世界最強の無名剣士【ノービス】。クラス転移で役立たずはいらないと捨てられたが、異世界召喚二週目の俺は効率プレイで成り上がる!

つくも

文字の大きさ
上 下
43 / 53

エリクサーで死者蘇生をする

しおりを挟む
「ライトさんっ! ライトさんっ!」

「うっ……ううっ……」

 ティアは来斗を揺り動かす。ダメだった……完全に心臓が停止している。まともに反応がない。時間を置けば間違いなく、来斗は完全に死ぬ……。今の状態すら、既に死んでいるようなものであった。

 この状態になってしまえば、ティアの使える回復魔法では手遅れであった。来斗のHPは一瞬にして0になってしまったのだ。

「そんな……一体、どうすれば」

 ティアは慌てふためいていた。そんな時、ティアの脳内に妙案が閃く。

「そうだ……霊薬エリクサーなら」

 霊薬エリクサー。こういう時の為に取っておいたようなものだ。死者すら復活させると言われる霊薬エリクサーであれば、死んだようにしか見えない来斗でも復活させる事ができるはずだ。

 来斗のアイテムポーチからティアは霊薬エリクサーを取り出す。

「来斗さん……これを飲んで」

「…………」

 ダメだ。来斗の心臓は完全に停止している、目から光が失われている。自分で飲めるわけがない。だったらどうする? ……ティアにある考えが浮かんだ。その行為は酷く恥ずかしく、躊躇われる行為ではあったが、今は非常時であり緊急事態だ。

 今はそんな事は言っていられない。ティアは覚悟を決めた。そして、霊薬エリクサーを自らの口に含む。

 そして、躊躇わず来斗に口移しした。唇と唇が確かに重なり合う。キスと言われるような行為になるが、そんなロマンティックな状況ではない。これは人工呼吸のようなものだ。そこに性的(セクシャル)な意味などない。

 ごくごく……。そして、ティアは来斗に口移しで霊薬エリクサーを飲ませる事に成功した。

「んっ!」

 霊薬エリクサーの効き目は抜群であった。飲ませた瞬間、来斗の魂は現世に戻ってきて、復活を遂げたのである。だが、意識を取り戻した来斗は驚いてしまった。目を閉じたティアの顔がすぐそこ、間近にあったのだ。

 それから唇に感じる確かな温かみ。来斗はティアと唇を重ねている事に気づいた。

(な……なんでこんな事になってるんだ!?)

 来斗は一瞬混乱したが、すぐに理解する。自分がウロボロスの即死魔法(デス)でHPが0になり、間違いなく死んだという事。そして一人生き残ったティアは霊薬エリクサーを口移しで飲ませてくれたんだ。

 そう理解し、ある程度の平静を取り戻す。だが、唇と唇が合わさっていたのは間違いない。俗にいう、接吻、キスをしていたのだ。そう捉えても何の間違いはない。救命行為であり、それ以外に俗物的な意味がなかったとしても。

 例えば好きだとか恋だとか、そういう思春期の青少年、少女が好きそうなワードと無関係な行為だったとしても。

 全く意識しないというのは困難な事であった。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 唇が離されると、来斗は荒く息をした。

「……ありがとう、ティア。助けてくれて」

 来斗はティアに礼を言う。

「いえ……ライトさんは私に自由を与えてくれました。だからライトさんを命を救うのは私にとっては当然の事です」

 ティアはそう言う。

「にしても……びっくりしたよ。いきなりティアの顔が大きく目に飛び込んできて、その……あんな事をしてくるなんて……」

 来斗は顔を赤くして言葉を濁す。

 ティアも顔を赤くして、顔を反らした。

「思い出させないでください! わ、私だって恥ずかしかったんですから。そ、それにあれは非常時の事でしたし。と、とにかく、わ、忘れてください!」

「そ、そうだな、その通りだ」

 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ウロボロスが自己の存在を誇示するかのように奇声をあげた。人の目の前で勝手にいちゃつんてんじゃねぇよ、そう、ウロボロスは言いたいようだった。

