【竜騎士】が大ハズレ職業だと蔑まれ、実家を追われました。だけど古代書物の知識から俺だけは最強職だと知っていた。

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冒険者として登録する

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「いらっしゃいませ! ギネヴィアの冒険者ギルドへようこそ!」

 受付嬢の快活な声が響き渡る。

 隣国ギネヴィア。

 俺はその国の冒険者ギルドを訪れた。

「どのようなご用件でしょうか? まずは冒険者ライセンスをご提示ください」

 冒険者ライセンス。冒険者をしていく上で必要なライセンスになる。このライセンスがないと冒険者としては活動できないのだ。

「すみません、冒険者ライセンスを持ってないんです」

 俺はそう告げた。俺はまだ冒険者になっていないのだ。だから冒険者ライセンスなど持っているはずもなかった。

「ああ……これから冒険者になる、新人さんですか。冒険者登録の説明を受けますか?」

 受付嬢は聞いてきた。冒険者には基本的にランクがある。S~Fランクまで。そしてそのランクに応じて受けられるクエストの難度も報酬も変わってくる。その程度の事は俺とて、一般常識として知っていた。

「いえ、いいです。大まかな事は知っていますから」

「そうですか。でしたらこの冒険者シートに記載をお願いします。文字の読み書きはできますよね?」

「ええ……一通りなら」

 冒険者としても様々だ。叡智に優れた魔法職についているような者もいれば、ただの怪力だけが売りで、文字の読み書きもできないような奴もいる。

「書き終わりましたら、声をかけてください」

 俺は渡された紙にペンを走らせる。名前、年齢。それから職業。様々な情報を書いた末に、受付嬢に渡す。

「はい……どうぞ」

「ありがとうございます。えーと……アトラス・アルカディアさん。年齢は15歳。職業……『竜騎士』ですね」

 読み上げたその瞬間、受付嬢の表情が歪んだように感じた。俺が『竜騎士』という職業に就いている事に違和感を覚えているようだ。この隣国ギネヴィアでも『竜騎士』が外れ職業であるという共通認識があるのだろう。

 受付嬢は仕事上、目立った態度には出さないが。――だが、他の冒険者達はそうではない。中にはゴロツキやチンピラと大差ない連中もいるからだ。

「へっ。何々? 受付嬢さん、そいつ『竜騎士』なんて職業に就いてるの?」

 数人の冒険者達が俺に絡んできた。

「え? ええ……そのようですが」

「『竜騎士』さんよ。それで、肝心の竜はどこにいるんだ?」

「今はいない……」

「へっ。見てみろよ。こいつのステータスを。レベルも1の上、ステータスも貧弱だぜ」

 解析(アナライズ)の魔法を保有している奴がいるのだろう。俺のステータスを覗き見られた。

「初期ステータスが低い上に成長速度も最低クラスだ。そんな弱っちいのに、てめーはどうやって竜を従えるつもりなんだよ?」

「……くっ」

 連中は俺を隠した扱いして馬鹿にしてきた。だが、言い返す言葉もない。奴らの言葉には間違いない事実が含まれていた。ここで言い返したところで、負け犬の遠吠えでしかない。

「……よせ」

 冒険者パーティーのリーダーと思しき男がいた。他のゴロツキのような男達とは、一段と風格が異なっていた。

「こんな奴に構っている時間は俺達にはない。時間の無駄だ。次のクエストに行くぞ」

「うっす」

「そうっすね……」

「おら。邪魔だ。そこどけ、雑魚野郎!」

 俺は場所を譲る。俺はやり場のない憤りを抱えていた。父やあの王子に馬鹿にされた上に、冒険者達にも馬鹿にされて、やり返すこともできない自分が情けなかった。

「受付嬢さん。次のクエストをお願いしますよ」

「は、はい。冒険者パーティー『疾風迅雷』の皆様ですね……わかりました」

「もうすぐ、Bランクに昇格するな」

「ああ……そうだな。そうなれば報酬も跳ね上がる、もっと良い暮らしができるってもんだ」

 俺を馬鹿にした冒険者パーティーは『疾風迅雷』というらしい。

 ◆

「お待たせしました。これが冒険者ライセンスです」

 しばらく待たされた俺はやっとの事、冒険者ライセンスを受け取る。銅で出来た安物のライセンスだ。

「新規の冒険者の方は特例がない限りはFランクからのスタートになります。早速クエストをお受けになりますか?」

「はい……お願いします」

 俺には金がなかった。金がなければ装備も揃えれないし。食事も満足に取れない。宿にも泊まれない。まずは金を稼ぐ必要性があった。

「どのクエストに致しましょうか? とはいえ、Fランクの方が受けられるクエストは今でしたら、一つしかないんですが」

「でしたらそれでお願いします」

 そもそも、選択の余地などなかった。選ぶ手間が省けた。

「それではアトラスさんには近隣の村に現れたゴブリン退治をお願いします」

 こうして俺はFランクの冒険者としてゴブリン退治に出向く事になったのである。
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