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魔人ネメシスの襲撃
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迷宮都市ラピスラズリ。その迷宮都市を所有地としている王国スターティア。そこに一人の男が現れた。ローブを着た怪しい男だ。男は王城へと向かう。
王城への入り口は当然のように厳しい警備がされている。
「き、貴様! 何の用だ!」
「通せ」
言葉ひとつである。しかし、男達の目の色が変わった。急に大人しくなったのである。
「は、はい。通します。お通りください」
強烈な言霊である。言葉に魔力を乗せているのだ。魔力抵抗の低い人間はそれだけで簡単に命令を聞いてしまう事であろう。
「ここが王城か。この国の国王なら何か知っているであろうな」
男は言った。男の名はネメシス。魔王四天王の一角。大魔道士である。
「な! 何者だ!」
「貴様が国王か」
王室まで辿り着いたネメシスは男の首根っこを持ち上げ、つり上げる。初老の男だった。国王としての威厳があった。だが魔族であるネメシスにはそんな事は無関係である。
「そ、そうだが。い、一体何の用だ」
「貴様なら知っているであろう。魔王様の魂を宝玉に封じ込めているはずだ。どこにある?」
「そ、そんな事言えるわけがないだろう!」
「さあ! 言え!」
ネメシスは念じる。
「ち、地下の宝物庫です」
「イメージで教えろ。場所を思い浮かべろ」
「ば、場所は」
「よし。いいだろう」
ネメシスは大魔道士である。今は失われた転移魔法ではあるが、使う事ができた。ネメシスは国王の浮かべているイメージを読み取った。
「よし……ではこの目障りな国王は」
殺してもいいか。別に。もはや用済みなのだ。ネメシスはそう思っていた。
だが。
「国王! 国王陛下! 国王陛下!」
兵士が慌ただしく駆けずり回る。
「ちっ」
ネメシスは舌打ちをする。勿論余裕で勝てるが面倒だ。優先順位からすれば魔王の宝玉を見つける事の方が先である。だから国王の事などどうでもよかった。それにただ国王として生まれたというだけで実際のところただの無力な人間である。圧倒的な力がある我らの魔王とは大きく異なっていた。
だから別にどうでもよかったのだ。蟻が一匹生きていたとしても出来る事などたかが知れているだろう。
「命拾いをしたな。今俺には他にやるべき事がある。転移魔法(テレポーテーション)」
ネメシスは転移魔法(テレポーテーション)で地下宝物庫へと転移をした。
「ぐっ、がはっ……ああっ」
国王は呻いた。まだ生きている実感がなかった。
「こ、国王陛下! 無事でしたか!」
「あ、ああ。何とかな」
「し、侵入者は」
「消えたよ」
「き、消えた。そんな」
「わからない。あんな魔法見た事がない。もしかしたらあれは人間ではないのかもしれない」
「に、人間ではないですって?」
「ああ。奴の狙いは宝物庫だ。恐らくはそこにある魔王の宝玉だ」
「は、ははっ! 今すぐ冒険者を手配します故」
兵士達は慌ただしく動いていた。
「ここが地下の宝物庫か」
ネメシスは宝物庫へと転移した。感じた。こうまで近くにいれば感じ取る事ができる。確かな魔王の波動だ。
「間違いない。ここにある。どこだ」
ネメシスは探した。雑多な物品が並ぶ宝物庫。中には金目のものも多くあった。レアなマジックアイテムも多くあった。しかしネメシスはそれに一切の興味を持ち得ない。
そして最奥部、ついに見つける事ができた。
「ここだ!」
ネメシスは見つけた。魔王の宝玉を。ネメシスはその宝玉を手に取る。黒色の淀んだ光を放つ丸い石だ。
「魔王様、すぐに本当の復活を果たします。お待ちくださいませ」
ネメシスは宝玉をたたき割った。感じる。魔王の気配が僅かではあるが蘇ってきたという事を。
「くあっはっはっはっはっはっはっはっはっは! くあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
ネメシスは狂ったように笑う。
「随分な事してくれるじゃねぇかよ! おい!」
「ん?」
ネメシスの前に複数の人間が姿を現した。現れたのは迷宮都市で最強と目されているSランク冒険者パーティー四聖竜の連中だ。
「貴様達は何の用だ? まさか俺と闘いにきたのか?」
「闘いにきたんじゃねぇ。お前をぶったおしにきたんだ」
「ほう……」
「どうやら魔族のようね」
「魔人か。滅びたんじゃなかったのか?」
ゼネガルは問う。魔人は2000年前魔王と同時に滅び去ったと聞く。
「さあ。生き延びたのか。あるいは蘇ったのか。どちらかでしょうね」
リーゼは答える。
「確か、こう言われていたな。暴れ回れと。そして他の連中も交戦する事になったら致し方ないとも言っていた。ならばこの状況は致し方ないという状況だろう。それにーー」
「ああ? なんだ? こいつ、何言ってるんだ?」
「2000年ぶりの抗争だ。血湧き肉躍るとはこの事。俺も少々、いや、相当に血に飢えているのだ」
「危険よ。こいつ、間違いなく強いわ」
リーゼは身構える。
「おもしれぇ! やってやろうじゃねぇか! Sランク冒険者のプライドをかけて闘ってやるぜ!」
