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ホワイトな宮廷に薬師として迎え入れました
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「いやぁ! 誠にありがとうございます! アイリス様」
「息子が救われましたわ」
宮廷で私は国王と王妃にそう出迎えられる。国王も王妃もまだ若く、そして美形であった。やはりエル王子の父君と母君であると言える。
二人は私に感謝をし始めていた。
「い、いえ。私は薬師として当然の事をしたまでです」
「とんでもありません。あなた様のおかげで我が息子ーーエルの命が救われたのです」
「母である私からもお礼を言わせて頂きます。息子を失う以上の悲しみが親にあるものでありましょうか。アイリス様。あなた様はその悲しみから私達を救ってくださったのです」
「い、いえ。そんな、滅相もありません。国王陛下、王妃様」
「ヴィンセント、例のものを」
「はっ!」
国王に言われ、執事ヴィンセントから何かを渡される。ずっしりとした小包だ。
「な、なんでしょうかこれは?」
重くてずっしりとした小包。何となく想像がついた。
「あ、あの……開けてみてもよろしいでしょうか?」
「勿論だ。是非、開けてみてくれたまえ」
私は小包を開いた。その中にはびっしりと金貨が詰まっていたのである。
「ま、まあ!」
私は驚きのあまり声をあげてしまった。
「申し訳ない……些かアイリス様の労には見合わなかった。ヴィンセント、もう一袋用意してくれないか?」
「わかりました。国王陛下」
「そ、そうじゃありません! こ、こんな大金受け取れません! わ、私はただ王子の命を助けたかっただけで、こんなつもりじゃ」
「いえ、いいんです。受け取って頂かなければこちらとしても気が休まりません。なにせあなた様は私達の大切な息子を救ってくださったのですから」
「アイリス様、国王陛下と王妃様からのお気持ちです。こちら納めてください」
「わ、わかりました」
考えた末に私は報酬を受け取る事にしました。ですが大量の金貨は持ち帰るにもあまりに重すぎます。一旦は王宮の方で預かって貰う事としました。
両親から一心の愛を受けているエル王子が私は羨ましくもあり、微笑ましくもありました。幼い頃に母を失い、そして継母と義妹に虐げられていた私からすれば。
その上に最近は婚約者であるロズワールを寝取られた末に実家まで追い出されてしまいました。今の私は身寄りもなく、行く当てもありません。
「それで薬師アイリス様、今後はどうされるのですか?」
国王が聞いてきます。
「今後とはどういう事でしょうか?」
「あなた様ほどの腕の立つ薬師であればきっと引く手数多でしょう? どこぞやの宮廷があなた様を手放さないはずです」
「ええ。あなたのような逸材、きっと皆が放っておかないわ」
「い、いえ。実はーー」
私は事情を説明した。細かい事情は話さなかったが、今の私は実家から追い出された上に身寄りもない身であるという事を伝える。
「ええ!! それは本当ですか!!」
王妃は驚く。
「あなた様のような腕の立つ薬師を追い出すなんて信じられない!!」
王妃も驚いていた。
「だが、これは僥倖なのかもしれない。僕達にとっては好都合だ? アイリス様。どうか僕達、ルンデブルグ国で雇われてみる気はないかい?」
「ええ!! わ、私でいいんですか!!」
「勿論だとも。アイリス様だから我々もこう言っているのです」
「それにアイリス様は息子の命を救って頂いた恩人でもあります。私達で手助けになる事がありましたら何でもしたいと考えておりますわ」
王妃は微笑む。
「待遇に関しては最大限の考慮をします。月の給金は金貨200枚」
「ええ!! そんなに頂けるんですか」
「それに労働時間は好きなようにして頂ければ良い。好きなだけ薬剤の研究をして頂き、好きな時に休んで貰っていい」
「お城での扱いは私達王族と同等。国賓として扱うように言っておきますわ。執事やメイドも好きなように扱ってくださいませ」
「それで、ヴィンセント」
「はっ!」
「これから彼女に専属執事として従事してくれ」
「はっ! わかりましたっ! 国王陛下。アイリス様。私、ヴィンセント。誠心誠意アイリス様の専属執事として務めさせて頂きます」
ヴィンセントは傅いた。こんな美形な執事が私の専属執事になるなんて、私にとっては考えられなかった。
「アイリス様、ご不満がありましたら何なりとおっしゃってくださいませ」
王妃は優しく語りかけてくる。
「アイリス様。どうか我々王宮で働いてはくれませんか? あなた様の力は我々、全国民が必要としているのです」
国王陛下は優しく訴えてきます。もはや迷う余地など私にはありませんでした。
「は、はい! 是非よろしくお願いします!」
こうして私はルンデブルグ家に薬師として超好条件で雇われる事になったのである。
「それは良かった。それと後日、息子エルの快復を祝ってパーティーが行われるから、是非参加してくれないかい? アイリス様」
「アイリス様。あなた様は息子エルの恩人です。是非参加をお願いします」
