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義妹はウィリアム様に相手にもされませんでした
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それは私がウィリアム様と屋敷で生活していた時の事でした。私の前に突如、思いもよらない来訪者が現れます。
それは義母ローズと義妹ガーベラの姿です。二度と会う事はないと思っていた二人が突如として私の目の前に姿を現したのです。
「あら。随分とめかし込みましたわね。あの獣臭い女が」
「そう。その通りよ。生意気ね。全く」
人のお屋敷に勝手に入ってきて、なんという言い草でしょうか。二人はいきなり悪態をついてきます。
「な、何の用でしょうか? 私はもうカーディガン家とは何の関係もないはずです。それに二度と帰ってくるなと言っていたではないですか」
「それはそうなのですが、事情が変わりましたわ」
ガーベラは飄々と言ってきます。なんという図太い精神でしょうか。あまりに図々しくて言葉もありません。
「事情が変わったとは?」
「獣臭いお姉様には、あのような素敵な殿方は似合いませんわよ。代わりなさいな、お姉様」
「代わるって、何をですか?」
「全く。そこまで言わないとわかりませんの? あんな素敵な殿方、あなたには似合いませんのよ。どういうわけかはわかりませんが、ウィリアム様は実は素敵な殿方でしたのね。どんな魔法を使ったのでしょうか? まあいいですわ」
ガーベラは一方的に言葉を並べてきます。昔から私の話なんて一度たりとも聞いた事がないのです。
「いいから代わりなさいな。獣臭いお姉さま――シャーロット。あなたにはあんな素敵な殿方勿体ないですのよ! 私こそがあのウィリアム様の妻に相応しいのですわ」
「い、嫌です! ウィリアム様は私の旦那様です! ガーベラ様になんて決して渡しません」
「きー! なんですって!」
ガーベラは怒ります。
「全く! 誰のおかげで今まで大きくなったと思ってるのよ! この恩知らず! 今こそがただ飯を食らってきた恩を返す時じゃないの! あのお方への嫁入りをガーベラに譲りなさい!」
義母ローズまで私に対して物凄い剣幕で捲し立ててくるのです。
「いいから代わりなさい! 代わらないと!」
あまつさえ、ガーベラは私に暴行をしてきようとしました。カーディガン家ではよくあった光景です。ですがここはもうカーディガン家ではないのです。
――と、その時でした。
「何をやっているのですか?」
ウィリアム様が姿を現しました。
「ま、まあ! 近くで見るとますます良い男ですわ!」
ウィリアム様を見た時、ガーベラが目を輝かせるのです。
「ま、まあ! 素敵ねっ! ガーベラにはぴったりのお方よ! それに私の息子になるに相応しいお方だわ!」
義母ローズもまた、目を輝かせます。流石は親子です。
「何か用ですか? 我が妻シャーロットに」
「え、ええ。実は私達、義理の家族だったんです。私が義理の妹で、こちらが義母になります。初めまして、私はガーベラ・カーディガンと申します。名家であるカーディガン家の令嬢なのですよ」
「は、はぁ……そうですか」
「それで知っておりますか? そこのシャーロットという獣臭い女。両親を幼い頃に亡くし、仕方なくカーディガン家に引き取られてきた、ただの孤児のような女ですのよ。令嬢でもなんでもない、ただの平民のような娘なのです」
ガーベラは好き放題に言葉を並べてきます。
「こんな獣臭い女なんかより、本物の令嬢であり、気品があり気高い私の方がウィリアム様に相応しいですわよ! だからウィリアム様! そんな獣臭い女とは別れて、私と結婚してはいかがかしら?」
「母としてもそう思いますわよ! さあ! そんな女と別れて是非うちの娘と結婚し! うちの娘を妻として娶りなさいな! さあ! さあ!」
「いきなり現れて何を言っているのですか? あなた達は」
ウィリアム様はあきれ果てていました。
「しかも私が一生愛する事を誓った妻を侮辱しました。私の忍耐力を侮るのもいいかげんにしてください。私でも我慢の限界があるのですよ。妻――シャーロットを侮辱するのは絶対に許しません」
強い口調でウィリアム様は言うのです。
「な、なんですと! で、でしたら私を妻として娶る事はできないとおっしゃるのですか!」
「当然です。いきなり何を言っているのですか? シャーロットは私が醜い野獣の恰好をしていた時からずっと傍にいてくれた、そして私を心から愛してくれた素晴らしい女性です。彼女以外の女性を妻とする事は考えられません」
「むきーーーーーー! なんですって! 私よりそんな獣臭い女を取るというのですの!」
ガーベラはハンカチを噛みちぎろうとしていました。よほど悔しかったのでしょう。
「言葉を改めなさい。誰が獣臭い女ですか。私が生涯で愛するのはこのお方――シャーロットただ一人です」
「ウィリアム様」
「シャーロット」
私達は見つめ合います。もう私達は義妹ガーベラの事も義母ローズの事も一切気になりません。私達は私達だけの世界に没入していったのです。
「むきーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
こうして屋敷にガーベラの悔しそうな声が響くのです。
