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【王子視点】暗殺者を派遣する
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「くっ……あのアマ、あのクソアマ! 大人しくこの美しい私に抱かれておけばいいというのに、挙句の果てに平手打ちを食らわせて逃走だと! レオンっ!」
アトラスの父であるレオンは、義理の娘である、カレンの狼藉——ちなみにルーネス王子曰くである。傍目から見れば完全な正当防衛というものであろう。王子は強姦しようとしていたようなものなのだから。
――ともかくとして。思い通りに事が進まなかったルーネスは大層不機嫌であった。そしてその責任をアルカディア家の現当主であるレオンに押し付けようとしていたのだ。半ば因縁ではあるが、ルーネスはそれを正しいと信じて疑っていなかったのだ。
「……貴様、この責任どうとってくれる? 私の頬は大変痛かったのだぞっ!」
当初はルーネスの頬は赤く腫れあがっていたが、それも今では宮廷回復術士の回復魔法により、跡形もなく治っている。だが、いかに回復魔法とはいえ、痛かった時の記憶は失せるわけではない。
それだけではない。ルーネスはカレンが自分に恥をかかせた事に対して、憤っていたのだ。それに、優秀な騎士となってであろう【剣聖】の天職を得たカレンを逃した事も痛手であった。
レオンは当然不服であった。だが、やはり立場というものがある。騎士の名家といえども、王国に仕える身である。それ故に王子が白を黒と言えば、やはり黒だと言うより他にない。
「どうしてくれるのだ! 養子とはいえ、貴様の娘の不始末なのだぞっ!」
「も、申し訳ありません、ルーネス王子。責任は必ず、この私が」
「ほう、どうやって責任を取るのだ? その方法は何だ? 申してみよ!」
「はっ! ……まずはカレンの奴を探し出します」
「探し出す? どうやってだ?」
「カレンの行く先には心当たりがあります」
「心当たり?」
「ええ……あやつは愚息——そしてカレンにとっては義兄であるアトラスを慕っておりました。カレンは恐らくはアトラスを探す事でしょう。今頃、合流しているやもしれません。元より、非才な息子であるアトラスを私は始末する予定でした」
「ほうっ……」
「王国にはお抱えの暗殺者(アサシン)部隊がいると聞いた事があります。ですので、その暗殺者(アサシン)部隊を派遣してください。その上で、息子であるアトラスを始末してもらいます……カレンの奴も、お望みとあれば同じように始末を」
自分の息子と娘の事であるのに、父であるレオンはまるで他人事のように冷たく告げた。
「まあ、よせ。アトラスとかいう、男は始末してもいい。だが、あの女——カレンを始末するのは実に勿体ない話だ」
ルーネス王子は舌なめずりをした。その目は好色の色で染まっているかのようだ。実に性的でいやらしい表情になる。
「私から逃げた罰だ……あの女には私自らの手でお仕置きをしてやろう。私の色で、あの女を染め上げてやろう」
「そうですか……王子がお望みなのでしたら、その通りに」
「私の前に現れよ! 王国一の暗殺部隊よ!」
「「「はっ!」」」
複数人の黒装束の男――それから女が若干名の者達が、突然姿を現す。まるで影から這い出てきたようだ。あるいは転移魔法でも使ったかのような。手品のような出現に、流石のレオンも目を食らった。
「何としてでも、あのアトラスとカレンを見つけ出せっ! 女の方は殺すなよ。生け捕りにしろ! 男の方は別に殺しても構わんっ!」
「「「はっ! 仰せのままにっ!」」」
こうして、王国イスカンダルから暗殺部隊が出動する事になった。
目的の一つはアトラスの始末。そして二つ目はカレンの生け捕りだ。
何も知らない二人の背後に、危険がすぐそこまで忍び寄っていたのだ。
アトラスの父であるレオンは、義理の娘である、カレンの狼藉——ちなみにルーネス王子曰くである。傍目から見れば完全な正当防衛というものであろう。王子は強姦しようとしていたようなものなのだから。
――ともかくとして。思い通りに事が進まなかったルーネスは大層不機嫌であった。そしてその責任をアルカディア家の現当主であるレオンに押し付けようとしていたのだ。半ば因縁ではあるが、ルーネスはそれを正しいと信じて疑っていなかったのだ。
「……貴様、この責任どうとってくれる? 私の頬は大変痛かったのだぞっ!」
当初はルーネスの頬は赤く腫れあがっていたが、それも今では宮廷回復術士の回復魔法により、跡形もなく治っている。だが、いかに回復魔法とはいえ、痛かった時の記憶は失せるわけではない。
それだけではない。ルーネスはカレンが自分に恥をかかせた事に対して、憤っていたのだ。それに、優秀な騎士となってであろう【剣聖】の天職を得たカレンを逃した事も痛手であった。
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「どうしてくれるのだ! 養子とはいえ、貴様の娘の不始末なのだぞっ!」
「も、申し訳ありません、ルーネス王子。責任は必ず、この私が」
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「はっ! ……まずはカレンの奴を探し出します」
「探し出す? どうやってだ?」
「カレンの行く先には心当たりがあります」
「心当たり?」
「ええ……あやつは愚息——そしてカレンにとっては義兄であるアトラスを慕っておりました。カレンは恐らくはアトラスを探す事でしょう。今頃、合流しているやもしれません。元より、非才な息子であるアトラスを私は始末する予定でした」
「ほうっ……」
「王国にはお抱えの暗殺者(アサシン)部隊がいると聞いた事があります。ですので、その暗殺者(アサシン)部隊を派遣してください。その上で、息子であるアトラスを始末してもらいます……カレンの奴も、お望みとあれば同じように始末を」
自分の息子と娘の事であるのに、父であるレオンはまるで他人事のように冷たく告げた。
「まあ、よせ。アトラスとかいう、男は始末してもいい。だが、あの女——カレンを始末するのは実に勿体ない話だ」
ルーネス王子は舌なめずりをした。その目は好色の色で染まっているかのようだ。実に性的でいやらしい表情になる。
「私から逃げた罰だ……あの女には私自らの手でお仕置きをしてやろう。私の色で、あの女を染め上げてやろう」
「そうですか……王子がお望みなのでしたら、その通りに」
「私の前に現れよ! 王国一の暗殺部隊よ!」
「「「はっ!」」」
複数人の黒装束の男――それから女が若干名の者達が、突然姿を現す。まるで影から這い出てきたようだ。あるいは転移魔法でも使ったかのような。手品のような出現に、流石のレオンも目を食らった。
「何としてでも、あのアトラスとカレンを見つけ出せっ! 女の方は殺すなよ。生け捕りにしろ! 男の方は別に殺しても構わんっ!」
「「「はっ! 仰せのままにっ!」」」
こうして、王国イスカンダルから暗殺部隊が出動する事になった。
目的の一つはアトラスの始末。そして二つ目はカレンの生け捕りだ。
何も知らない二人の背後に、危険がすぐそこまで忍び寄っていたのだ。
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