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エルフの国に歓迎されめちゃくちゃ感謝される
しおりを挟む「もうすぐエルフの国です」
エルフの国の入り口には二人の門番がいた。
「止まれ!」
門番をしている二人のエルフは槍を構えた。
「っと。エレノアか。後ろの四人は人間のようだな」
「この人達は神狼(フェンリル)から私の身を守ってくれた恩人なの。エルフの国に入らせてもいいかしら?」
「待て。俺達の一存では決めようもない事だ。上にかけあってみる」
「助かるわ」
しばらくして滞りなく許可が下りたようだ。
「中に入れ」
「行きましょう。歓迎します。私達、エルフの国に」
「うわっ。綺麗です」
森と人々の生活が融合した姿がそこにはあった。森の中に街がある感じだった。空気が清んでいる。そこには文明の匂いはしないかもしれないが、それでも古き良き暮らしがあった。 恐らくは2000年前から暮らしぶりは然程変わっていないだろう。だが変わらないという事は必ずしも悪い事ではないのかもしれない。文明が人の生活を便利にする事もあれば、逆に不便にしてしまう事もある。エルフの人々はその事を知っているようであった。
時が止まっているかのような感覚を受けた。この国は2000年前そのままの姿を保っているのだろう。
「国王陛下に呼ばれています。このままエルフの城まで参りましょう」
四人はエルフの城へと向かう。
「よくぞいらっしゃいました。旅の方々。私はエルフの国の国王。名をシンと申します」
エルフの王城。謁見の間に通される。エルフの国王は名乗った。威厳のある初老の男性だ。 人間の感覚からすればとても信じられない事ではあるが彼は2000年以上前から生きているらしい。見た目からはとてもそうは見えない。エルフは長命であり、そして年を取るスピードが極端に緩やかだ。それ故見た目もあまり変わる事はない。
「お話は聞いております。我々の仲間であるエレノアの命を救っていただいたとか。何でも神狼(フェンリル)を一撃で失神させたそうで、そこの錬金術師の方、名を何とおっしゃいますか?」
「エルクと申します」
「エルク殿ですか。神狼(フェンリル)を一撃で仕留める錬金術師など長く生きてきた中でも聞いた事がありませぬ」
「いえ。たまたまの事です」
「そう謙遜なさるな。たまたまで神狼(フェンリル)を仕留められれば苦労しますまい。誠に凄いお方だ。こちらは娘のシスティアです」
隣には金髪の少女がいた。エルフではあるが見とれる程美しい、絶世の美姫だ。彼女は誰でも絆されてしまうような穏やかな笑みを浮かべる。
「王女のシスティアと申します。『黄金の原石』の皆様、エルフの国へようこそ。歓迎いたしますわ」
「妻には先立たれてね……今は娘と二人で暮らしているのだよ」
人間であるならばせいぜい10代の半ば程度にしか見えない見た目をシスティアはしていた。女性に年齢を聞くのはマナー違反故にエルクはそのような愚を犯さないが、推察すると彼女もまた2000年近い時を過ごしてきたのだ。エルフにとっては年を取るという感覚はないのだろう。時は過ごすものでしかない。終わりのない永遠に近い時間をただ悠然と生きる。それだけの事だ。
「私達に出来る事はそう多くはない。せいぜいゆっくりしていってください。寝床や食事の提供くらいはできる」
「国王陛下。ひとつお願いがあります」
「お願い? それは何ですか?」
「この国を抜け、北へと進む許可を頂きたいのです」
「ほう……それまたなぜ?」
「手に入れた魔道書に書かれていたのです。この国を抜けた先、北の搭に強きに到る手がかりがある事を」
「強くなる? エルク殿はもう十分にお強いではありませぬか。それ以上強さを手に入れて何をするのです」
「私ではありません。この娘達です。この娘達に今以上の強さを手に入れて貰わねばなりません」
「ほう……それはなぜですか?」
「先日、魔人と交戦しました。人間の国での事です。何とか私が退けましたが、それでもこの娘達は言葉を選ばずに言えば手も足も出なかったのです」
「ほう。魔人と交戦したのですか」
「ええ。魔王の復活により魔人は目覚めたそうです。そして魔人は言っておりました。仲間が四人いると。そして同じ程度には強いと。魔王には四天王と呼ばれる側近がいたそうです。彼らの強さは規格外です。ですので彼女達にも規格外の強さを身につけて貰うより他にないのです」
「ほう……そのような理由が。いいでしょう。この国を抜ける許可を下ろしましょう」
「ありがたき幸せ」
「ですが今晩はもう遅いです。一晩泊まっていってください。大浴場もありますので、是非入って旅の疲れを癒やしてください」
「お邪魔している身で何とも申し訳ありません」
「いえいえ。仲間の命を救って頂いた恩人には報いなければなりませぬ」
こうしてエルク達はエルフの城で一晩過ごす事になった。
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