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魔人を規格外(EX)の槍で退ける
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「……ぐあっ!」
ゼネガルは地に伏せた。
「弱い……2000年の間に人間はこうまで弱くなっていたのか。勇者とその仲間達はこうまでは弱くなかったぞ」
「どういう事だ? 俺の攻撃が通用しねぇ。こっちはSランクの装備で固めているっていうのに」
「な、なんなのよ! こいつ! 私の魔法だってSランクのものよ。なのに効いている感じがしない」
「あまりに弱いな。こんなものなのか。あるいは貴様達が特別弱いのか」
「俺達が弱いだと」
「もっと強い人間はいないのか。人間以外でもよいぞ。竜でもエルフでも」
「くっ。舐めやがって」
「落ち着きなさい。逃げるわよ」
「なんだと!」
「こいつと闘っても殺されるだけよ。お金も地位も名誉も命あっての物種じゃない。私達は冒険者よ。今はただの傭兵として王国に雇われているだけだわ。そこまで王国に義理立てする義理はないわ!」
「へっ。そうだな! 勝てないとなったら逃げる。そういった判断の早さも生き延びていく上では必要だな」
「ええっ! 閃光(スタン)!」
魔道士であるリーゼは閃光(スタン)の魔法を使った。
「ぬっ!」
数秒の事ではあるが、ネメシスは怯んだ。
「今だ! 逃げるぞ!」
「ええ!」
「おお!」
「はい!」
Sランクパーティー四聖竜の面々は脱兎の如く逃げ出した。
「逃げるか。兎狩りへと移行するか」
「ひ、姫様! お逃げください! こちらです!」
「わ、わかったわ!」
王国が襲撃されたと訊いた王国の姫シャルロッテはメイドと一緒に慌てて逃げ出していた。 この王国一の美姫として知られている少女である。整った顔に流れるような金髪。姫と呼ばれるに相応しい美貌と気品を持っていた。
「な、何かしら。宝物庫の入り口から人が何人か」
そして最後に出てきたのはローブを着た男。明らかに異様な雰囲気をしていた。こちらに近づいてくる。
「な、なに?」
「ひ、姫様! お逃げください! こいつは恐らく国王様を襲った不審者でございます!」
「ふふっ。美しいな。そこの女は。旨そうだ」
「な、なんなのこの人」
「ひ、姫様には指一本触れさせません!」
「退け」
「は、はい。わかりました」
健気に立ち塞がったメイドであったが、あっさりと廊下の隅に寄る。
「い、いやっ! 何をするつもりなの!」
「2000年振りの目覚めだ。たまには肉を味わいたい気分にもなる。旨そうな肉が目の前にあれば当然の事だ」
「い、いやっ! やだっ! やめなさいっ!」
王女であるシャルロッテは命令すれば何でも叶ってきた。しかしその命令が通用しない相手に初めてあったのだ。恐怖を覚える。権威の通用しない相手。王女であるより前にただの非力な少女であるシャルロッテである。圧倒的な力の前にはひれ伏すより他ない。
「無駄だ。諦めろ」
ネメシスは舌なめずりをする。
「い、いやっ! いやだっ! 誰かっ! 誰か助けて!」
「そこまでです!」
「誰だ?」
「私達『ラブリー・ラビット』の四人が現れたからには、あなたの悪事! これ以上見過ごせません!」
「随分と絞まりませんねぇ」
「本当です」
「なんだ。貴様達は俺の邪魔をするのか!」
「邪魔ではありません! あなたを成敗しにきたんです!」
「ほう。できるのか。貴様達に」
「やってみなくちゃわかりません!」
「やらなくてもわかりそう。あいつ強い。気配を感じる」
「ええ……恐ろしい程のプレッシャーを放っています」
「先ほどの人間達では相手にもならなかった。人間達、俺を楽しませてみろ!」
「く、来ます! 皆さん構えて」
こうしてラブリーラビットの面々は魔人ネメシスとの交戦に移った。
それよりしばらく前の事だった。『ラブリーラビット』の面々は地下迷宮(ダンジョン)の攻略に挑んでいた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「やりました! 地下20階層到達です!」
リーネはジャイアントオークを倒した。オークの親玉である。ジャイアントオークは地に伏した。
「これでCランクに昇格です! 瞬く間に昇格しています! これも先生のおかげです!」
「私は別に何もしてないじゃないですか。今回は見ていただけです」
