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竜騎士としての第一歩を踏み出す

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「はぁ……はぁ……はぁ」

 俺は肩で息をしていた。父であるレオンに自害を迫られた俺は一目散にその場から逃げ出していった。気が付くと母国であるイスカンダルは遥か後方にあった。あれほど大きかった国も小さく見えていた。

「すぅー……はぁー……」

 誰も追いかけてこない事を確認し、俺は深呼吸をして心脈を落ち着かせた。父――レオンのあの様子は尋常ではなかった。息子である俺に自害を強要するとは。

 俺が国外に逃げたくらいで諦めるとはとても思えない。一族の恥として、俺を始末する追手くらいは放ってきそうなものだった。

 せっかく幼き頃に夢見た『竜騎士』になれたんだ。竜を操り、大空を飛び交う竜騎士に。古代書物で知った憧れの天職に選ばれたんだ。

『竜騎士』が大ハズレの職業だとかいう、誤った思い込みで殺されては元も子もなかった。

 俺は周囲を確認する。追手の気配はなかった。しばらくは大丈夫そうだ。俺は安堵の溜息を吐く。

 しばらくして落ち着きを取り戻した。まず、しなければいけないのは現状の確認だ。

「『ステータスオープン』」

 俺は自身のステータスを確認する必要があった。そう言葉を発し、念じると俺の目の前に自身のステータスが表れる。

【アトラス・アルカディア】

天職:竜騎士

Lv :1

HP :5/10

MP :5/5

攻撃力:1

防御力:1

魔法力:1

素早さ:1

【装備】

〈銅の剣〉

〈なし〉

【職業固有スキル】

〈騎竜〉
〈全竜強化〉

【通常スキル】

【所持金】

 0G

 見事なまでに何もなかった。初期ステータスがあまりに低い。HPが半分になったのは、ここに来るまでにあのクソ親父に一発良いのを貰っていたからであろう。

 竜騎士は初期ステータスが低い上に、成長速度も全職業の中で最も遅い。だが、古代書物を読み漁っていた俺は竜騎士の潜在能力(ポテンショナル)の高さを知っていた。

 確かに、父も言っていたように竜騎士の真価は竜を従える事で発揮する。その為には竜を僕として従えなければならない。現実問題、竜を従えた人間はいないとされている。確かに、竜を従えるのは困難だ。

 竜は強力な怪物(モンスター)である上に高い知能を持っている。その上に気難しい気性をしている。馬なんかよりも、余程扱いづらい存在だ。

 だが、父は間違っている。確かに現代においては竜を従えている人間はいない。だが、古代書物には竜を従えていた人間、本当の意味での『竜騎士』が存在していたのだ。

 だから、俺は古代の人間ができていた事を現代で成し遂げるのは決して不可能な事ではないと思っていた。

 そう、竜を従えた竜騎士は決して絵空事の出来事ではなかったんだ。太古の世界には竜を従えた『竜騎士』は存在していたはずなんだ。

 俺の【職業固有スキル】〈騎竜〉〈全竜強化〉はどちらも竜がいるからこそ発揮できるスキルだ。

 効果はおいおい説明するが、今のところ役に立つスキルではない。竜がいる場合の補助系スキルのようなものだ。

 そもそも竜騎士は竜がいなければ話にならない。竜がいなければ最弱の外れ職業だという父やあのルーネス王子の味方は決して間違いではない。その竜を手に入れるのも不可能だと思われていたのだから、鼻で笑われ、見下されるのも当然だった。

 だが、俺は竜騎士の可能性を知っていた。俺は信じている。この職業こそが最強に至れる職業だという事を。決して大ハズレの職業なんかじゃないという事を。俺が証明してやる。

「見てろよ……絶対に目にもの見せてやる」

 父の事はどうでもよかった。だが、義妹であるカレンの事だけは気がかりだった。

 カレン……俺がいなくてもしっかりやれよ。

 カレンは俺の事を心配しているかもしれない。不安で夜も眠れないかもしれない。だけど、俺はいつまでも遠く離れたところにある母国イスカンダルを見つめているわけにもいかなかった。

 ――よし。俺は気を取り直す。カレンの事は心配だったが、俺はやるべき事をやらなければならなかった。

 俺は隣国ギネヴィアへと向かう事にした。まずは先立つものが必要だった。俺は金を稼がなければならない。

ギネヴィアには冒険者ギルドがあるはずだ。冒険者になって金を稼ぐ。

 危険を伴う事にはなるが、モンスターを倒し、自身のレベルも上げる事ができる。一石二鳥とはまさにこの事だ。

 俺は隣国ギネヴィアへと向かうのであった。

 俺の目的は大きく分けて二つだ。まず一つ『俺自身が強くなる事』だった。竜を使役する為には、竜に認められなければならない。その為の大前提として強さが必要だった。
そしてその次が『竜を使役する事』だ。この目的をクリアする為には、先に挙げた目的『俺自身が強くなる事』をクリアしていなければならない。

 まず、俺自身が強くなる事が何よりも必要であった。竜を使役できる強さを手に入れる為、一歩ずつではあるが進んでいかなければならない。

 こうして俺は『竜騎士』としての第一歩を踏み出す事になった。
 





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