼差しは魅力的で私の心をドキドキとさせるには十分過ぎるものであった。
こうして夢のような王宮での社交パーティーの時間は過ぎていくのでした。
「ま、まあ……これが私」
真っ赤な赤いドレスを着て、メイドに丹念に化粧を施された私は、自分でも別人のように思えました。
流石に社交パーティーという事で普段の恰好ではいられません。当然のようにまともなドレスを持っていない私は王宮の方でドレスを貸し与えられる事となりました。
「それではアイリス様。向かいましょうか。パーティー会場では主賓のあなた様を皆が待っていますよ」
「え、ええ。ヴィンセント、向かいましょうか」
「はい」
私とヴィンセントはパーティー会場へ向かいます。
◇
パーティー会場は私が見てきたこれまでの光景とは別世界でした。煌びやかなドレスを着た貴族の娘達。それからタキシードを着た男達。煌びやかなシャンデリア。そしてテーブルには豪勢な料理が無数に並んでいます。
さらには音楽隊の達者な演奏も聞こえてきます。流れるような音の調べが会場の雰囲気を俄に盛り上げていくのです。
「まあ、あれがエル王子の命をお救いになった薬師のアイリス様だわっ!」
「あれがアイリス様……!!!」
パーティー会場にいるのは殆どが王族か貴族です。そんな身分の高い方々の注目を浴びた私は大変気恥ずかしくなってしまいます。
そして、件の人物が姿を現します。
「エル王子だわ!」
「エル王子! 本日も素敵ですわ!」
「かっこいい……エル王子」
エルは煌びやかな白いタキシードを着ていました。絶世の美青年である彼は否応なく周囲の視線を集めます。
しかしエルは迷う事なく、私のところまでやってきました。
「アイリス様……」
「さ、様付けはやめてください。エル王子」
「……すまないね。だったらアイリスと呼ばせて貰うよ」
エルは微笑んだ。その微笑みは凄まじく魅力的で私はその場で卒倒してしまいそうになる。
「僕の命を救ってくれてありがとう、アイリス」
「だから言っていますでしょう。エル王子。私は薬師として当然の事をしたまでです」
「それでも同じ事だよ。君の行いで僕は救われた。それに何の見返りも期待する事なく善行を行えるのは中々に出来る事ではない。それは偏にアイリス、君の心が綺麗だからだよ」
「え!?」
思わず私の心がときめいてしまうような事をエルは言ってくる。
社交パーティーが始まる。音楽隊の音楽が違う曲になる。これはダンス用の歌だ。
「アイリス……どうか僕と踊ってください」
エルは手を差し伸べてくる。
「う、羨ましい! あのエル王子とダンスができるなんて!」
「あ、あの女……私なんて、エル王子とダンスできたらその後一ヶ月くらい手を洗わない自信がありますわ!」
「あら! 私なら一年は洗いませんわよ!」
貴族の娘達は意味のわからないところで意地の張り合いをしていた。
「は、はい。エル王子……私でよろしければ」
こうして王子と私はダンスを踊り始める。
「そういえばアイリス……この前の話の内容を覚えているかい?」
「え? この前の話とはなんですか?」
「僕の妻になって欲しいって話さ」
「そ、それは……」
私は口ごもる。あまりに重すぎる提案だ。そんな簡単に決められる事ではない。自分の人生に関わるような一大決断なのだ。
「今はいいよ。今すぐに返事が欲しいわけじゃない。いつかでいい。返事が欲しいんだ」
「そ、そうですか……」
「でもひとつだけ決まっている事がある」
「なんでしょうか?」
「僕の君に対する気持ちはきっと永遠に変わらないだろう、って事さ」
エルは訴えてくる。その強い眼差しは魅力的で私の心をドキドキとさせるには十分過ぎるものであった。
こうして夢のような王宮での社交パーティーの時間は過ぎていくのでした。
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