世界最強の無名剣士【ノービス】。クラス転移で役立たずはいらないと捨てられたが、異世界召喚二週目の俺は効率プレイで成り上がる!

つくも

文字の大きさ
上 下
52 / 53

竜軍の蹂躙

しおりを挟む
(視点変更、魔王軍六天王の一角、竜王バハムート)

「うわっ! なんだあれはっ!」

「竜だ! 逃げろ! 逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「い、いや、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 
 王国アルヴァートゥアは長閑で平和な日常から、一転して阿鼻叫喚の地獄と化してしまった。

 大空に出現した竜の群れを見て、群衆達は一瞬でパニックになってしまったのである。

  ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 天空を飛び交う数多の竜。その竜が突如、息吹(ブレス)攻撃を放ってきた。様々な属性の息吹(ブレス)が放たれる。炎だったり、氷だったり、雷だったり、風であったり。
 どんな属性の攻撃であっても、ただの一般国民に耐えられるはずもない。当たれば悲鳴を上げ、即死するだけだ。即死せずとも、片腕や片足が吹っ飛んだ哀れな国民も多かった。

 ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

 建築物が盛大な音を立て、崩れ落ちてくる。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 大きくて長い悲鳴が鳴り響いた。

「お母さん! お母さん! うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」

 風の息吹(ブレス)により、建築物が倒壊した。そして、運悪く、少年の母親が下敷きになったのだ。少年は泣き喚く。残念ではあるが、母親は死んだ事だろう。もはや生き返らせる事は困難だ。母親は帰らぬ人となった。

「ふっふっふっふ……絶景よのぉ……」

 白竜に座り、竜王バハムートは天空からその地獄のような光景を見下ろしていた。彼女は笑みを浮かべている。

 彼女は人間ではないのだ。その虐殺ショーを、まるで見世物かのように愉しんでいる。彼女にとって、無残に散っていく、人間の命など慈悲をかけるに値するだけの価値はない。

 鼠(ねずみ)程度の、下等生物と同じような価値しかない。竜王バハムートは本気でそう思っているのである。

 だから、彼女にとってはこの地獄のような惨殺劇もまた、心地の良いただの見世物(ショー)に過ぎないのである。彼女はこの地獄のような光景の中で、唯一笑みを浮かべ、その状況を愉しんでいた。

 ――しかし。彼女にとってはこれからとんだ横槍が入る事になる。当然と言えば、当然ではあるが、彼等とて黙ってやられているわけがなかった。反撃に出てくるのは当然だ……。それにこの王国アルヴァートゥアは女神により天職(力)を授けられた数十人の召喚者達がいるのだ……。
 指を咥えて黙って見ているはずがない。

「そこまでだ!」

 声が響いた。人間の少年の声だ。

「何者だ?」

 竜王バハムートにはさして驚いている様子がない。なぜならばある程度は想定内の出来事だったからである。

「貴様が魔王軍六天王の一角かっ! なぜ、このような非道な行いをっ!」

 勇希は剣を掲げ、言い放つ。

「それを説明する道理などない。だが、私に歯向かってくるならば容赦はしない……。脆弱な人間達よ、私に逆らうという愚行、死を以って償うが良い」

 白竜に乗っている竜王バハムートは凄まじい殺気を放つ。それは地上にいる召喚者達が竦み上がってしまう程のものだ。

 少女のような見た目をしているが、とんでもない化け物であるという事を、彼等は瞬時に悟った。その強さの底が現状では全く見えていない状態だ。

実際にステータスを見たわけではないが、彼女が破格の強さを持つ事が手に取るようにわかった。
 
 それほどの脅威を来斗は肌で感じ取っていた。

「降りろ……ヴァイス」
『はい……我が主――竜王バハムート様」

 竜王バハムートの命令に従い、白竜が下降していく。そして、来斗達の前に姿を現すのであった。

 白竜――間違いなく、聖属性の竜――聖竜(ホーリードラゴン)だ。それも来斗が地下迷宮(ダンジョン)『ウロボロス』で倒した聖竜(ホーリードラゴン)よりも、もっと高位の竜だ。
 
