54 / 61
勇者の塔へ向かう
しおりを挟む
「さて、バハムートさんがパーティーに入ったという事で」
「ぱーっと、一杯やりましょう!」
「いえ。違います」
リーネの提案をエルクは即否定した。
「ええ!? 違うんですか!?」
「リーネさん。あなたは食欲と色欲で生き過ぎですよ。竜人の国を抜けたところにある塔に行くに決まっているではないですか」
「はい! そうでした! すっかり忘れていました!」
「忘れないでくださいよ。我々が竜人の国を訪れた目的を。勇者の残した力を得るために我々はここまできたのです」
エルクは溜息を吐く。
「ふむ。あの塔に行くのか」
「知っているのですか? バハムートさん」
「なにせわしは2000年前から生きているからの。割となんでも知っているのじゃ」
「男の人の事は何にも知らないのに。ぷすぷすっ」
リーネは笑った。
「う、うるさいわっ! 雌犬! 貴様も処女のくせに黙っておれっ!」
バハムートは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「そういうわけで、あの塔に行くというなら話は早い」
「どうやって行くんですか?」
「決まっておろう。誰が仲間になったと思っているのだ! わしは竜王だぞっ!」
バハムートは巨大な黒竜の姿に一瞬で変化する。
「うわー近くで見るとやっぱりでっかいです」
「すごい」
パーティーメンバーはその雄大な姿に思わず息を飲んだ。
「さあ、いいから乗るのじゃ」
「乗りましょう皆さん」
「「「はい! 先生!」」」
その他パーティーメンバー四人を乗せて、バハムートは飛び立った。
「すごい風です……きゃっ」
「大丈夫ですか。リーネさん」
「大丈夫です……先生」
吹き飛ばされそうになったリーネはエルクに身を寄せる。
「……先生。全部ただのリーネの計算だから」
「わかっています。この娘はそういう娘です」
エルクは溜息を吐いた。
「な、なんでですか!? どうしてそうなるんですか!?」
「くっ! 人様の背中で乳繰り合ってるんじゃないわっ! この発情犬が!」
「うっ。バハムートさんに怒られました。発情犬だって」
「発情犬。ぷっぷ。リーネにぴったりの表現」
「ふっふ。本当」
イシスとリーシアは笑った。
「し、失礼なっ! 誰にでも発情するわけじゃないですっ! 先生だけですっ!」
リーネは怒鳴った。
「っと。ふざけている場合ではありません。塔が見えますよ」
「本当だ。あっという間ですね」
「それだけバハムートさんの速度が凄まじいという事でしょう」
「ありがとうございます。バハムートさん」
「うむ。礼には及ばぬ。貴様達は一応わしの仲間じゃからな」
「一応はつくんですね」
「わしに認められたくばせいぜい努力せい。降りるぞ。しっかりと捕まっておれ」
「「「はい」」」
バハムートは高度を落としていく。そして、地表へと降り立った。
「ありがとうございました。バハムートさん」
「うむ。役に立てたのなら幸いじゃ」
「大助かりです」
「エルク殿のお役に立てて本望じゃ」
「なんか私達相手態度全然違うです。声が乙女モードです」
「リーネだってそうじゃない」
「否定する要素ない」
イシスとリーシアは苦笑する。
「さて……わしも人の形に戻るとするかの」
「あっ」
エルクは言葉を漏らす。ある想定があった。人の形から巨大な竜になり、また人の形に戻る。そんな過程を経れば、着ている服はどうなるのか。恐らくマジックアイテムでもなければ元通りなんて事にはならないだろう。
前回だってそうだった。
「ん? なんじゃ?」
バハムートはすっぽんぽんになっていた。エルクは顔を赤くする。
「ひ、ひいっ! 見るなっ! 見るでないっ!」
「いっそ前のように平然としている方がこちらとしてはやりやすいんですが。そう恥ずかしがっていると、こちらとしても気恥ずかしいです。なぜか悪い事をしている気分になります」
「わ、わしはエルク殿。どうしてもお主に見られるのだけは恥ずかしくて耐えられぬのだ」
「他の人間の男にも平気で見せないでくださいよ。痴女として有名になられたら動きづらくなります」
「誰が痴女だ! この竜王を捕まえておいて」
「ともかく、服を着てください」
エルクは錬成した服を渡す。
「おお。すまぬな。ありがとう」
「大きくなったり、小さくなったりする服ってないんですか?」
「できなくもないんですが。そうなると竜になった時、ドレスをまとった不気味な黒竜が出来上がります」
伸縮性のありそうなパッツパッツの服だったら可能かもしれないとエルクは思った。水着のような。だがそれはそれで絵面として問題だと思った。
水着を着た人形(ひとがた)のバハムートはともかく、水着を着た黒竜型のバハムートは物凄い絵面である。
「それはそれで見てみたいかもしれませんね」
「わしは着せ替え人形ではないぞ」
バハムートは憤った。
「ともかく、ここにいてもしょうがありません。勇者の塔へ行きますか」
「「「はい」」」
「うぬ。入るとするかの」
一人だけ返答が異なっていた。五人は塔へ入る。
「ぱーっと、一杯やりましょう!」
