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第一章 その魔女はコーンスープが苦手
一つだけの抜け道
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人間が、なぜ百年も若い姿のまま生きているのか。
その質問に、フレンはさも簡単に答えてくれた。
「私が、魔女の代わりになったからよ」
「は?」
「私は真実を知ってすぐ教団を抜け出したの。そしてエミリスに力を貸すことにした。でも、神の力に耐えられるように、しかも速攻でその体を作るのには相当な負荷がかかるのよ。その時の代償で、私の体の時間は止まったわ」
「不老不死ってことか……?そんなまさか」
「不死ではないわ。いや、老死はしないから不老ちょっと不死って感じよ。刺されでもしたら普通に死ぬと思う。修復に使う魔力は私だけじゃ補えないからね」
今は魔女がいるからもう依り代としての役目はないが、特異な性質を得た体はそのままだという。
「そういえば、あんたは魔女を仲間にしたいんだったわよね?」
「ああ、そうだよ」
思い出したように手を叩く彼女の言葉に俺は頷く。
「魔力制御の方、うまくいってるの?」
「いや……。少しずつ結果は出てるんだけどな」
まあ、数日でどうにかなるなら過去の魔女も苦労しなかったろう。
しかしそんな考えを全否定するかのような言葉がフレンから飛び出してくる。
「いや、気のせいよそれ。もしホントに出てるんだとしたら、その子とんでもない天才か、陰でずっと努力してるわね」
「……なんでそう言えるんだ?」
これまでの考えを、ぶん殴って頭ごと飛ばされた。
「だって、魔女の力は本来非劣化よ。次の魔女に依り代の役目が移るまで、永遠に衰えることはない力なのよ」
「……は?だったらラトナと冒険に行くのは無理って事か?」
なんならこのまま肩を揺さぶるような勢いで詰め寄ると、彼女は逆にこちらの肩に手を置いて。
「いやいや、一個だけあるのよ。平等主義の女神様が決めたたった一つの特別ルールが。これを使えば、どんな魔女もすぐさま能力を管理できるわ。いや、管理しやすくなるっていうのかな?なんかこう、方向性が定まるらしいのよ」
これは魔女じゃないから正確には分からないけれど……。と付け足す。
そして彼女はこっそりと。俺にその特別ルールとやらを聞かせてくれた。
平等主義の女神エミリスは、神の依り代である魔女へたった一つの逃げ道を用意した。
それは、「誰かと結ばれる」こと。
とはいえ結婚とかそういうものではなく、ただ強く相手を思い、互いに心を通わせることが必要なのだとか。
そうした時、魔女はこれまでの依り代としての過酷さの報酬に、大きな魔力を受け取れるという。
優しい騎士団長は、新婚の騎士を死地には送りませんよ。みたいなことらしい。
聞くだけなら簡単に聞こえる話だが、今まで魔女と仲良くしようなんて考える者はいなかったのだから、その条件は当然見つからなかったそうな。
「せっかく私が人間捨ててまで、神と一緒に国を変えたのよ?忌々しい教団を崩してくのは、正直楽しかったんだけどね」
「魔女が幸せになれる可能性。ここにはそれがあるんだから、その子にそれを示してあげなさいよ」
「私にはできなかったこと、あんたにはできるかしらね?」
全て、フレンが言った言葉だ。煽るようにも聞こえるが、きっと背中を押してくれているのだろう。
だからまあ、なんだ……。
「仲間にしたいなら、魔女を惚れさせろって?……魔力制御より希望無いだろうがよぉ……」
ラトナは魔女だが、美少女だ。とても俺でつり合いが取れる人ではない。
次は、恋愛についての本でも借りるか?