 その白竜は地表に降り、竜王バハムートを下ろすと同時に、光を放った。そして、人の形となったのである。流れるような美しい金髪をし、雪のように白い肌をした可憐な少女に。

 バハムートが乗っていた白竜もまた、バハムート自身と同じように竜人(ドラゴニュート)だったようだ。

「私がお前達と遊んでやるのはこやつ――ヴァイスを倒してからにしてもらおうか……ふっふ」

 バハムートはこちらを見下したような、愉悦に満ちた笑みを浮かべてくる。

「へっ! ふざけんじゃねぇ! そんな華奢な女一人で、俺達を止められるかよ!」

 召喚者のうちの一人。戦士の天職を持つ男が、斧(アックス)を持つ男がしゃしゃり出てきた。

「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 食らいやがれええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 男は斧(アックス)を力任せに全力で振り下ろしてきた。

 キィン!

「な、なにぃ! お、俺様の斧を素手で受け止めやがっただとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 しかし、聖竜の竜人(ドラゴニュート)――ヴァイスはその攻撃を軽々と受け止めた。その皮膚は人間とは比べ物にならない程堅い。素手で乱雑に受け止めたが、とてもダメージを負っている気配はない……。

「邪魔です……蛆虫(うじむし)が!」

 ヴァイスは乱暴に、男を投げつけた。

「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 けたたましい衝撃音が放たれる。ヴァイスに無謀にも特攻していった男は、近くの民家に激突した。幸いな事に、既に避難が完了しているので無人ではあったようだ。

「小野寺君!」

 可憐は先ほどの男――小野寺の救護に向かう。

「し、しっかりして! 小野寺君!」

 何とか、瀕死で済んでいたようだ。この状態であったのならば、蘇生魔法(リザレクション)の必要性はなく、回復術士(ヒーラー)である可憐の回復魔法で何とか対応できるであろう。

「うっ……ううっああっ……ありがとう、北条。気、気を付けろ! 皆! 可愛い見た目をしてるけど、半端な相手じゃねぇぞ!」

 そう、先陣を切った小野寺は皆に喚起する。

「馬鹿ね! そんな事、皆わかってるわよ! それなのに勝手に一人で突っ込んだ!」

 一人の女子が辛辣な言葉を彼に送った。勇敢と無謀は紙一重であるが、彼の行いは後者であると言えた。

「どうした? 威勢が良いだけで随分と手応えがないではないか……ふふふっ」

 竜王バハムートは余裕だった。具現家系のスキルで椅子とテーブル、それからハーブティーを作り出し、優雅にお茶をしていた。とても戦闘中の光景とは思えなかった。

「くそっ!」

「舐めやがって!」

「皆! 気を引き締めていくぞっ!」

 勇希は聖剣デュランダルを掲げ、皆を鼓舞する。とはいえ、無策で行くわけにはいかない。そうなると、先ほどの二の舞だ。

「前衛職に就いている者達が前線に出て、後衛から魔法職が魔法で後方支援をするんだ!」
 
 勇希はそう指示をした。戦闘における、ベーシックな戦略である。

「いくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「やってやるぜええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 複数人の前衛職の男達がヴァイスに襲い掛かかる。しかし、複数人がかりでも結果は同じであった。

「聖なる波動(ホーリーオーラ)」

 ヴァイスは聖なる波動を放つ。強力な聖なる波動が、波のようにして、襲ってきた男達を押し返す。

「「「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」」

 ドガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 と、再度男達は建築物に叩きつけられ、致命傷を負った。

「ふっふっふ……どうやら私の出番は必要なさそうだな……」

 優雅にティーカップを口に運びつつ、バハムートは告げる。

「くっ!」

 勇希は苦悶の表情を浮かべた。

 闘いは続く……。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

処理中です...