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エルフの国王の2000年前の記憶
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エルフの国があった。深緑の森の中にそびえる国。そこには多くのエルフが存在していた。エルフは生殖能力が極端に低い代わりに不老不死に近い寿命を得ている。その存在は限りなくアンデッドに近い存在であった。
エルフの国、その王城。国王が一人佇んでいた。人間で言えば初老と呼べるような年の男。 エルフの国王シンである。国王は物思いに耽っていた。2000年前の記憶だ。エルフの城に2000年前、双子が生まれた。国王の子供だ。双子の姉妹。繁殖能力の低いエルフに双子が生まれる事は珍しい事でもあったが、さらに珍しい事は双子というだけではなかった。
一人は普通のエルフの少女として生まれた。しかしもう一人はダークエルフとして生まれたのだ。
エルフの少女はシスティアと名付けられ、その後エルフ国の王女となった。ダークエルフとして生まれた少女はゼロティアと名付けられた。
父である国王及び産んだ母はその双子を当然のように愛した。我が子であるならば当然の事だった。
しかし周囲はそれを許さなかった。言い伝えによればダークエルフは国を滅ぼす忌み子として伝えられていた。それ故に周囲は忌み子であるゼロティアを始末するように要求してきた。おかしな事であった。ゼロティアには非はないのだ。ただダークエルフとして生まれてきたというだけで。彼女とて生まれたくてダークエルフとして生まれてきたわけではないだろう。
ゼロティアが大きくなってきた頃、それは6歳の頃だった。世界では大きな戦争が起きた。魔王率いる魔族と人間との抗争だ。
周囲はそれをダークエルフが生まれたから起こったのだと断定した。こじつけも甚だしかったが、それでも周囲はそれを疑わなかった。
しかし国王は周囲の圧力からゼロティアを庇いきれなくなっていた。ゼロティア自身も周囲から過酷な扱いを受けていた。道を歩けば石を投げられ、侮辱される。本来なら王女としてもてはやされたはずなのに、ダークエルフとして生まれたが故に。ゼロティアは双子の妹であるシスティアを羨んでいた事であろう。
彼女はゼロティアにとっては光り輝く太陽のようなものであった。眩しすぎて直視する事は敵わない。思わず目を背けてしまいたくなるような存在だ。
美しい美貌をして生まれ、王女として持て囃されている彼女はゼロティアにとってはあまりに輝かしい存在だった。恐らくは嫉妬で気が狂いそうになっていただろう。自分の生まれをゼロティアは呪った事であろう。
だがそれも運命だったと思うより他になかった。それからゼロティアは自身の身の危険を感じたからか、忽然とエルフの国から姿を消した。恐らくはゼロティアの始末を要求してくる大臣などの会話を聞いたのだろう。恐ろしいに決まっている。ただ生まれてきたというだけで何も悪い事もしていないのに殺されようとしていたのだ。逃げ出すのも必然であった。
それから2000年経つ。国王にとってはつい最近の事のように思い出された。あれからゼロティアがどうなったのか。死んでしまっているのか。それともどこかで生きているのか。
「お父様、どうされたのですか?」
「システィアか……」
国王の前に少女が現れる。煌びやかな白いドレスに身を包んだ輝くような美少女。彼女は2000年間全くその様子が変わっていない。どう見ても人間で言うならば10代といったところの容貌であった。
彼女は先ほど出てきた双子の姉妹の妹。ゼロティアの妹であるシスティアである。
「何でも無い。ただ、何となく昔の事を思い出して物思いに耽っていたのだ」
「2000年前の事ですね。魔王と勇者が闘っていた頃。そしてお姉様がこの国にいた頃」
「ああ……今頃何をやっているのやら。もう死んでいるのかも知れぬ。だが生きているとしたら」
あまり考えたくはない。あの子は当然のようにエルフを憎んでいるだろう。報復にくる可能性は当然のようにあった。だがその可能性があるのならばこの2000年間は何だったというのか。死んでしまっていると考えた方が自然だ。
「お父様、私、何となく胸騒ぎがするんです」