「いいえ! 先生が後ろにいるから私達は安心して闘えるんです! ねっ!」
「ええ。その通りです」
「はい。そうです。先生がいるからなんです」
「そうですか。それは何よりです。それでは地上へ戻りますか」
エルクはマジックアイテムであるワープミラーを創り出し、四人は地上へと戻っていった。
冒険者ギルドへ戻った。その時、なぜかギルドが慌ただしくなっている事を感じた。
「随分慌ただしいですね。何かあったんでしょうか」
「聞いたか? 何でも王国スターティアの王城が襲撃されたらしいぞ」
「マ、マジか。一体何者が襲撃したんだ?」
「わ、わからねぇけど。なんか人間ではないみたいなんだ。それで今Sランク冒険者パーティーの『四聖竜』が援軍へ向かったんだってよ」
「へ、へぇ……俺達はどうする?」
「四聖竜より弱い俺達が援軍へ行っても意味ないだろ。あいつ等が負けたら俺達の命だって危うい」
「だ、だよな」
「聞、聞きましたか! 先生!」
「聞きました。受付嬢さん、今の情報は本当ですか?」
「本当です。今、王城は何者かに襲撃されています。彼等が言っているように人間以外ではないかと推測されています。それでSランク冒険者パーティーである『四聖竜』の面々が援軍へと向かってくれました」
「聞き捨てなりません! 私達も援軍へと向かいましょう!」
「うーん。そうですねぇ。しかし何者でしょうかねぇ。王城を襲撃。王城なんて警護の厚いところです。ただの盗人とも思えません。何か特別な意味を感じます」
「行ってみないとわかりません!」
「そうですね。その通りです。この場にいてはわからない事が多いでしょう」
「今回の特別クエストを受注しますか? 報酬も待遇も緊急の為決まっておりません。報告を受け、事後調整という形になりますが」
「構いません! 急いでスターティアの王城へ向かいましょう!」
「ええ。そうしますか」
「「「はい! 先生!」」」
「それでは皆さん、気をつけていってらっしゃいませ。四聖竜で勝てない相手だった場合は特に気をつけてください。撤退も考える事をおすすめします」
四人はこうして王城へと向かった。
エルク率いる『ラブリー・ラビット』の面々は怪しげな男を相手にする。
「何者でしょうか。ただものではない気配を感じる。異常な程の魔力を感じます。可能性としては魔族でしょうか。2000年前に魔王と共に滅んだとされる一族。その可能性があります」
エルクはそう解析した。
「ふっ。人間のくせに聡いではないか。俺の名はネメシス。魔人だ。そして魔王様に仕える四天王の一人」
「魔王の四天王……?」
「ま、魔王ですか!? けど魔王は2000年前に滅んだんじゃ!」
「魔王は2000年前に滅んだと言われていますが正確には違います。その魂を五つに分断され、それぞれの王国に宝玉として保管されたと聞きます。そしてそのうちのひとつが解き放たれ、彼らも目覚めたのでしょう」
エルクはそう分析していた。エルクは知っていた。アーガスの宝物庫に魔王の宝玉があった事を。あの国王あそこまで愚かだとは思っていなかった。恐らくは自分いなくなった事で何かが起きたのであろう。その末にあの国王は魔王の宝玉を解き放ったのだ。仮初めの力を得る為に。実際は魔王の傀儡となるだけなのであるが、あの愚かな王はそんな事すら気づいていない事であろう。だが今はそんな事を考えている場合ではない。魔人ネメシスは危険な相手だ。今までの相手とは違う。
「御託はいい。かかってこい。さあ誰からだ。同時に襲いかかってきてもよいぞ」
強者の余裕か。ネメシスは待ち受けるだけだ。
「あなた達、行きなさい」
エルクはそう指示をする。
「は、はい!」
「私達は仲間でしょう。確かに私達は元教え子と教師です。教え子と教師というのはどうしても対等な関係にはならないかもしれません。ですが仲間はそうではありません。対等でなければならないのです。いつまでもおんぶにだっこでは困ります。これはその為の試験のようなものです」
「ほう……俺を試験代わりに使うつもりか。随分と舐められたものだな」
「ご協力感謝します。しかし私が考えるにはこれは必要な行いなのですよ」
「はい! わかりました! 先生! イシスさん! リーシアさん! 行きますよ!」
「「はい」」
三人は身構える。
「はああああああああああああああああああ!」
リーネは斬り掛かる。しかし、ネメシスに攻撃が当たるより前にバリアのようなものを感じた。
「なっ!?」