「いえ。違います」
リーネの提案をエルクは即否定した。
「ええ!? 違うんですか!?」
「リーネさん。あなたは食欲と色欲で生き過ぎですよ。竜人の国を抜けたところにある塔に行くに決まっているではないですか」
「はい! そうでした! すっかり忘れていました!」
「忘れないでくださいよ。我々が竜人の国を訪れた目的を。勇者の残した力を得るために我々はここまできたのです」
エルクは溜息を吐く。
「ふむ。あの塔に行くのか」
「知っているのですか? バハムートさん」
「なにせわしは2000年前から生きているからの。割となんでも知っているのじゃ」
「男の人の事は何にも知らないのに。ぷすぷすっ」
リーネは笑った。
「う、うるさいわっ! 雌犬! 貴様も処女のくせに黙っておれっ!」
バハムートは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「そういうわけで、あの塔に行くというなら話は早い」
「どうやって行くんですか?」
「決まっておろう。誰が仲間になったと思っているのだ! わしは竜王だぞっ!」
バハムートは巨大な黒竜の姿に一瞬で変化する。
「うわー近くで見るとやっぱりでっかいです」
「すごい」
パーティーメンバーはその雄大な姿に思わず息を飲んだ。
「さあ、いいから乗るのじゃ」
「乗りましょう皆さん」
「「「はい! 先生!」」」
その他パーティーメンバー四人を乗せて、バハムートは飛び立った。
「すごい風です……きゃっ」
「大丈夫ですか。リーネさん」
「大丈夫です……先生」
吹き飛ばされそうになったリーネはエルクに身を寄せる。
「……先生。全部ただのリーネの計算だから」
「わかっています。この娘はそういう娘です」
エルクは溜息を吐いた。
「な、なんでですか!? どうしてそうなるんですか!?」
「くっ! 人様の背中で乳繰り合ってるんじゃないわっ! この発情犬が!」
「うっ。バハムートさんに怒られました。発情犬だって」
「発情犬。ぷっぷ。リーネにぴったりの表現」
「ふっふ。本当」
イシスとリーシアは笑った。
「し、失礼なっ! 誰にでも発情するわけじゃないですっ! 先生だけですっ!」
リーネは怒鳴った。
「っと。ふざけている場合ではありません。塔が見えますよ」
「本当だ。あっという間ですね」
「それだけバハムートさんの速度が凄まじいという事でしょう」
「ありがとうございます。バハムートさん」
「うむ。礼には及ばぬ。貴様達は一応わしの仲間じゃからな」
「一応はつくんですね」
「わしに認められたくばせいぜい努力せい。降りるぞ。しっかりと捕まっておれ」
「「「はい」」」
バハムートは高度を落としていく。そして、地表へと降り立った。
「ありがとうございました。バハムートさん」
「うむ。役に立てたのなら幸いじゃ」
「大助かりです」
「エルク殿のお役に立てて本望じゃ」
「なんか私達相手態度全然違うです。声が乙女モードです」
「リーネだってそうじゃない」
「否定する要素ない」
イシスとリーシアは苦笑する。
「さて……わしも人の形に戻るとするかの」
「あっ」
エルクは言葉を漏らす。ある想定があった。人の形から巨大な竜になり、また人の形に戻る。そんな過程を経れば、着ている服はどうなるのか。恐らくマジックアイテムでもなければ元通りなんて事にはならないだろう。
前回だってそうだった。
「ん? なんじゃ?」
バハムートはすっぽんぽんになっていた。エルクは顔を赤くする。
「ひ、ひいっ! 見るなっ! 見るでないっ!」
「いっそ前のように平然としている方がこちらとしてはやりやすいんですが。そう恥ずかしがっていると、こちらとしても気恥ずかしいです。なぜか悪い事をしている気分になります」
「わ、わしはエルク殿。どうしてもお主に見られるのだけは恥ずかしくて耐えられぬのだ」
「他の人間の男にも平気で見せないでくださいよ。痴女として有名になられたら動きづらくなります」
「誰が痴女だ! この竜王を捕まえておいて」
「ともかく、服を着てください」
エルクは錬成した服を渡す。
「おお。すまぬな。ありがとう」
「大きくなったり、小さくなったりする服ってないんですか?」
「できなくもないんですが。そうなると竜になった時、ドレスをまとった不気味な黒竜が出来上がります」
伸縮性のありそうなパッツパッツの服だったら可能かもしれないとエルクは思った。水着のような。だがそれはそれで絵面として問題だと思った。
水着を着た人形(ひとがた)のバハムートはともかく、水着を着た黒竜型のバハムートは物凄い絵面である。
「それはそれで見てみたいかもしれませんね」
「わしは着せ替え人形ではないぞ」
バハムートは憤った。
「ともかく、ここにいてもしょうがありません。勇者の塔へ行きますか」
「「「はい」」」
「うぬ。入るとするかの」
一人だけ返答が異なっていた。五人は塔へ入る。
12
お気に入りに追加
3,256
あなたにおすすめの小説

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる