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竜人の双子姉妹
しおりを挟む四人は竜人の国を目指して歩いていた。
「はぁ……疲れます」
リーネが漏らす。
「疲れましたか? ポーション飲みますか?」
「いやです! 先生のおんぶがいいですっ!」
「子どもじゃないんですから。甘えないで下さいよ。リーネさん、あなたは冒険者ですし。私の仲間なのですよ」
「先生のけちっ! たまには甘えさせてくれてもいいじゃないですかっ!」
「リーネは先生にいつも甘えてる」
「そうそう。甘えすぎよ。リーネ」
「もっと甘えさせてくださいーーー! 先生ーーーっ!」
「だきついてこないでくださいリーネさん」
そんな事をして旅をしている最中であった。
竜人の国への国境付近に差し当たった。
「止まりなさい! ここから先は竜人の国です!」
「そうそう! これ以上進むと身の安全は保障できないよ!」
二人の少女が現れる。赤色の髪と瞳をした少女と対照的に青色の髪と瞳をした少女だった。二人とも美少女であり瓜二つの顔をしている。髪や目の色が異なるだけだ。
「待ってください。私達は魔王討伐のため。勇者様の残してくれた塔が竜人の国を抜けた先にあると聞きました。ですからその塔に行きたいのです」
「そんな言葉信じられない!」
「その言葉が本当だったとしても私達に権限はない! 私達は部外者の侵入を阻むように言われているの」
エルフの国の時と同じだ。誰だって許可もない人間を国に招きたくはないだろう。他種族なら余計にそうである。
「どうしますか? 先生?」
「うーん。どうしようもありませんね」
「ワンワンに餌をあげると喜んでなつくんですよ。先生もやってみたらどうですか?」
「……そんな犬と一緒にしないでくださいよ」
「物は試しっていうじゃないですか」
「はぁ……あなた達は竜人ですか?」
「そうだよ。だってここは竜人の国だもの、当たり前じゃない」
「そうそう。竜人以外に誰が住んでると思ったの?」
「何か食べたいものとかありますか?」
「「お肉!」」
「まさかこの人達! 私達を食べたりしませんよね!?」
リーネは怯えた。
「まさかそこまで見境なしではないでしょう。そうだとしたらとっくに襲い掛かっています。待っててください」
エルクはアイテムポーチから生肉と焼き肉セットを取り出す。そして直火で炙り出した。
「これは肉がおいしく焼けるこんがり焼き肉セットです」
「はぁ……おいしそうです! 私に食べさせてください!」
「リーネさん、あなたが食べたら作戦が台無しじゃないですかっ!」
「そうでした! すみません!」
「くんくん、良いにおいがする」
「うん、良い匂い!」
「よろしければそこのお嬢さんがた、この丸焼き肉をいかがですか?」
骨に刺さったぶっとい肉をエルクは差し出す。
「う、うそっ! 罠よ! あいつら! 私たちに毒入りの肉を食べさせてこの国に入ろうとしているのよ!」
「フィア。落ち着いて、私達は竜人よ。毒に対する強い耐性を持っているわ。あの肉が毒でも大丈夫よ」
「そうだったわ。フィル。私達、毒に強かったのよね。ついでに麻痺にも眠りにも強いけど。そう、あの肉に何が入ってても割と平気なのよ」
竜人の双子姉妹(おそらく)はそう密談をしていた。
「旅の人たちよ! 食べさせてもらおうか!」
「食べさせて! 私達おなか減ってるのよ」
「はあ……あっさり釣れましたね。はい、どうぞ」
「「いただきまーす! ガツガツガツガツ!」」
二人はすごい勢いで食べ始めた。
「ぷはーーーーーおいしかった!」
「おいしかった! だけどもっと食べたいくらい!」
「食べたいですか? でしたらこの国を通してくれればまた食べさせてあげます」
「どうする? フィア」
「どうする? フィル」
二人は相談していた。
「とりあえず、もっとえらい人のところに連れて行かない? あんまり悪い人そうではなさそうですし」
「うんうん。そうしよう。お肉もっと食べたい」
「こほん! よいだろう。我が竜人の国に案内する。国を通れるかは我が国の国王に聞くがよい」
「ワンワン作戦大成功です!」
リーネはブイサインした。
「竜人はワンワンと同じ程度ですか……」
エルクは嘆いた。問題なのはそこではない。竜人の国へ行けるようになった事が重要なのだ。
「私達、フィアとフィルだよ」
「お二人は双子なのですか?」
「うん。そうそう。フィアが火竜で、フィルは水竜なの」
「そうですか。それで色が違うのですね」
「そうそう。じゃあ、行こうか」
「うん、行こう行こう」
竜人の双子姉妹に導かれ、エルク達四人は竜人の国を訪れる事となる。
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