ゼネガルは剣を構える。その他三人も構える。
「せいぜい俺を楽しませろ! 人間!」
魔王直属の四天王の一人。魔人ネメシスとの闘いが始まった。
王城への入り口は当然のように厳しい警備がされている。
「き、貴様! 何の用だ!」
「通せ」
言葉ひとつである。しかし、男達の目の色が変わった。急に大人しくなったのである。
「は、はい。通します。お通りください」
強烈な言霊である。言葉に魔力を乗せているのだ。魔力抵抗の低い人間はそれだけで簡単に命令を聞いてしまう事であろう。
「ここが王城か。この国の国王なら何か知っているであろうな」
男は言った。男の名はネメシス。魔王四天王の一角。大魔道士である。
「な! 何者だ!」
「貴様が国王か」
王室まで辿り着いたネメシスは男の首根っこを持ち上げ、つり上げる。初老の男だった。国王としての威厳があった。だが魔族であるネメシスにはそんな事は無関係である。
「そ、そうだが。い、一体何の用だ」
「貴様なら知っているであろう。魔王様の魂を宝玉に封じ込めているはずだ。どこにある?」
「そ、そんな事言えるわけがないだろう!」
「さあ! 言え!」
ネメシスは念じる。
「ち、地下の宝物庫です」
「イメージで教えろ。場所を思い浮かべろ」
「ば、場所は」
「よし。いいだろう」
ネメシスは大魔道士である。今は失われた転移魔法ではあるが、使う事ができた。ネメシスは国王の浮かべているイメージを読み取った。
「よし……ではこの目障りな国王は」
殺してもいいか。別に。もはや用済みなのだ。ネメシスはそう思っていた。
だが。
「国王! 国王陛下! 国王陛下!」
兵士が慌ただしく駆けずり回る。
「ちっ」
ネメシスは舌打ちをする。勿論余裕で勝てるが面倒だ。優先順位からすれば魔王の宝玉を見つける事の方が先である。だから国王の事などどうでもよかった。それにただ国王として生まれたというだけで実際のところただの無力な人間である。圧倒的な力がある我らの魔王とは大きく異なっていた。
だから別にどうでもよかったのだ。蟻が一匹生きていたとしても出来る事などたかが知れているだろう。
「命拾いをしたな。今俺には他にやるべき事がある。転移魔法(テレポーテーション)」
ネメシスは転移魔法(テレポーテーション)で地下宝物庫へと転移をした。
「ぐっ、がはっ……ああっ」
国王は呻いた。まだ生きている実感がなかった。
「こ、国王陛下! 無事でしたか!」
「あ、ああ。何とかな」
「し、侵入者は」
「消えたよ」
「き、消えた。そんな」
「わからない。あんな魔法見た事がない。もしかしたらあれは人間ではないのかもしれない」
「に、人間ではないですって?」
「ああ。奴の狙いは宝物庫だ。恐らくはそこにある魔王の宝玉だ」
「は、ははっ! 今すぐ冒険者を手配します故」
兵士達は慌ただしく動いていた。
「ここが地下の宝物庫か」
ネメシスは宝物庫へと転移した。感じた。こうまで近くにいれば感じ取る事ができる。確かな魔王の波動だ。
「間違いない。ここにある。どこだ」
ネメシスは探した。雑多な物品が並ぶ宝物庫。中には金目のものも多くあった。レアなマジックアイテムも多くあった。しかしネメシスはそれに一切の興味を持ち得ない。
そして最奥部、ついに見つける事ができた。
「ここだ!」
ネメシスは見つけた。魔王の宝玉を。ネメシスはその宝玉を手に取る。黒色の淀んだ光を放つ丸い石だ。
「魔王様、すぐに本当の復活を果たします。お待ちくださいませ」
ネメシスは宝玉をたたき割った。感じる。魔王の気配が僅かではあるが蘇ってきたという事を。
「くあっはっはっはっはっはっはっはっはっは! くあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
ネメシスは狂ったように笑う。
「随分な事してくれるじゃねぇかよ! おい!」
「ん?」
ネメシスの前に複数の人間が姿を現した。現れたのは迷宮都市で最強と目されているSランク冒険者パーティー四聖竜の連中だ。
「貴様達は何の用だ? まさか俺と闘いにきたのか?」
「闘いにきたんじゃねぇ。お前をぶったおしにきたんだ」
「ほう……」
「どうやら魔族のようね」
「魔人か。滅びたんじゃなかったのか?」
ゼネガルは問う。魔人は2000年前魔王と同時に滅び去ったと聞く。
「さあ。生き延びたのか。あるいは蘇ったのか。どちらかでしょうね」
リーゼは答える。
「確か、こう言われていたな。暴れ回れと。そして他の連中も交戦する事になったら致し方ないとも言っていた。ならばこの状況は致し方ないという状況だろう。それにーー」
「ああ? なんだ? こいつ、何言ってるんだ?」
「2000年ぶりの抗争だ。血湧き肉躍るとはこの事。俺も少々、いや、相当に血に飢えているのだ」
「危険よ。こいつ、間違いなく強いわ」
リーゼは身構える。
「おもしれぇ! やってやろうじゃねぇか! Sランク冒険者のプライドをかけて闘ってやるぜ!」
ゼネガルは剣を構える。その他三人も構える。
「せいぜい俺を楽しませろ! 人間!」
魔王直属の四天王の一人。魔人ネメシスとの闘いが始まった。
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