攻撃が弾かれる。
「きゃああああああああああああああああ!」
反動でリーネは弾き飛ばされた。
「氷結魔法(アイスフロスト)!」
イシスは魔法を唱えた。氷の息吹が襲いかかる。
「無意味だ!」
ネメシスのバリアの前にまたもや無効化された。
「なっ!? 物理攻撃の上に魔法まで無効化されるの! それとも氷属性の無効化?」
「教えてやろう。貴様の放つ魔法ではどれも我が身には届かない」
「な、なんですって!」
「い、痛いです……」
「リーネ、今回復させます」
リーシアは回復魔法でリーシアを癒やした。
「やはり……思った通りです。四聖竜の方々が先行していたのに魔人が今ものさばっている。つまりは彼らは負けたと思っていい。何かあるかと思いましたが、理由がわかりました。あの魔人にはランクS以下の攻撃は効かないと思った方がいい。『Sランク以下の攻撃無効化』のパッシブスキルを持っているようです」
「ほう。よくわかるではないか。貴様達人間の脆弱な攻撃など俺には効かないのだ」
「そ、そんな……じゃあ私達じゃダメージを与えられないって事じゃない」
「そんな……」
「どうした? 逃げるか? 逃げないなら先ほど逃がした女の代わりをして貰うぞ」
ネメシスは舌なめずりをする。
「そうさせるわけにはいきません」
「「「先生!」」」
「なんだ。貴様が俺の相手をするのか」
「この子達は私の教え子です。指一本触れされるつもりはありません」
「ほう。随分と吹くではないか。名を名乗る事を許そう。貴様が死んだ後もその名覚えていてやる」
「エルク・バンディッド。しがない錬金術師です」
「エルク・バンディッドか。その名、しかと覚えた。それで貴様には何か策があるのか。俺の障壁を突破する方法があるのか」
「勿論あります」
「ほう」
「『ランクS以下の攻撃の無効化』しかしそれ以上の攻撃か、あるいは特殊効果のある攻撃であれば無効化できません」
「できるというのか。貴様に」
「ええ。出来ます。錬成」
エルクは一振りの槍を錬成する。禍々しい力を放つ槍だ。
「なんだ、その槍は」
「この槍はロンギヌスの槍です。ランクは『EX』付随効果はあらゆる防御障壁の『絶対無効化』」
「はったりだ! 2000年前に存在した伝説のレアアイテムだぞ! そんなものを人間が作り出せるわけがない! 贋作(フェイク)に決まっている!」
「ならばその場で試してみればいいのです!」
「ぬうっ!」
ネメシスはその身で槍を受けた。侮っていたが故に回避が遅れる。慌てて避けたが故に心臓を貫かれる事は避けれたが、それでもその身に受けることは防げなかった。槍はネメシスの障壁を貫いたのだ。
「ぐっ、ぐおっ!」
血が流れた、青い血だ。魔人に流れる血。
「ぐ、ぐうっ! まさか本当に我が障壁が破られるとは! その槍は本物のロンギヌスの槍のようだなっ!」
「ええ。だから言ったじゃないですか」
「……貴様! 何者だ!」
「それも言いましたよ。私はしがない錬金術師だと」
「面白い、面白い男だ。だが惜しい。貴様は強い。だが、他の三人はどうだ。てんで話にならないではないか」
「それを否定できないのが心苦しいですね」
「俺には他に強力な仲間が三人いる。俺と同じ程度には強い仲間だ。しかし貴様はどうだ。一人で闘っているではないか。俺達四人が同時に暴れ回れば、貴様といえど身体はひとつしかないであろう」
「痛いところを突かれましたね」
「今日のところは退く。だが、次はこうはいかないぞ」
ネメシスは転移魔法(テレポーテーション)で消えていった。
「先生……」
「あの魔人の言っていることは本当です。あなた達はまだ私の仲間とは本当の意味では言えないかもしれません」
「先生……私、もっと強くなりたいです」
「ええ。もっと強くなってください。本当の意味で私の仲間と言えるように」
「うわああああああああああああああああ! もっと強くなりたいです! 先生の役に立てるように! こんなんじゃ! こんなんじゃ先生の足を引っ張っているただの足手まといじゃないですか! うあああああああああああああああああ!」
リーネはエルクの胸で泣き始めた。
「よしよし。泣きなさい。泣いたらまた立ち上がって頑張ればいいんです。期待していますよ。リーネさん」
「ううっ……私達、なんて弱いの。先生におんぶに抱っこで」
「ううっ、先生」
三人は泣き始めた。エルクの力により魔人ネメシスを退けたがパーティーメンバーはパーティーの大きな問題点に気づいたのであった。