私達はもう永遠の愛を誓い合った中なのです。
そしてウィリアム様の真実の姿を知ってから代わってくれと言われても。
もう全ては遅かったのです。
それは義母ローズと義妹ガーベラの姿です。二度と会う事はないと思っていた二人が突如として私の目の前に姿を現したのです。
「あら。随分とめかし込みましたわね。あの獣臭い女が」
「そう。その通りよ。生意気ね。全く」
人のお屋敷に勝手に入ってきて、なんという言い草でしょうか。二人はいきなり悪態をついてきます。
「な、何の用でしょうか? 私はもうカーディガン家とは何の関係もないはずです。それに二度と帰ってくるなと言っていたではないですか」
「それはそうなのですが、事情が変わりましたわ」
ガーベラは飄々と言ってきます。なんという図太い精神でしょうか。あまりに図々しくて言葉もありません。
「事情が変わったとは?」
「獣臭いお姉様には、あのような素敵な殿方は似合いませんわよ。代わりなさいな、お姉様」
「代わるって、何をですか?」
「全く。そこまで言わないとわかりませんの? あんな素敵な殿方、あなたには似合いませんのよ。どういうわけかはわかりませんが、ウィリアム様は実は素敵な殿方でしたのね。どんな魔法を使ったのでしょうか? まあいいですわ」
ガーベラは一方的に言葉を並べてきます。昔から私の話なんて一度たりとも聞いた事がないのです。
「いいから代わりなさいな。獣臭いお姉さま――シャーロット。あなたにはあんな素敵な殿方勿体ないですのよ! 私こそがあのウィリアム様の妻に相応しいのですわ」
「い、嫌です! ウィリアム様は私の旦那様です! ガーベラ様になんて決して渡しません」
「きー! なんですって!」
ガーベラは怒ります。
「全く! 誰のおかげで今まで大きくなったと思ってるのよ! この恩知らず! 今こそがただ飯を食らってきた恩を返す時じゃないの! あのお方への嫁入りをガーベラに譲りなさい!」
義母ローズまで私に対して物凄い剣幕で捲し立ててくるのです。
「いいから代わりなさい! 代わらないと!」
あまつさえ、ガーベラは私に暴行をしてきようとしました。カーディガン家ではよくあった光景です。ですがここはもうカーディガン家ではないのです。
――と、その時でした。
「何をやっているのですか?」
ウィリアム様が姿を現しました。
「ま、まあ! 近くで見るとますます良い男ですわ!」
ウィリアム様を見た時、ガーベラが目を輝かせるのです。
「ま、まあ! 素敵ねっ! ガーベラにはぴったりのお方よ! それに私の息子になるに相応しいお方だわ!」
義母ローズもまた、目を輝かせます。流石は親子です。
「何か用ですか? 我が妻シャーロットに」
「え、ええ。実は私達、義理の家族だったんです。私が義理の妹で、こちらが義母になります。初めまして、私はガーベラ・カーディガンと申します。名家であるカーディガン家の令嬢なのですよ」
「は、はぁ……そうですか」
「それで知っておりますか? そこのシャーロットという獣臭い女。両親を幼い頃に亡くし、仕方なくカーディガン家に引き取られてきた、ただの孤児のような女ですのよ。令嬢でもなんでもない、ただの平民のような娘なのです」
ガーベラは好き放題に言葉を並べてきます。
「こんな獣臭い女なんかより、本物の令嬢であり、気品があり気高い私の方がウィリアム様に相応しいですわよ! だからウィリアム様! そんな獣臭い女とは別れて、私と結婚してはいかがかしら?」
「母としてもそう思いますわよ! さあ! そんな女と別れて是非うちの娘と結婚し! うちの娘を妻として娶りなさいな! さあ! さあ!」
「いきなり現れて何を言っているのですか? あなた達は」
ウィリアム様はあきれ果てていました。
「しかも私が一生愛する事を誓った妻を侮辱しました。私の忍耐力を侮るのもいいかげんにしてください。私でも我慢の限界があるのですよ。妻――シャーロットを侮辱するのは絶対に許しません」
強い口調でウィリアム様は言うのです。
「な、なんですと! で、でしたら私を妻として娶る事はできないとおっしゃるのですか!」
「当然です。いきなり何を言っているのですか? シャーロットは私が醜い野獣の恰好をしていた時からずっと傍にいてくれた、そして私を心から愛してくれた素晴らしい女性です。彼女以外の女性を妻とする事は考えられません」
「むきーーーーーー! なんですって! 私よりそんな獣臭い女を取るというのですの!」
ガーベラはハンカチを噛みちぎろうとしていました。よほど悔しかったのでしょう。
「言葉を改めなさい。誰が獣臭い女ですか。私が生涯で愛するのはこのお方――シャーロットただ一人です」
「ウィリアム様」
「シャーロット」
私達は見つめ合います。もう私達は義妹ガーベラの事も義母ローズの事も一切気になりません。私達は私達だけの世界に没入していったのです。
「むきーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
こうして屋敷にガーベラの悔しそうな声が響くのです。
私達はもう永遠の愛を誓い合った中なのです。
そしてウィリアム様の真実の姿を知ってから代わってくれと言われても。
もう全ては遅かったのです。
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