義妹に『醜悪な野獣』と言われる『辺境伯様』への嫁入りを押し付けられました。真実の姿を知ってから代わってくれと言われても、もう遅いです!

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幸せなはずなのになぜか私は不安になるのです

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それは食事中の事でした。私は食事している時、なぜか手が止まったのです。

「どうかしたのかい? シャーロット」

 優しいウィリアム様が私を心配して声をかけてきてくれます。

「私は今幸せです。ウィリアム様」

「僕も幸せだよ。シャーロット」

「ですが同時に思うのです。幸せとは移ろいやすいもの。永遠に変わらないものなどないのです」

 私は自分の胸の内を打ち明けるのです。

「何かを得るという事は何かを失う可能性があるのです。得たものを失う事が私は怖いのです」

「幸せはいつまでも続かないと君は言いたいのかい?」

「続かない可能性はありえます。人の気持ちも状態も移ろいやすいものなのです」

「それはその通りだ……永遠に同じ状態なんて続くはずだ。だけどそういった苦難や困難に立ち向かっていくために僕たちは結婚したんじゃないのかい? 二人ならどんな苦難でも乗り越えていけると」

「それはその通りです。ウィリアム様」

「だったら何とかなると前向きになるしかないんじゃないか。私達ならきっと乗り越えていけるよ」
 
「漠然とした不安でしたら確かにウィリアム様のおっしゃる通りです。心の不安で解決されます。ですが私が今抱えている不安は具体的なものなのです」

「魔女の存在か?」

「はい。その通りです。ウィリアム様に呪いの魔法をかけた魔女。魔女はウィリアム様の心を手に入れる為に呪いをかけたのです。その魔女はいずれ呪が解けた事に気付くでありましょう。それで魔女が諦めるとは思えないのです。きっと何かよからぬ事をしでかしてくるに違いありません」

「君の不安はもっともだ。何かしなければならない。恐らく前と同じ呪いはかけられないだろう。同じ事をしても意味はないだろうから。だが、別の可能性はある。僕たちの仲を引き裂くために、魔女はありとあらゆる手を尽くしてくるかもしれない」

 ウィリアム様は語ります。

「何か方法を考えておかなければならない。あの魔女に対抗できる方法を」

「私にできる事があったらなんなりとおっしゃってください。とはいえ、そんな強大な力を持った魔女に私にできる事があるのかは少々不安ではありますが」

「ありがとう。シャーロット」

 具体的な不安には具体的な対策があれば、少しは気分が和らぐかもしれません。

私は魔女に対する不安を感じたまま、眠れぬ夜を過ごします。

そしてやはり災いは突然として訪れてくるものなのです。私とウィリアム様。二人の関係には苦難が押し寄せてくるのでした。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/695858559/595482008義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される新作短編よろしくお願いします!
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