「とりあえず……その話は置いておこう。もうすぐだ。奴のHPは既に三割を切っている。だから必殺技のオール即死(デス)の魔法を放ってきたんだ」

 来斗はウロボロスを見上げる。HPを大分削られ、弱っている事が明白であった。頼みの綱である自動蘇生のスキルも来斗の装飾品(アクセサリ)による『解除魔法(ディスペル)』で解除されている。
 
 このままダメージを加えていけば、ウロボロスの最後の時は確実にやってくる。終わりの時はすぐそこまで近づいてきているのだ。

「もうすぐだ……もうすぐ、奴を倒せる。俺達がウロボロスを倒せるんだ。奴に勝てばこの地下迷宮(ダンジョン)から地上に帰れる」

 膨大なHPを手に入れ、そしてクリア報酬としてレアな装備を手に入れて、地上に帰る事ができる。力を得る事ができる。そうなれば一週目の時に訪れた、最悪の結末を回避できる。

 来斗の心に微かな希望の光が差し込んで来た。

「だけど、その為にはともかく、この『ウロボロス』を倒さないとな……」

 来斗は剣を構える。ティアも立ち上がり、構えた。そして二人はウロボロスを見据えた。

 そして決着の時がやってくるのだ。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き
ファンタジー
新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。 彼は修学旅行の時、突然クラスメイト全員と異世界へ召喚される。 転移した先で王に開口一番、魔軍と戦い人類を救ってくれとお願いされる。 召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。 言葉通り、クラスメイトは、獲得経験値×10万や魔力無限、レベル100から、無限製造スキルなど チートが山盛りだった。 対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」 それ以外はステータス補正も無い最弱状態。 クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。 酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。 「ことばわかる?」 言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。 「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」 そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。 それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。 これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。 ------------------------------ 第12回ファンタジー小説大賞に応募しております! よろしければ投票ボタンを押していただけると嬉しいです! →結果は8位! 最終選考まで進めました!  皆さま応援ありがとうございます!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在三巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

追放された【助言士】のギルド経営 不遇素質持ちに助言したら、化物だらけの最強ギルドになってました

柊彼方
ファンタジー
*『第14回ファンタジー小説大賞【大賞】受賞作』 1.2巻発売中! コミカライズ好評連載中! 「お前はもう用済みだ。ギルドから去れ」 不遇スキルである『鑑定』を持つ【助言士】ロイドは優秀な人材を見つけるために、最強ギルドと呼ばれる『太陽の化身』でボロ雑巾のように扱われていた。 そして、一通り勧誘を終えるとギルドマスターであるカイロスから用済みだと、追放されてしまう。 唐突な追放に打ちひしがれてしまうロイドだったが、エリスと名乗る女性に自分たちでギルドを作らないかと提案された。 エリスはなんと昔、ロイドが一言だけ助言をした底辺鍛冶師だったのだ。 彼女はロイドのアドバイスを三年間ひたすら守り続け、初級魔法を上級魔法並みに鍛え上げていた。 更にはあり得るはずもない無詠唱、魔法改変等を身につけていたのだ。 そんな事実に驚愕したロイドは、エリスとギルドを作ることを決意する。 そして、それなら不遇な素質持ちを集めよう。自分たちと同じ環境である人を誘おうというルールを設けた。 ロイドは不遇な素質を持つ人たちをギルドに加入させ、ただ一つのことを極めさせ始めた。一般レベルで戦えるようにするために。 だが、これが逆に最強への近道になってしまう。 そして、ロイドが抜けた太陽の化身では徐々に腐敗が始まり、衰退し始めていた。 新たな人材、策略。どんな手を使ってでもロイドたちを蹴落とそうとするが、すべて空回り。 これは、ロイドによって不遇な素質を極めた仲間たちが、ロイドとともに最強のギルドを作っていくような、そんな物語。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...