聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

つくも/九十九弐式

文字の大きさ
14 / 61

難病の少女を一瞬で治しめちゃくちゃ感謝される

しおりを挟む
「はぁ~……つきました」

 四人はリーシアの妹がいる町にたどり着いた。長閑な町だった。リーシアの実家がある町でもある。

「ゆっくりと休んでいる暇はありませんよ。早速ですがリーシアさんのご実家に行きましょうか」
「は、はい。先生。案内します」

 リーシアに案内され、その町の一軒家に案内される。

「ごほっ! がほっ! ごほっ!」

 家に入るなり、せき込むような声が聞こえてきた。

「だ、大丈夫かティナ。もうすぐ新しい白魔導士を連れてくるから」
「む、無理だよ。だって何人連れてきても私の病気は治らなかったじゃない。私はもう死ぬ運命なのよ」
「あ、諦めるな。希望を捨てなければ絶対」
「希望を抱けば絶望が深くなるだけよ。私も最初の頃連れてきた先生達には期待してた。でも無理だった。だから希望を抱かないようにしたの。これも自分の運命だって諦めた方が気が楽になるから」

 明るくない話が聞こえてきた。

「お母さん」
「……あら。リーシア、おかえりなさい」

 一人の女性が現れる。優しそうな女性ではあるが目には疲れが見える。やはり重病の娘がいると気が気ではないのだろう。その心労を察するのはたやすい。

「どうしたの? 冒険者が嫌になって逃げかえってきた?」
「そんなわけないじゃない」
「そちらの方々は?」
「錬金術師の先生、それと一緒に冒険をするパーティーの皆なの」
「あら。そうだったの。初めまして。リーシアの母です。娘がお世話になっております」

 リーシアの母は頭を下げた。

「それでお母さん、ティナは」
「今お父さんが様子を見ているわ」
「容態はどうなの?」
「変わらないわよ」

 お母さんは頭を振る。

「なに? お見舞いにきてくれたの? 是非顔をみていってやって」
「うん。そうじゃないけど。そのようなものかもしれない」

 リーシアは疑っていたわけではない。しかしエルクでもどうにかできなかった場合、絶望がより深くなる気がして信じきれなかったのだ。

「ともかくティナのところへ行くから」
「ええ。是非顔を見ていってね」
「お邪魔します」

 四人はリーシアの妹のティナのところへ行った。

「ごほっ! ごほっ! ごほっ!」
「大丈夫か! ティナ!」

 嗚咽する娘。それから介護をする父の痛々しい姿があった。母は台所に立っていたことから食事の用意をしていたのであろう。皆、疲れ切っている様子だった。
 ティナもリーシアと同じで美人である。面影があるが、その蒼白な表情は美しいという印象より先惨めさを感じさせる。

「お、お客様かしら。それに、お姉ちゃん」
「リーシア。お客様まで。一体どうして」
「ティナ、錬金術師の先生を連れてきたよ。すっごい先生だから。ティナの病気も治せるかも」
「そんなわけないじゃない。今まで何人も先生を連れてきても私の病気は治せなかったんだから」
「ともかく診てみなければわかりません。私に診せてはいただけないでしょうか」
「……無駄だと思いますが、それでもよろしければ」

 エルクはリーシアを診察する。

「ね。無駄でしょう。無理ですよね。治せるわけないですよね。何人先生を連れてきても無理だったんですから」
「治せますよ」
「え?」
「今、なんと」
「治せますよ。あなたの病。大昔に流行った流行り病です。現代の白魔法では癒す事はできませんか、古代の知識から秘薬を作れば治ります」
「う、嘘よ! そんな簡単に治せるはずがない! きっとうまい事をいって、うちからお金を絞りとる気でしょう!」
「ティナ! エルク先生がそんな事をする人なわけないでしょう!」
「まあ、いいです」
 
