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亡国の吸血鬼(姫)が仲間になる
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ひたひたひた。殺戮機械人形(キラーマシンドール)が活動停止した事で、この隠し部屋は随分と静かになった。だから、彼女の僅かな歩く音すらも聞こえてきた。
そして、それが来斗にとってはとてつもなく恐ろしい事であった。
「来るな……」
「!?」
名も知らぬ彼女は、首を傾げる。きょとんとした表情になった。
「俺に何をするつもりなんだっ! お前は吸血鬼なんだろうっ! っていう事は生き血の欲しさのあまりに、俺に襲いかかってくるはずだ!」
来斗は恐怖した。殺戮機械人形(キラーマシンドール)の脅威は去ったが、それを陵駕する。恐ろしい吸血鬼の少女を目覚めさせてしまったのだ。
殺戮機械人形(キラーマシンドール)を一瞬にして屠った吸血鬼である彼女。名も知らぬ彼女は間違いなく怪物(モンスター)だ。
襲われたら間違いなく、勝ち目はない。死ぬ……あるいは吸血鬼に血を吸われ、都合の良い傀儡。使い魔や眷属と言った自由意志のない、都合の良い存在になってしまう事であろう。
「俺をどうするつもりだ!? や、やめろっ! 近づいてくるなっ! こ、殺さないでくれっ! 二回も死にたくないんだっ! それに俺には使命があるんだっ! 使命を果たさずに、死ねないんだっ!」
来斗は名も知らぬ少女に命乞いをした。
「くすくすくすくすっ……」
帰ってきたのは笑いだった。血の通っていない、冷徹な冷笑ではなく、無垢な少女のような、微笑。名も知らぬ少女はそんな笑みを浮かべたのである。
「そんな事、するわけないじゃない。だって、あなたは私を長い封印から解き放ってくれた、大事な人なんだもの」
「……お前は俺を裏切らないのか? あの時の言葉に、嘘なんてなかったのか?」
クラスメイト達には前回も、今回も裏切られ。一人で見捨てられた。役立たずだと判断すると、いとも簡単に来斗は捨てられてしまったのである。
「絶対に裏切らない……。その代わり、教えて。あなたが何者なのか……そして、あなたが何を望むのか? 私はあなたにお礼をしたいの。だから、あなたが望む事を何でも叶えてあげたいの……」
少女は語る。来斗は悩んだ。どうするべきか。彼女に本当の事を語るべきか。彼女が敵だったとするならば、来斗に危害を加えてこないのは不自然だ。彼女の事を全面的に信じるべきだとは思わないが、ある程度の信用を置いてもいいのではないか。
来斗は彼女に対して、そう考えるようになり、そして彼女に洗いざらいを打ち明けた。
来斗が異世界から、この世界『ユグドラシル』に召喚された、英雄と呼ばれる召喚者、四十名のうち一名であった事。その後、そのクラスは召喚者達な状況下に追い込まれ、全滅してしまうという事。
召喚者達はこの世界にとっての希望であり、彼等が全滅するという事はこの世界『ユグドラシル』自体の終局を表す。
この世界でのやり直しを望んだ来斗は、二週目の人生をこの世界で許された。
――というのが概ねな経緯だ。
「……それで、この世界を救いたいのね……あなたは」
「そんな大層なもんじゃないけど……そんな俺一人の力でこの世界を救えるとは到底思えない。そんな事は、烏滸がましい事だ。とりあえずは、前回と同じような結末になるのは防ぎたい。この世界を救うには皆の力が必要なんだ。だから、クラスの皆が全滅するような未来を変えたい……それが俺の望みだ」
「だったら、私があなたの望みを叶えてあげる。私に自由を与えてくれたあなたに、恩を返したいの」
彼女はそう言った。信用していいものなのかわからない……。だが、彼女にはそれだけの力があった。亡国の吸血鬼(姫)の力は本当だ。彼女の力が必要になってくる。
「わかった……力になってくれ」
来斗は彼女の手を取った。
「うん……よろしくね。あなたの名前はなんて言うの?」
「来斗だ……」
「へー、『ライト』って言うんだ。素敵な名前だね」
彼女はそう笑みを浮かべた。
「君の名前は……なんて言うんだ?」
名前を知らなければ呼びづらい。これから、一緒に行動をする事になるのだ。名前を知らないと、何かと都合が悪い。