こうして魔人ネメシスは退き、王国スターティアの危機は一旦は去ったのである。
ゼネガルは地に伏せた。
「弱い……2000年の間に人間はこうまで弱くなっていたのか。勇者とその仲間達はこうまでは弱くなかったぞ」
「どういう事だ? 俺の攻撃が通用しねぇ。こっちはSランクの装備で固めているっていうのに」
「な、なんなのよ! こいつ! 私の魔法だってSランクのものよ。なのに効いている感じがしない」
「あまりに弱いな。こんなものなのか。あるいは貴様達が特別弱いのか」
「俺達が弱いだと」
「もっと強い人間はいないのか。人間以外でもよいぞ。竜でもエルフでも」
「くっ。舐めやがって」
「落ち着きなさい。逃げるわよ」
「なんだと!」
「こいつと闘っても殺されるだけよ。お金も地位も名誉も命あっての物種じゃない。私達は冒険者よ。今はただの傭兵として王国に雇われているだけだわ。そこまで王国に義理立てする義理はないわ!」
「へっ。そうだな! 勝てないとなったら逃げる。そういった判断の早さも生き延びていく上では必要だな」
「ええっ! 閃光(スタン)!」
魔道士であるリーゼは閃光(スタン)の魔法を使った。
「ぬっ!」
数秒の事ではあるが、ネメシスは怯んだ。
「今だ! 逃げるぞ!」
「ええ!」
「おお!」
「はい!」
Sランクパーティー四聖竜の面々は脱兎の如く逃げ出した。
「逃げるか。兎狩りへと移行するか」
「ひ、姫様! お逃げください! こちらです!」
「わ、わかったわ!」
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「な、何かしら。宝物庫の入り口から人が何人か」
そして最後に出てきたのはローブを着た男。明らかに異様な雰囲気をしていた。こちらに近づいてくる。
「な、なに?」
「ひ、姫様! お逃げください! こいつは恐らく国王様を襲った不審者でございます!」
「ふふっ。美しいな。そこの女は。旨そうだ」
「な、なんなのこの人」
「ひ、姫様には指一本触れさせません!」
「退け」
「は、はい。わかりました」
健気に立ち塞がったメイドであったが、あっさりと廊下の隅に寄る。
「い、いやっ! 何をするつもりなの!」
「2000年振りの目覚めだ。たまには肉を味わいたい気分にもなる。旨そうな肉が目の前にあれば当然の事だ」
「い、いやっ! やだっ! やめなさいっ!」
王女であるシャルロッテは命令すれば何でも叶ってきた。しかしその命令が通用しない相手に初めてあったのだ。恐怖を覚える。権威の通用しない相手。王女であるより前にただの非力な少女であるシャルロッテである。圧倒的な力の前にはひれ伏すより他ない。
「無駄だ。諦めろ」
ネメシスは舌なめずりをする。
「い、いやっ! いやだっ! 誰かっ! 誰か助けて!」
「そこまでです!」
「誰だ?」
「私達『ラブリー・ラビット』の四人が現れたからには、あなたの悪事! これ以上見過ごせません!」
「随分と絞まりませんねぇ」
「本当です」
「なんだ。貴様達は俺の邪魔をするのか!」
「邪魔ではありません! あなたを成敗しにきたんです!」
「ほう。できるのか。貴様達に」
「やってみなくちゃわかりません!」
「やらなくてもわかりそう。あいつ強い。気配を感じる」
「ええ……恐ろしい程のプレッシャーを放っています」
「先ほどの人間達では相手にもならなかった。人間達、俺を楽しませてみろ!」
「く、来ます! 皆さん構えて」
こうしてラブリーラビットの面々は魔人ネメシスとの交戦に移った。
それよりしばらく前の事だった。『ラブリーラビット』の面々は地下迷宮(ダンジョン)の攻略に挑んでいた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「やりました! 地下20階層到達です!」
リーネはジャイアントオークを倒した。オークの親玉である。ジャイアントオークは地に伏した。
「これでCランクに昇格です! 瞬く間に昇格しています! これも先生のおかげです!」
「私は別に何もしてないじゃないですか。今回は見ていただけです」
「いいえ! 先生が後ろにいるから私達は安心して闘えるんです! ねっ!」
「ええ。その通りです」
「はい。そうです。先生がいるからなんです」
「そうですか。それは何よりです。それでは地上へ戻りますか」
エルクはマジックアイテムであるワープミラーを創り出し、四人は地上へと戻っていった。
