世界最強の無名剣士【ノービス】。クラス転移で役立たずはいらないと捨てられたが、異世界召喚二週目の俺は効率プレイで成り上がる!

つくも

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初めての戦闘

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「ううっ…………」
「い、いたた……」

 突如、クラスメイト達が放り出された空間は草原だった。

「皆、大丈夫か!?」

 勇希が皆を心配して声をかける。

「……なんとかな」

「三雲君……大丈夫!?」

 可憐が心配して声をかけてきた。

「俺の事は心配するな……それより気をつけろ」

「え!?」

「来るぞ」

 来斗はそう告げた。

「来るって、何が!?」

「わっ! なんだっ! こいつら!」

「「「グウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」」」

 草原から無数の声がうなり声が聞こえてきた。狼型のモンスター『ウォーウルフ』である。
「う、うわっ! 狼だ!」

 いくらチート級の天職に就いているとはいえ、いきなり異世界に連れてこられたのだ。そして、突然の実戦である。慌てふためいても不思議ではない。
 無数のウォーウルフ達がクラスメイト達に襲いかかってくる。

「や、やだっ! し、死にたくないっ! 死にたくないよっ!」

 気の弱い女子生徒に至ってはその場で震え上がり、一歩たりとも動けなかった。

「三雲君……」

 可憐の来斗に対する疑念はますます深まった。まるで来斗は起こる事をわかっていたかのようだった。そして、外れ天職である『ノービス』に選ばれるという不遇な目に合いつつも、平然と振る舞っている彼に対して違和感を覚えるなと言っても無理な話であった。

「落ち着け!」

 ここでも頼りになるのは勇希であった。勇希は敵モンスターのステータスを表示させる。ステータスを見れるのは自分達だけではない。一部のボスモンスターはステータスを読み取らせないようにジャミングしている事もあるが、大抵のモンスターのステータスを彼等は読み取る事ができるのだ。

============================

ウォーウルフ 1レベル:1

狼型モンスター

攻撃力:10

HP:10

防御力:10

素早さ:10

魔法力:10

魔法耐性:10

スキル:特になし

============================

「はああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 勇希は勇者の剣でウォーウルフを斬り裂いた。

 キャウン! という犬のような情けない悲鳴を上げ、一匹のウォーウルフが果てた。

「こいつ等のステータスを見てくれ! 俺達よりよっぽど低いんだ! 落ち着いて闘えば勝てない相手じゃない!」

 勇希の率先した行動により、他のクラスメイト達も落ち着きを取り戻してきた。

「……そうか。そうだな」
「俺達は強い天職に就いてるんだよな」
「ああ……そうだ。だからこいつ等なんて敵じゃないんだ」

 勇希達、戦闘職を天職とした連中はウォーウルフと戦闘を始めた。剣で、斧で、魔法で。

 ウォーウルフ達は彼等の攻撃により、難なく果てていった。現実で子犬と闘うよりも、余程簡単な作業だった事だろう。

「へっ……なんだ。結構、呆気なかったな。拍子抜けしちまったぜ」
「っていうか……俺達って強すぎねぇ? なんかさっきので多少レベルもあがったし」
「思ったよりも楽勝だな……こんなに上手く行くとは」

 クラスメイト達は緩み始めていた。何の労力もかけずに、女神から授けられた天職という力に酔いしれていた。
 だが、一部の人間はそうではなかった。

「気を抜かない方がいい……まだ俺達はこの世界の事を何も知らないんだ。きっと、もっと強大な敵がいるに違いない」

 勇希はそう、周囲を諫めた。最も恵まれた天職に就いた彼はそれでも、周囲のように慢心してはいなかった。

「そうだな……その通りだ」
「まだ俺達の冒険は始まったばかりだものな……」

 勇希の言葉により、一応は彼等は気を引き締めた。だが、来斗は知っていた。人がそれほど強くないという事を。強すぎる力を労する事無く得た人間が緩む事を、彼は知っていたのである。

「三雲君……知ってたの?」

 可憐が聞いてくる。

「何がだ?」
「モンスターが出る事よ……何だか、知っている風だった」
「たまたまだよ……気のせいだ」
「嘘……気のせいなんかじゃ」

 来斗はまだ話せなかった。自身がこの世界『ユグドラシル』での記憶がある事を。そしてその後、このクラスが分裂し、破滅的な結末を迎えるという事。
 今話せば、きっとクラスは混乱する。いや、そもそも話したところで信じようともしないだろう。都合の悪い未来など、誰も信じたくないものだ。ましてやここにいる誰一人として生き残れないという、過酷な未来など。

「へっ……なんだよてめぇは。見てただけじゃねぇかよ。男のくせによ」

 一人の少年が来斗にくってたかった。首根っこを持ち上げ、今にも殴りかかってきそうだ。

「よせよ……可哀想だろ。弱いもんで、足が震えて動けなかったんだよ」
「ちっ……弱いって事を言い訳にするなよ。このお荷物野郎が」

 舌打ちをされ、来斗は解放される。

「なによ……たまたま強い天職を貰ったってだけなのに。あんなに偉そうに。何も三雲君の事を目の敵にしなくてもいいじゃない」

 可憐はそう漏らした。

 これから来斗達は王国『アルヴァートゥア』に英雄として招かれる事になる。そして、そこから地下迷宮(ダンジョン)『ウロボロス』の攻略を任されるのだ。

 そしてそこは強力なモンスターが出現する、過酷な地下迷宮(ダンジョン)であった。

 しかし、ここで来斗は前回の挑戦とは大きく異なる行動を歩む事になる。言わばここが、彼にとっての分岐点であった。


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