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『辺境伯様』の心の美しさに惹かれる
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私はこうして『醜悪な野獣』と噂される『辺境伯様』ことウィリアム様と一つ屋根の下での生活が始まりました。
最初、私はウィリアム様の野獣のような見た目から、一緒に生活をしていれば当然のように襲い掛かってくる事を恐れていたのですが、そのような事は一切ないのです。
ただただ平穏な生活が過ぎて行きます。見た目さえ慣れてしまえばお屋敷での生活も快適そのものでした。
使用人たちも野獣のような見た目をしてはいましたが、それでも私に何か危害を加えてくる事はありません。ただただ賓客のように丁重に私をもてなしてくれたのです。
私は紅茶を飲んで日がなぼーっとしていればいいのです。最初は疲れていたのでそれでいいのですが、しばらく立つとエネルギーが余ってきて退屈になってきます。
何もやる事がないと若いのにボケてしまいそうになります。
「ウィリアム様」
「なんですか? シャーロット」
「何かやる事はありませんか?」
「やる事ですか? 大抵の事は使用人がやってくれますよ。シャーロットがやらなければならない事などありませんよ」
「ですがそれでは一日の時間を終えるのも退屈です。本を読むのも一日中やるとなると飽きてしまいます。私は仕事が欲しいのです」
暇な時間を私は本を読んで過ごしました。最初は使用人が淹れてくれた紅茶を飲み本を読むだけの優雅な生活に満足していたのですが。
それは義母と義妹に虐げられて心身共に疲れ果てていたからです。回復してきたらそれだけでは一日を過ごすのが辛くなってきます。
やる事がないというのも人間には苦痛なものでした。
「そうですか。でしたら庭の掃き掃除でもしてはくれませんか? 御覧の通り、このお屋敷の庭は広く、木々が何本も経っています。落ち葉が大量に落ちているのです。使用人だけではなかなか庭が綺麗になりませぬ」
ウィリアム様はそう言ってきます。
「掃き掃除ですね。わかりました。がんばります」
「あまり頑張らなくて結構です。疲れられて倒れられても困りますので」
やはりウィリアム様は見た目は怖いですが、心のお優しい方です。義母や義妹は私が過労で倒れる事を楽しんでいました。
それは義母や義妹が異常だっただけだと思いますが。よく今まで生きてきたものです。自分で自分に感心してしまいます。こうして私は庭の掃き掃除をする事にしたのです。
◇
私はウィリアム様の見ているすぐ傍で掃き掃除をしていました。ウィリアム様はテラスに腰かけ、その様子を見守っています。
やはり仕事があるといいものです。仕事があると精神が充実します。多少の労働がないとはやりメリハリがなくなってしまうものです。
その時の事でした。天気が悪くなってきたのです。突如黒い雨雲が空を覆い始めました。そしてぽつぽつと雨が降ってくるのです。
さらにはゴロゴロと雷の音がします。私はその時、ちょうど木の近くにいました。
ピカピカと光ったと思うと、木に落雷が落ちてくるのです。
「え?」
大木に落雷が当たり、枝木が折れました。そして巨大な枝が私に向かって落ちてきたのです。枝と言ってもそれは木の幹くらいの太さでした。頭上に落ちてくれば決して無事では済むものではありませんでした。
「危ない! シャーロット!」
ウィリアム様が私に走り寄ってきました。そして、その巨大な身体で私を庇ったのです。
ウィリアム様が盾となってくれたおかげで私は無事でした。ですが。
「無事ですか? シャーロット」
「ありがとうございます。ウィリアム様のおかげで無事でした。ですが、ウィリアム様は。私を庇った事でお怪我をされたのではないですか?」
「私は御覧の通り、丈夫な身体をしていてね。あの程度ではビクともしないよ。それよりシャーロットが無事でよかったよ」
ウィリアム様は私から離れます。その時なぜでしょうか。私はもっとこう、抱きしめて欲しかったような、そんな寂しさを感じたのです。
なんでしょうか。この感情は。やるせないような気持ちを抱きます。
それにこうまで人に優しくされたのは生まれて初めてだったのです。
その時私は野獣のような見た目をしているウィリアム様のその心の美しさを見出し。そして惹かれていっている自分に気付いたのです。