「私の名前は……ティア。ティアレストって名前だけど、長いからティアでいいよ……ライト」
「そうか……ティアか。良い名前だな」
こうして、一人で行動していた来斗に、亡国の吸血鬼(姫)——ティアという、仲間ができたのであった。
そして、それが来斗にとってはとてつもなく恐ろしい事であった。
「来るな……」
「!?」
名も知らぬ彼女は、首を傾げる。きょとんとした表情になった。
「俺に何をするつもりなんだっ! お前は吸血鬼なんだろうっ! っていう事は生き血の欲しさのあまりに、俺に襲いかかってくるはずだ!」
来斗は恐怖した。殺戮機械人形(キラーマシンドール)の脅威は去ったが、それを陵駕する。恐ろしい吸血鬼の少女を目覚めさせてしまったのだ。
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襲われたら間違いなく、勝ち目はない。死ぬ……あるいは吸血鬼に血を吸われ、都合の良い傀儡。使い魔や眷属と言った自由意志のない、都合の良い存在になってしまう事であろう。
「俺をどうするつもりだ!? や、やめろっ! 近づいてくるなっ! こ、殺さないでくれっ! 二回も死にたくないんだっ! それに俺には使命があるんだっ! 使命を果たさずに、死ねないんだっ!」
来斗は名も知らぬ少女に命乞いをした。
「くすくすくすくすっ……」
帰ってきたのは笑いだった。血の通っていない、冷徹な冷笑ではなく、無垢な少女のような、微笑。名も知らぬ少女はそんな笑みを浮かべたのである。
「そんな事、するわけないじゃない。だって、あなたは私を長い封印から解き放ってくれた、大事な人なんだもの」
「……お前は俺を裏切らないのか? あの時の言葉に、嘘なんてなかったのか?」
クラスメイト達には前回も、今回も裏切られ。一人で見捨てられた。役立たずだと判断すると、いとも簡単に来斗は捨てられてしまったのである。
「絶対に裏切らない……。その代わり、教えて。あなたが何者なのか……そして、あなたが何を望むのか? 私はあなたにお礼をしたいの。だから、あなたが望む事を何でも叶えてあげたいの……」
少女は語る。来斗は悩んだ。どうするべきか。彼女に本当の事を語るべきか。彼女が敵だったとするならば、来斗に危害を加えてこないのは不自然だ。彼女の事を全面的に信じるべきだとは思わないが、ある程度の信用を置いてもいいのではないか。
来斗は彼女に対して、そう考えるようになり、そして彼女に洗いざらいを打ち明けた。
来斗が異世界から、この世界『ユグドラシル』に召喚された、英雄と呼ばれる召喚者、四十名のうち一名であった事。その後、そのクラスは召喚者達な状況下に追い込まれ、全滅してしまうという事。
召喚者達はこの世界にとっての希望であり、彼等が全滅するという事はこの世界『ユグドラシル』自体の終局を表す。
この世界でのやり直しを望んだ来斗は、二週目の人生をこの世界で許された。
――というのが概ねな経緯だ。
「……それで、この世界を救いたいのね……あなたは」
「そんな大層なもんじゃないけど……そんな俺一人の力でこの世界を救えるとは到底思えない。そんな事は、烏滸がましい事だ。とりあえずは、前回と同じような結末になるのは防ぎたい。この世界を救うには皆の力が必要なんだ。だから、クラスの皆が全滅するような未来を変えたい……それが俺の望みだ」
「だったら、私があなたの望みを叶えてあげる。私に自由を与えてくれたあなたに、恩を返したいの」
彼女はそう言った。信用していいものなのかわからない……。だが、彼女にはそれだけの力があった。亡国の吸血鬼(姫)の力は本当だ。彼女の力が必要になってくる。
「わかった……力になってくれ」
来斗は彼女の手を取った。
「うん……よろしくね。あなたの名前はなんて言うの?」
「来斗だ……」
「へー、『ライト』って言うんだ。素敵な名前だね」
彼女はそう笑みを浮かべた。
「君の名前は……なんて言うんだ?」
名前を知らなければ呼びづらい。これから、一緒に行動をする事になるのだ。名前を知らないと、何かと都合が悪い。
「私の名前は……ティア。ティアレストって名前だけど、長いからティアでいいよ……ライト」
「そうか……ティアか。良い名前だな」
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