冒険者ギルドへ戻った。その時、なぜかギルドが慌ただしくなっている事を感じた。
「随分慌ただしいですね。何かあったんでしょうか」
「聞いたか? 何でも王国スターティアの王城が襲撃されたらしいぞ」
「マ、マジか。一体何者が襲撃したんだ?」
「わ、わからねぇけど。なんか人間ではないみたいなんだ。それで今Sランク冒険者パーティーの『四聖竜』が援軍へ向かったんだってよ」
「へ、へぇ……俺達はどうする?」
「四聖竜より弱い俺達が援軍へ行っても意味ないだろ。あいつ等が負けたら俺達の命だって危うい」
「だ、だよな」
「聞、聞きましたか! 先生!」
「聞きました。受付嬢さん、今の情報は本当ですか?」
「本当です。今、王城は何者かに襲撃されています。彼等が言っているように人間以外ではないかと推測されています。それでSランク冒険者パーティーである『四聖竜』の面々が援軍へと向かってくれました」
「聞き捨てなりません! 私達も援軍へと向かいましょう!」
「うーん。そうですねぇ。しかし何者でしょうかねぇ。王城を襲撃。王城なんて警護の厚いところです。ただの盗人とも思えません。何か特別な意味を感じます」
「行ってみないとわかりません!」
「そうですね。その通りです。この場にいてはわからない事が多いでしょう」
「今回の特別クエストを受注しますか? 報酬も待遇も緊急の為決まっておりません。報告を受け、事後調整という形になりますが」
「構いません! 急いでスターティアの王城へ向かいましょう!」
「ええ。そうしますか」
「「「はい! 先生!」」」
「それでは皆さん、気をつけていってらっしゃいませ。四聖竜で勝てない相手だった場合は特に気をつけてください。撤退も考える事をおすすめします」
四人はこうして王城へと向かった。
エルク率いる『ラブリー・ラビット』の面々は怪しげな男を相手にする。
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エルクはそう解析した。
「ふっ。人間のくせに聡いではないか。俺の名はネメシス。魔人だ。そして魔王様に仕える四天王の一人」
「魔王の四天王……?」
「ま、魔王ですか!? けど魔王は2000年前に滅んだんじゃ!」
「魔王は2000年前に滅んだと言われていますが正確には違います。その魂を五つに分断され、それぞれの王国に宝玉として保管されたと聞きます。そしてそのうちのひとつが解き放たれ、彼らも目覚めたのでしょう」
エルクはそう分析していた。エルクは知っていた。アーガスの宝物庫に魔王の宝玉があった事を。あの国王あそこまで愚かだとは思っていなかった。恐らくは自分いなくなった事で何かが起きたのであろう。その末にあの国王は魔王の宝玉を解き放ったのだ。仮初めの力を得る為に。実際は魔王の傀儡となるだけなのであるが、あの愚かな王はそんな事すら気づいていない事であろう。だが今はそんな事を考えている場合ではない。魔人ネメシスは危険な相手だ。今までの相手とは違う。
「御託はいい。かかってこい。さあ誰からだ。同時に襲いかかってきてもよいぞ」
強者の余裕か。ネメシスは待ち受けるだけだ。
「あなた達、行きなさい」
エルクはそう指示をする。
「は、はい!」
「私達は仲間でしょう。確かに私達は元教え子と教師です。教え子と教師というのはどうしても対等な関係にはならないかもしれません。ですが仲間はそうではありません。対等でなければならないのです。いつまでもおんぶにだっこでは困ります。これはその為の試験のようなものです」
「ほう……俺を試験代わりに使うつもりか。随分と舐められたものだな」
「ご協力感謝します。しかし私が考えるにはこれは必要な行いなのですよ」
「はい! わかりました! 先生! イシスさん! リーシアさん! 行きますよ!」
「「はい」」
三人は身構える。
「はああああああああああああああああああ!」
リーネは斬り掛かる。しかし、ネメシスに攻撃が当たるより前にバリアのようなものを感じた。
「なっ!?」
攻撃が弾かれる。
「きゃああああああああああああああああ!」
反動でリーネは弾き飛ばされた。
「氷結魔法(アイスフロスト)!」
イシスは魔法を唱えた。氷の息吹が襲いかかる。
「無意味だ!」
ネメシスのバリアの前にまたもや無効化された。
「なっ!? 物理攻撃の上に魔法まで無効化されるの! それとも氷属性の無効化?」
「教えてやろう。貴様の放つ魔法ではどれも我が身には届かない」