 エルクは錬成石による高速錬成で一瞬にして秘薬を作り出した。

「疑うのはこれを飲んでからにしてみませんか」

 エルクは秘薬を差し出す。

「別にいいです。あなたが渡したのが毒薬でもなんでも。楽に死ねるなら本能ですから」

 ティナは女の子とは思えない強引な飲みっぷりで秘薬を一気飲みした。すると体が緑色の光で覆われる。

「う、うそ! ……体が」

 そしてティナは常時していた咳が消え、顔色も元通りになった。

「どうして。今まで治せなかったのに」
「だから言ったでしょう。ティナ、先生は凄い先生だって」
「お姉ちゃん、私、うわあああああああああああああん!」
「ティナ! ううっ!」

 リーシアとティナは抱き合った。リーシアはそれほどまでにティナの病気が治る事を祈っていたのである。

「ほら、ティナ、先生にお礼を言いなさい」
「ありがとうございます! 先生! ごめんなさい、私先生の言う事信じられなくて。何度も裏切られてきたからそれで。うわあああああああああああん!」
「そう、謝らなくていいですよ。大切な教え子であるリーシアさんの妹さんが健康になって私も嬉しいのです」
「母さん! ティナの病気が治ったって!」
「え? 嘘? 本当なの?」

 先ほどまでの生気のない表情が嘘のようだった。活気のある顔で両親がエルクの元へ駆け寄ってきた。

「せ、先生! ティナの病気が治ったんですか」
「ええ。まあ、おそらくそうですが」
「本当なの? ティナ! 治ったの?」
「う、うん。そうみたい。自分でもあっけないくらい。何事もなかったように元気になって」
「先生! ありがとうございます!」
「は、はい。親御さんにも喜んでいただけて私としても嬉しい限りです」
「今日はお祝いだ! 盛大にパーティーを開こう!」
「先生も是非参加してください。あなたはティナの恩人というだけではありません。私達の恩人です」
「え、ええ。まあ。ではお言葉に甘えて」

 こうしてパーティーが開かれる事となる。

「ところで先生は独身なんですか?」

 豪華な料理がテーブルに並び酒が振舞われている最中の事だった。父は喜びのあまり飲みすぎ、酒を飲み過ぎていた。ついついハメを外してしまっていた。

「お父さん、いきなり失礼よ」
「はは……お恥ずかしながら独身です。長年自室にこもりっきりで、あまり縁らしい縁もなかったんですよ」

 エルクは笑いながら答える。エルクも酔っていた。

「あなたは娘ーーティナの命の恩人です。そして優秀な錬金術師だと聞いております。よろしければ私の娘どちらか貰っていただけないでしょうか?」
「お、お父さん!」
「あら? お姉ちゃんはエルク先生と結婚したくないの?」
「そ、そんな事はないけど。勿論結婚して欲しいけど。え? って、ティナ。何言わせるのよ!」
「先生!」

 ティナはエルクの手を握る。そして潤んだ瞳で見つめ、熱心に語りかけてきた。

「先生は私の命の恩人です。よろしければ私を貰って頂けませんか?」
「だ、だめですっ!」

 リーネが割り込む。

「なぜリーネが口を挟む?」そうイシスは問う。
「だめです! だめです! だめです! 先生は私と結婚するんですーーーーーーーーーーーーーー!」

 リーネは叫んだ。その叫びは町中に聞こえる程大きな声であった。



 こうしてリーシアの妹の病気を治すという目的は達成されたのだ。

「いいんですか? リーシアさん。あなたの冒険の目的は終わったのでしょう? あなたがこれ以上冒険者として生きる必要はもう」
「確かにティナの病気は治りました。けど私はまたひとつ目的ができたんです。それはーー」

  リーシアは笑顔で語る。

「エルク先生という命の恩人に、返せない程大きな恩ができました。だからその恩を少しずつ返していきたいんです」
「そうですか。ではまだ一緒に冒険を続けましょうか」
「はい! お願いします」

 こうして四人は次の目的地へと旅立った。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...