聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

つくも

文字の大きさ
上 下
23 / 61

魔人ネメシスの襲撃

しおりを挟む
 迷宮都市ラピスラズリ。その迷宮都市を所有地としている王国スターティア。そこに一人の男が現れた。ローブを着た怪しい男だ。男は王城へと向かう。
 王城への入り口は当然のように厳しい警備がされている。

「き、貴様! 何の用だ!」
「通せ」

 言葉ひとつである。しかし、男達の目の色が変わった。急に大人しくなったのである。

「は、はい。通します。お通りください」

 強烈な言霊である。言葉に魔力を乗せているのだ。魔力抵抗の低い人間はそれだけで簡単に命令を聞いてしまう事であろう。

「ここが王城か。この国の国王なら何か知っているであろうな」

 男は言った。男の名はネメシス。魔王四天王の一角。大魔道士である。

「な! 何者だ!」
「貴様が国王か」

 王室まで辿り着いたネメシスは男の首根っこを持ち上げ、つり上げる。初老の男だった。国王としての威厳があった。だが魔族であるネメシスにはそんな事は無関係である。

「そ、そうだが。い、一体何の用だ」
「貴様なら知っているであろう。魔王様の魂を宝玉に封じ込めているはずだ。どこにある?」
「そ、そんな事言えるわけがないだろう!」
「さあ! 言え!」

 ネメシスは念じる。

「ち、地下の宝物庫です」
「イメージで教えろ。場所を思い浮かべろ」
「ば、場所は」
「よし。いいだろう」 

 ネメシスは大魔道士である。今は失われた転移魔法ではあるが、使う事ができた。ネメシスは国王の浮かべているイメージを読み取った。

「よし……ではこの目障りな国王は」

 殺してもいいか。別に。もはや用済みなのだ。ネメシスはそう思っていた。
 だが。

「国王! 国王陛下! 国王陛下!」

 兵士が慌ただしく駆けずり回る。

「ちっ」

 ネメシスは舌打ちをする。勿論余裕で勝てるが面倒だ。優先順位からすれば魔王の宝玉を見つける事の方が先である。だから国王の事などどうでもよかった。それにただ国王として生まれたというだけで実際のところただの無力な人間である。圧倒的な力がある我らの魔王とは大きく異なっていた。
 だから別にどうでもよかったのだ。蟻が一匹生きていたとしても出来る事などたかが知れているだろう。

「命拾いをしたな。今俺には他にやるべき事がある。転移魔法(テレポーテーション)」

 ネメシスは転移魔法(テレポーテーション)で地下宝物庫へと転移をした。

「ぐっ、がはっ……ああっ」

 国王は呻いた。まだ生きている実感がなかった。

「こ、国王陛下! 無事でしたか!」
「あ、ああ。何とかな」
「し、侵入者は」
「消えたよ」
「き、消えた。そんな」
「わからない。あんな魔法見た事がない。もしかしたらあれは人間ではないのかもしれない」
「に、人間ではないですって?」
「ああ。奴の狙いは宝物庫だ。恐らくはそこにある魔王の宝玉だ」
「は、ははっ! 今すぐ冒険者を手配します故」
 
 兵士達は慌ただしく動いていた。

「ここが地下の宝物庫か」

 ネメシスは宝物庫へと転移した。感じた。こうまで近くにいれば感じ取る事ができる。確かな魔王の波動だ。

「間違いない。ここにある。どこだ」

 ネメシスは探した。雑多な物品が並ぶ宝物庫。中には金目のものも多くあった。レアなマジックアイテムも多くあった。しかしネメシスはそれに一切の興味を持ち得ない。
 そして最奥部、ついに見つける事ができた。

「ここだ!」

 ネメシスは見つけた。魔王の宝玉を。ネメシスはその宝玉を手に取る。黒色の淀んだ光を放つ丸い石だ。

「魔王様、すぐに本当の復活を果たします。お待ちくださいませ」

 ネメシスは宝玉をたたき割った。感じる。魔王の気配が僅かではあるが蘇ってきたという事を。

「くあっはっはっはっはっはっはっはっはっは! くあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」

 ネメシスは狂ったように笑う。

「随分な事してくれるじゃねぇかよ! おい!」
「ん?」

 ネメシスの前に複数の人間が姿を現した。現れたのは迷宮都市で最強と目されているSランク冒険者パーティー四聖竜の連中だ。

「貴様達は何の用だ? まさか俺と闘いにきたのか?」
「闘いにきたんじゃねぇ。お前をぶったおしにきたんだ」
「ほう……」
「どうやら魔族のようね」
「魔人か。滅びたんじゃなかったのか?」

 ゼネガルは問う。魔人は2000年前魔王と同時に滅び去ったと聞く。

「さあ。生き延びたのか。あるいは蘇ったのか。どちらかでしょうね」

 リーゼは答える。

「確か、こう言われていたな。暴れ回れと。そして他の連中も交戦する事になったら致し方ないとも言っていた。ならばこの状況は致し方ないという状況だろう。それにーー」
「ああ? なんだ? こいつ、何言ってるんだ?」
「2000年ぶりの抗争だ。血湧き肉躍るとはこの事。俺も少々、いや、相当に血に飢えているのだ」
「危険よ。こいつ、間違いなく強いわ」

 リーゼは身構える。

「おもしれぇ! やってやろうじゃねぇか! Sランク冒険者のプライドをかけて闘ってやるぜ!」
 
 ゼネガルは剣を構える。その他三人も構える。

「せいぜい俺を楽しませろ! 人間!」

 魔王直属の四天王の一人。魔人ネメシスとの闘いが始まった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

処理中です...