「な、なんですって!」
「い、痛いです……」
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「やはり……思った通りです。四聖竜の方々が先行していたのに魔人が今ものさばっている。つまりは彼らは負けたと思っていい。何かあるかと思いましたが、理由がわかりました。あの魔人にはランクS以下の攻撃は効かないと思った方がいい。『Sランク以下の攻撃無効化』のパッシブスキルを持っているようです」
「ほう。よくわかるではないか。貴様達人間の脆弱な攻撃など俺には効かないのだ」
「そ、そんな……じゃあ私達じゃダメージを与えられないって事じゃない」
「そんな……」
「どうした? 逃げるか? 逃げないなら先ほど逃がした女の代わりをして貰うぞ」
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「そうさせるわけにはいきません」
「「「先生!」」」
「なんだ。貴様が俺の相手をするのか」
「この子達は私の教え子です。指一本触れされるつもりはありません」
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「ほう」
「『ランクS以下の攻撃の無効化』しかしそれ以上の攻撃か、あるいは特殊効果のある攻撃であれば無効化できません」
「できるというのか。貴様に」
「ええ。出来ます。錬成」
エルクは一振りの槍を錬成する。禍々しい力を放つ槍だ。
「なんだ、その槍は」
「この槍はロンギヌスの槍です。ランクは『EX』付随効果はあらゆる防御障壁の『絶対無効化』」
「はったりだ! 2000年前に存在した伝説のレアアイテムだぞ! そんなものを人間が作り出せるわけがない! 贋作(フェイク)に決まっている!」
「ならばその場で試してみればいいのです!」
「ぬうっ!」
ネメシスはその身で槍を受けた。侮っていたが故に回避が遅れる。慌てて避けたが故に心臓を貫かれる事は避けれたが、それでもその身に受けることは防げなかった。槍はネメシスの障壁を貫いたのだ。
「ぐっ、ぐおっ!」
血が流れた、青い血だ。魔人に流れる血。
「ぐ、ぐうっ! まさか本当に我が障壁が破られるとは! その槍は本物のロンギヌスの槍のようだなっ!」
「ええ。だから言ったじゃないですか」
「……貴様! 何者だ!」
「それも言いましたよ。私はしがない錬金術師だと」
「面白い、面白い男だ。だが惜しい。貴様は強い。だが、他の三人はどうだ。てんで話にならないではないか」
「それを否定できないのが心苦しいですね」
「俺には他に強力な仲間が三人いる。俺と同じ程度には強い仲間だ。しかし貴様はどうだ。一人で闘っているではないか。俺達四人が同時に暴れ回れば、貴様といえど身体はひとつしかないであろう」
「痛いところを突かれましたね」
「今日のところは退く。だが、次はこうはいかないぞ」
ネメシスは転移魔法(テレポーテーション)で消えていった。
「先生……」
「あの魔人の言っていることは本当です。あなた達はまだ私の仲間とは本当の意味では言えないかもしれません」
「先生……私、もっと強くなりたいです」
「ええ。もっと強くなってください。本当の意味で私の仲間と言えるように」
「うわああああああああああああああああ! もっと強くなりたいです! 先生の役に立てるように! こんなんじゃ! こんなんじゃ先生の足を引っ張っているただの足手まといじゃないですか! うあああああああああああああああああ!」
リーネはエルクの胸で泣き始めた。
「よしよし。泣きなさい。泣いたらまた立ち上がって頑張ればいいんです。期待していますよ。リーネさん」
「ううっ……私達、なんて弱いの。先生におんぶに抱っこで」
「ううっ、先生」
三人は泣き始めた。エルクの力により魔人ネメシスを退けたがパーティーメンバーはパーティーの大きな問題点に気づいたのであった。
こうして魔人ネメシスは退き、王国スターティアの危機は一旦は去ったのである。
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召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

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