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第5話 宿屋にて

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  俺は宿屋のベッドで横になる。ふかふかのベッドは柔らかく、以前泊まっていた安宿とは大きく異なっていた。これがまともな生活をしている……という事なのだろう。

 寝っ転がりながら、俺は昼間の事を考えていた。昼間の事……ゴードンの事だ。ゴードンは昼間の時、自身の剣技スキルのスキルレベルが『40』だったと言っていた。いずれは最高値である『50』に到達し、剣聖と謳われるようになる……だの、なんだの言っていた。

 あの言葉がハッタリでなかったとしたのならば、やはり俺の剣技スキルのレベルがゴードンを上回っていたという事に他ならない。

 これは一体どういう事なのか……。俺の固有(ユニーク)スキルは成長率が低くなる外れスキル『成長率鈍化』ではないのか。

 もしかしたら違うのかもしれない。俺の固有スキルは成長率が低くなる外れスキルではない、という仮説が一つ立てられた。

 成長率が鈍化する、という効果は固有スキルの本質ではない。長所を引き出す為の短所のようなものだ。例えるならば攻撃力がとても上昇するがその代償として防御力が低下してしまう剣のようなもの。
 成長率が鈍化するというのはその短所の部分であって、固有スキルの本質ではないのだ。本当の俺の固有スキルは恐らくもっと違うもの。

 では一体、本当の俺の固有スキルとは何なのか。きっとその本当の固有スキルが俺の剣技のスキルレベルの上限を突破させたのだろう。

 仮に、俺の固有スキルを『成長上限突破』スキルだとする。このスキルは未検証ではあるが、今わかっている事はスキルレベルの上限を突破できるという事だった。

 だが、果たしてこれはスキルレベルだけを上限突破できるものなのだろうか? もしかしたらスキルレベルだけではないのかもしれない。レベルも上限突破できる可能性があった。

 無論、ネガティブ効果としての『成長率鈍化』が足を引っ張る為、レベル上限の99に到達するには膨大な経験値を必要とする。普通の成長率を持った人間でも最高値であるレベル99に到達できた者は僅かなのだ。

 だが、そのレベル99に到達できた時、もしそのレベル上限に到達し、突破できた時。

 俺の見えている世界は変わるのかもしれない。そう思えるようになった。

 絶望していた俺に希望の光が差し込んで来た。そんな気分だった。

「……寝るか」

 俺は照明を消し、寝る事にした。ワクワクとしてきたのは確かだが、俺がレベル上限にまで到達するのには長い時間がかかるのは間違いなかった。

 スライム退治をするのは終わりだ。スキルレベルは使うだけ習熟度が上がり、レベルアップするが、レベルはそうではない。レベルは倒したモンスターの経験値で上昇するのだ。

 スライムは倒しやすい相手ではあるが、その分、倒しても得られる経験値が少ない。

 だからスキルレベルは上限まで到達したが、レベルは30までしかいかなかったのである。

 次からはもっと強く、経験値の多いモンスターを倒さなければならないだろう。

 明日からの行動方針が決まった俺は眠る事にしたのだ。

 そして次の日の朝を迎える。
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