最初、私はウィリアム様の野獣のような見た目から、一緒に生活をしていれば当然のように襲い掛かってくる事を恐れていたのですが、そのような事は一切ないのです。
ただただ平穏な生活が過ぎて行きます。見た目さえ慣れてしまえばお屋敷での生活も快適そのものでした。
使用人たちも野獣のような見た目をしてはいましたが、それでも私に何か危害を加えてくる事はありません。ただただ賓客のように丁重に私をもてなしてくれたのです。
私は紅茶を飲んで日がなぼーっとしていればいいのです。最初は疲れていたのでそれでいいのですが、しばらく立つとエネルギーが余ってきて退屈になってきます。
何もやる事がないと若いのにボケてしまいそうになります。
「ウィリアム様」
「なんですか? シャーロット」
「何かやる事はありませんか?」
「やる事ですか? 大抵の事は使用人がやってくれますよ。シャーロットがやらなければならない事などありませんよ」
「ですがそれでは一日の時間を終えるのも退屈です。本を読むのも一日中やるとなると飽きてしまいます。私は仕事が欲しいのです」
暇な時間を私は本を読んで過ごしました。最初は使用人が淹れてくれた紅茶を飲み本を読むだけの優雅な生活に満足していたのですが。
それは義母と義妹に虐げられて心身共に疲れ果てていたからです。回復してきたらそれだけでは一日を過ごすのが辛くなってきます。
やる事がないというのも人間には苦痛なものでした。
「そうですか。でしたら庭の掃き掃除でもしてはくれませんか? 御覧の通り、このお屋敷の庭は広く、木々が何本も経っています。落ち葉が大量に落ちているのです。使用人だけではなかなか庭が綺麗になりませぬ」
ウィリアム様はそう言ってきます。
「掃き掃除ですね。わかりました。がんばります」
「あまり頑張らなくて結構です。疲れられて倒れられても困りますので」
やはりウィリアム様は見た目は怖いですが、心のお優しい方です。義母や義妹は私が過労で倒れる事を楽しんでいました。
それは義母や義妹が異常だっただけだと思いますが。よく今まで生きてきたものです。自分で自分に感心してしまいます。こうして私は庭の掃き掃除をする事にしたのです。
◇
私はウィリアム様の見ているすぐ傍で掃き掃除をしていました。ウィリアム様はテラスに腰かけ、その様子を見守っています。
やはり仕事があるといいものです。仕事があると精神が充実します。多少の労働がないとはやりメリハリがなくなってしまうものです。
その時の事でした。天気が悪くなってきたのです。突如黒い雨雲が空を覆い始めました。そしてぽつぽつと雨が降ってくるのです。
さらにはゴロゴロと雷の音がします。私はその時、ちょうど木の近くにいました。
ピカピカと光ったと思うと、木に落雷が落ちてくるのです。
「え?」
大木に落雷が当たり、枝木が折れました。そして巨大な枝が私に向かって落ちてきたのです。枝と言ってもそれは木の幹くらいの太さでした。頭上に落ちてくれば決して無事では済むものではありませんでした。
「危ない! シャーロット!」
ウィリアム様が私に走り寄ってきました。そして、その巨大な身体で私を庇ったのです。
ウィリアム様が盾となってくれたおかげで私は無事でした。ですが。
「無事ですか? シャーロット」
「ありがとうございます。ウィリアム様のおかげで無事でした。ですが、ウィリアム様は。私を庇った事でお怪我をされたのではないですか?」
「私は御覧の通り、丈夫な身体をしていてね。あの程度ではビクともしないよ。それよりシャーロットが無事でよかったよ」
ウィリアム様は私から離れます。その時なぜでしょうか。私はもっとこう、抱きしめて欲しかったような、そんな寂しさを感じたのです。
なんでしょうか。この感情は。やるせないような気持ちを抱きます。
それにこうまで人に優しくされたのは生まれて初めてだったのです。
その時私は野獣のような見た目をしているウィリアム様のその心の美しさを見出し。そして惹かれていっている自分に気付いたのです。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/695858559/595482008義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される新作短編よろしくお願いします!
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