「そうか……人間の国では何やら騒ぎが起こっていると聞く。何かが起こるのかもしれぬな」
「はい。きっと……何かが起こる気がします。嫌な予感がするんです」
システィアの予感はその後、現実のものとなるのであった。
エルフの国、その王城。国王が一人佇んでいた。人間で言えば初老と呼べるような年の男。 エルフの国王シンである。国王は物思いに耽っていた。2000年前の記憶だ。エルフの城に2000年前、双子が生まれた。国王の子供だ。双子の姉妹。繁殖能力の低いエルフに双子が生まれる事は珍しい事でもあったが、さらに珍しい事は双子というだけではなかった。
一人は普通のエルフの少女として生まれた。しかしもう一人はダークエルフとして生まれたのだ。
エルフの少女はシスティアと名付けられ、その後エルフ国の王女となった。ダークエルフとして生まれた少女はゼロティアと名付けられた。
父である国王及び産んだ母はその双子を当然のように愛した。我が子であるならば当然の事だった。
しかし周囲はそれを許さなかった。言い伝えによればダークエルフは国を滅ぼす忌み子として伝えられていた。それ故に周囲は忌み子であるゼロティアを始末するように要求してきた。おかしな事であった。ゼロティアには非はないのだ。ただダークエルフとして生まれてきたというだけで。彼女とて生まれたくてダークエルフとして生まれてきたわけではないだろう。
ゼロティアが大きくなってきた頃、それは6歳の頃だった。世界では大きな戦争が起きた。魔王率いる魔族と人間との抗争だ。
周囲はそれをダークエルフが生まれたから起こったのだと断定した。こじつけも甚だしかったが、それでも周囲はそれを疑わなかった。
しかし国王は周囲の圧力からゼロティアを庇いきれなくなっていた。ゼロティア自身も周囲から過酷な扱いを受けていた。道を歩けば石を投げられ、侮辱される。本来なら王女としてもてはやされたはずなのに、ダークエルフとして生まれたが故に。ゼロティアは双子の妹であるシスティアを羨んでいた事であろう。
彼女はゼロティアにとっては光り輝く太陽のようなものであった。眩しすぎて直視する事は敵わない。思わず目を背けてしまいたくなるような存在だ。
美しい美貌をして生まれ、王女として持て囃されている彼女はゼロティアにとってはあまりに輝かしい存在だった。恐らくは嫉妬で気が狂いそうになっていただろう。自分の生まれをゼロティアは呪った事であろう。
だがそれも運命だったと思うより他になかった。それからゼロティアは自身の身の危険を感じたからか、忽然とエルフの国から姿を消した。恐らくはゼロティアの始末を要求してくる大臣などの会話を聞いたのだろう。恐ろしいに決まっている。ただ生まれてきたというだけで何も悪い事もしていないのに殺されようとしていたのだ。逃げ出すのも必然であった。
それから2000年経つ。国王にとってはつい最近の事のように思い出された。あれからゼロティアがどうなったのか。死んでしまっているのか。それともどこかで生きているのか。
「お父様、どうされたのですか?」
「システィアか……」
国王の前に少女が現れる。煌びやかな白いドレスに身を包んだ輝くような美少女。彼女は2000年間全くその様子が変わっていない。どう見ても人間で言うならば10代といったところの容貌であった。
彼女は先ほど出てきた双子の姉妹の妹。ゼロティアの妹であるシスティアである。
「何でも無い。ただ、何となく昔の事を思い出して物思いに耽っていたのだ」
「2000年前の事ですね。魔王と勇者が闘っていた頃。そしてお姉様がこの国にいた頃」
「ああ……今頃何をやっているのやら。もう死んでいるのかも知れぬ。だが生きているとしたら」
あまり考えたくはない。あの子は当然のようにエルフを憎んでいるだろう。報復にくる可能性は当然のようにあった。だがその可能性があるのならばこの2000年間は何だったというのか。死んでしまっていると考えた方が自然だ。
「お父様、私、何となく胸騒ぎがするんです」
「そうか……人間の国では何やら騒ぎが起こっていると聞く。何かが起こるのかもしれぬな」
「はい。きっと……何かが起こる気がします。嫌な予感がするんです」
システィアの予感はその後、現実のものとなるのであった。
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