こうして私はエルの快復を祝った社交パーティーにも参加する事になったのです。
「息子が救われましたわ」
宮廷で私は国王と王妃にそう出迎えられる。国王も王妃もまだ若く、そして美形であった。やはりエル王子の父君と母君であると言える。
二人は私に感謝をし始めていた。
「い、いえ。私は薬師として当然の事をしたまでです」
「とんでもありません。あなた様のおかげで我が息子ーーエルの命が救われたのです」
「母である私からもお礼を言わせて頂きます。息子を失う以上の悲しみが親にあるものでありましょうか。アイリス様。あなた様はその悲しみから私達を救ってくださったのです」
「い、いえ。そんな、滅相もありません。国王陛下、王妃様」
「ヴィンセント、例のものを」
「はっ!」
国王に言われ、執事ヴィンセントから何かを渡される。ずっしりとした小包だ。
「な、なんでしょうかこれは?」
重くてずっしりとした小包。何となく想像がついた。
「あ、あの……開けてみてもよろしいでしょうか?」
「勿論だ。是非、開けてみてくれたまえ」
私は小包を開いた。その中にはびっしりと金貨が詰まっていたのである。
「ま、まあ!」
私は驚きのあまり声をあげてしまった。
「申し訳ない……些かアイリス様の労には見合わなかった。ヴィンセント、もう一袋用意してくれないか?」
「わかりました。国王陛下」
「そ、そうじゃありません! こ、こんな大金受け取れません! わ、私はただ王子の命を助けたかっただけで、こんなつもりじゃ」
「いえ、いいんです。受け取って頂かなければこちらとしても気が休まりません。なにせあなた様は私達の大切な息子を救ってくださったのですから」
「アイリス様、国王陛下と王妃様からのお気持ちです。こちら納めてください」
「わ、わかりました」
考えた末に私は報酬を受け取る事にしました。ですが大量の金貨は持ち帰るにもあまりに重すぎます。一旦は王宮の方で預かって貰う事としました。
両親から一心の愛を受けているエル王子が私は羨ましくもあり、微笑ましくもありました。幼い頃に母を失い、そして継母と義妹に虐げられていた私からすれば。
その上に最近は婚約者であるロズワールを寝取られた末に実家まで追い出されてしまいました。今の私は身寄りもなく、行く当てもありません。
「それで薬師アイリス様、今後はどうされるのですか?」
国王が聞いてきます。
「今後とはどういう事でしょうか?」
「あなた様ほどの腕の立つ薬師であればきっと引く手数多でしょう? どこぞやの宮廷があなた様を手放さないはずです」
「ええ。あなたのような逸材、きっと皆が放っておかないわ」
「い、いえ。実はーー」
私は事情を説明した。細かい事情は話さなかったが、今の私は実家から追い出された上に身寄りもない身であるという事を伝える。
「ええ!! それは本当ですか!!」
王妃は驚く。
「あなた様のような腕の立つ薬師を追い出すなんて信じられない!!」
王妃も驚いていた。
「だが、これは僥倖なのかもしれない。僕達にとっては好都合だ? アイリス様。どうか僕達、ルンデブルグ国で雇われてみる気はないかい?」
「ええ!! わ、私でいいんですか!!」
「勿論だとも。アイリス様だから我々もこう言っているのです」
「それにアイリス様は息子の命を救って頂いた恩人でもあります。私達で手助けになる事がありましたら何でもしたいと考えておりますわ」
王妃は微笑む。
「待遇に関しては最大限の考慮をします。月の給金は金貨200枚」
「ええ!! そんなに頂けるんですか」
「それに労働時間は好きなようにして頂ければ良い。好きなだけ薬剤の研究をして頂き、好きな時に休んで貰っていい」
「お城での扱いは私達王族と同等。国賓として扱うように言っておきますわ。執事やメイドも好きなように扱ってくださいませ」
「それで、ヴィンセント」
「はっ!」
「これから彼女に専属執事として従事してくれ」
「はっ! わかりましたっ! 国王陛下。アイリス様。私、ヴィンセント。誠心誠意アイリス様の専属執事として務めさせて頂きます」
ヴィンセントは傅いた。こんな美形な執事が私の専属執事になるなんて、私にとっては考えられなかった。
「アイリス様、ご不満がありましたら何なりとおっしゃってくださいませ」
王妃は優しく語りかけてくる。
「アイリス様。どうか我々王宮で働いてはくれませんか? あなた様の力は我々、全国民が必要としているのです」
国王陛下は優しく訴えてきます。もはや迷う余地など私にはありませんでした。
「は、はい! 是非よろしくお願いします!」
こうして私はルンデブルグ家に薬師として超好条件で雇われる事になったのである。
「それは良かった。それと後日、息子エルの快復を祝ってパーティーが行われるから、是非参加してくれないかい? アイリス様」
「アイリス様。あなた様は息子エルの恩人です。是非参加をお願いします」
こうして私はエルの快復を祝った社交パーティーにも参加する事になったのです。
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