そんな風に思考を巡らせていると、ふと図書館のイケメン、エクスの存在を思い出す。
もしかしたら、あのモテそうな彼なら何かいいアドバイスをくれるのではないか?と。
となればさっそく、図書館へと向かうことにしよう。
★
数日ぶりの図書館は、当たり前だが何も変わった様子はなく俺を迎えた。
図書館内をしばらくうろつくと、やはりひと際輝いて見えるエクスの姿があった。
「エクスさん、こんにちは」
後ろから声をかけると、彼はくるりとこちらを向いた。
「あ、ハルさん。昨日ぶりですね……!」
「ええ。あの、実はエクスさんに聞きたいことがありまして」
少し情けない思いはありながらも、俺は率直に尋ねることにした。
「はい、何ですか?」
「……俺に、恋愛について教えてくれませんか?」
まあ当然「は?」って顔をされた。
その質問に、フレンはさも簡単に答えてくれた。
「私が、魔女の代わりになったからよ」
「は?」
「私は真実を知ってすぐ教団を抜け出したの。そしてエミリスに力を貸すことにした。でも、神の力に耐えられるように、しかも速攻でその体を作るのには相当な負荷がかかるのよ。その時の代償で、私の体の時間は止まったわ」
「不老不死ってことか……?そんなまさか」
「不死ではないわ。いや、老死はしないから不老ちょっと不死って感じよ。刺されでもしたら普通に死ぬと思う。修復に使う魔力は私だけじゃ補えないからね」
今は魔女がいるからもう依り代としての役目はないが、特異な性質を得た体はそのままだという。
「そういえば、あんたは魔女を仲間にしたいんだったわよね?」
「ああ、そうだよ」
思い出したように手を叩く彼女の言葉に俺は頷く。
「魔力制御の方、うまくいってるの?」
「いや……。少しずつ結果は出てるんだけどな」
まあ、数日でどうにかなるなら過去の魔女も苦労しなかったろう。
しかしそんな考えを全否定するかのような言葉がフレンから飛び出してくる。
「いや、気のせいよそれ。もしホントに出てるんだとしたら、その子とんでもない天才か、陰でずっと努力してるわね」
「……なんでそう言えるんだ?」
これまでの考えを、ぶん殴って頭ごと飛ばされた。
「だって、魔女の力は本来非劣化よ。次の魔女に依り代の役目が移るまで、永遠に衰えることはない力なのよ」
「……は?だったらラトナと冒険に行くのは無理って事か?」
なんならこのまま肩を揺さぶるような勢いで詰め寄ると、彼女は逆にこちらの肩に手を置いて。
「いやいや、一個だけあるのよ。平等主義の女神様が決めたたった一つの特別ルールが。これを使えば、どんな魔女もすぐさま能力を管理できるわ。いや、管理しやすくなるっていうのかな?なんかこう、方向性が定まるらしいのよ」
これは魔女じゃないから正確には分からないけれど……。と付け足す。
そして彼女はこっそりと。俺にその特別ルールとやらを聞かせてくれた。
平等主義の女神エミリスは、神の依り代である魔女へたった一つの逃げ道を用意した。
それは、「誰かと結ばれる」こと。
とはいえ結婚とかそういうものではなく、ただ強く相手を思い、互いに心を通わせることが必要なのだとか。
そうした時、魔女はこれまでの依り代としての過酷さの報酬に、大きな魔力を受け取れるという。
優しい騎士団長は、新婚の騎士を死地には送りませんよ。みたいなことらしい。
聞くだけなら簡単に聞こえる話だが、今まで魔女と仲良くしようなんて考える者はいなかったのだから、その条件は当然見つからなかったそうな。
「せっかく私が人間捨ててまで、神と一緒に国を変えたのよ?忌々しい教団を崩してくのは、正直楽しかったんだけどね」
「魔女が幸せになれる可能性。ここにはそれがあるんだから、その子にそれを示してあげなさいよ」
「私にはできなかったこと、あんたにはできるかしらね?」
全て、フレンが言った言葉だ。煽るようにも聞こえるが、きっと背中を押してくれているのだろう。
だからまあ、なんだ……。
「仲間にしたいなら、魔女を惚れさせろって?……魔力制御より希望無いだろうがよぉ……」
ラトナは魔女だが、美少女だ。とても俺でつり合いが取れる人ではない。
次は、恋愛についての本でも借りるか?
そんな風に思考を巡らせていると、ふと図書館のイケメン、エクスの存在を思い出す。
もしかしたら、あのモテそうな彼なら何かいいアドバイスをくれるのではないか?と。
となればさっそく、図書館へと向かうことにしよう。
★
数日ぶりの図書館は、当たり前だが何も変わった様子はなく俺を迎えた。
図書館内をしばらくうろつくと、やはりひと際輝いて見えるエクスの姿があった。
「エクスさん、こんにちは」
後ろから声をかけると、彼はくるりとこちらを向いた。
「あ、ハルさん。昨日ぶりですね……!」
「ええ。あの、実はエクスさんに聞きたいことがありまして」
少し情けない思いはありながらも、俺は率直に尋ねることにした。
「はい、何ですか?」
「……俺に、恋愛について教えてくれませんか?」
まあ当然「は?」って顔をされた。
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