聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

つくも

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エルフの少女を助け、エルフの国に招待される

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「もうすぐエルフの領域に入ります」
「はい! 先生!」
「これからは何があるかわかりませんから慎重に行動するように」
「「「はい!」」」

 パーティー名を『黄金の原石』とした四人はエルフの領域へと入っていった。森の中へと入っていく。森の中は昼間だというのに暗く、また障害物も多いため敵が潜んでいてもわかりづらいという怖さがあった。

「先生……怖いです」

 物音がした。

「きゃっ! 怖いです! 先生!」
「抱きついてこないでください。小動物ですよ。リーネさん、私に抱きつきたくてわざと怖がってませんか?」
「バレちゃいましたか! 実はそうです」
「はぁ……」

 エルクは溜息を吐く。

 再度の物音がした。

「きゃっ! また小動物ですか!」
「どうやら違うようです!」
「止まりなさい! ここより先はエルフの領域ですよ!」

 張り詰めたような声がした。少女の声だ。流れるような金髪をしたエルフ。紛れもない美少女であり、年齢は10代の半ば程度に見えるがエルフは基本的に年を取らない長命な種族である。それ故に彼女の実年齢は100歳を優に超えているかもしれなかった。
 だが今はそんな事は関係ない。彼女が敵意を持っている事がひとつ。そして彼女は弓矢を構えている事がひとつ。
 それをどうにかしなければならなかった。

「落ち着いてください! 私達はこの先を抜けたところにある北の搭に行きたいだけなんです!」
「なりません! ここより先はエルフの国! 許可無き者は立ち寄る事はできません!」

 とりつく島もなし。

「これ以上進むようでしたら、この弓を放つ事になります!」
「うーん。どうしましょうか! 先生」

 勝つのは容易である。強行突破は容易い。だがそれは同時にエルフの国を敵に回す事になる。いくらなんでもそれはまずい。後々やりづらくなる可能性が高かった。

「そうだ! 私に考えがあります! 先生が媚薬を錬成してあのエルフに飲ませればいいんです! エルフは私のように先生にメロメロになって大人しく通してくれるようになります! なんて簡単な事でしょうか!」

 リーネは提案する。

「何でも私のアイテムに頼ろうとしないでください。それに薬漬けにして言うことを聞かせるなんて鬼畜の所業みたいで気が引けます。まずは対話をしましょう。そこから糸口を見いだすのです」
「はい。そうですね! エルフさん! 信じてください! 私達は世界を救う為に冒険をしているんです! 決して悪い人間じゃないんです!」
「あなた達の善悪など関係ありません。私はこの先を許可なき者が立ち寄る事を阻止するように命令されているだけなんです!」
「ふーむ。どうしましょう?」
「取りつく島もありませんね。一旦撤退するよりありませんか」
「そうですね。戻って考えましょうか」
 
 そう思っていた時の事だった。森の中に大きな叫び声が響いた。

「なんですか?」

 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

「まさか! この声は!」

 突如、巨大な狼が姿を現す。通常の狼よりも数倍は大きい巨大なモンスターだ。

「神狼(フェンリル)! なぜこんなところに! 奴は森の主としてもっと奥深くに生息しているはず!」
「ほう。神狼(フェンリル)ですか!」

 神狼(フェンリル)、ランクSのモンスターだ。そのモンスターとしての格はドラゴン種などにも及ぶ。強力なモンスターのひとつに数えられる。

「今、世界は魔王の復活により調律が狂った状態です。その影響からかもしれません」

 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

「くっ!」

 神狼(フェンリル)は吠えた。そしてエルフの少女に襲いかかる。弓矢を構えるがその程度の攻撃で神狼(フェンリル)が怯むはずもない。

「まったく、仕方ないですねぇ」

 エルクはボウガンを錬成した。そして矢を放つ。矢は神狼(フェンリル)に突き刺さった。

 キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!

「強烈な神経毒です。しばらくは動けません」
「う、うそっ。あの神狼(フェンリル)が一撃で! な、何者なの? あなたは」
「エルクと申します。ただのしがない錬金術師です」
「どうして、私を助けたの! 私が神狼(フェンリル)に殺されればこの先に通る事ができたというのに」
「あなたが殺されるところを見過ごせる程私達は悪人ではないんですよ。今日のところは帰らせて貰います」

 四人は帰ろうとした。

「待ってください!」
「え?」
「い、命の恩人をこのまま返すなんて不義理な真似はできません。エルフの戒律には受けた恩は返さなければならないとあります。上からの命令も大切ですが、受けた恩を返す事もエルフにとってはとても大事な事なのです」
「そうですか……それはありがたいです」
「礼を言うのは私の方です。エルク様。私の名はエレノアと申します。皆様をエルフの国に招待します」
「良かったですね。先生! 上手い方向に事態が転がって」
「ええ。神狼(フェンリル)さんには感謝しなければなりません。死んではいません。半日もすれば動けるようになるでしょう」

 ピクピクしている神狼(フェンリル)にエルクは礼を言った。命を助けた事でエルフの少女エレノアにエルフの国に招待される事になったのである。
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