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第一章 その魔女はコーンスープが苦手
魔女 日記 2
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初めての旅は、思っていたよりも快適なものだった。
賢者の職業から得られる知識と、魔女の力の万能性。暴走さえしなければ魔女はとても便利な職業だという噂は嘘ではないようだ。
まあ、何回か死にかけたけど。
「な、治したじゃん!許してよ!」
最初は落ち込んでいたルルも、次第に明るさを取り戻してきた。多少無理しているように見えなくもないが、塞ぎ込むよりは回復もしやすいだろう。
極論、彼女が魔力を制御できるようになればいいだけの話なのだから。
「怒ってはないから安心して。むしろ感謝してるくらい」
「それなら私もしてるし!」
こうやって森の中で騒ごうが、襲ってくる魔物はルルが一瞬で蹴散らしてくれる。
安心安全。
「あ、避けて!」
「あぶっ!!……痛いんだけど?」
「ご、ごめん」
安全ではなかった。
ルルが出した氷の槍は私の肩を掠る。
「治れ、治れ~」
ルルがさするとすぐに傷口は塞がるが、これもどこまで治せるか分かったもんじゃない。
すっかり元通りになった肩に手を触れて、こちらを心配そうに見上げてくルル。もう一、二言文句を言ってやろうかとも思ったが、その気は失せてしまった。
「大丈夫だってば。ほら、私って冒険者になりたいって言ってたでしょ?冒険者ってね、怪我なんて当たり前なのよ」
強がりではなく、本心だった。
文句はあるが、恐れていないのは事実なのだ。
実際私の職業は戦闘には向いていないが、今の冒険はそれはそれで楽しい。
彼女が孤独にならないよう。私は魔女なんかに怯えてはならないのだ。
★
冒険に憧れていた、戦闘職じゃない私。そこに少しの共感を抱いた。
俺も魔女にはさんざんやられているが、確かにそれだけじゃ立ち止まれないもんな。
しかし、魔女との冒険は想像するだけで楽しそうに感じられる。俺も魔女と仲良くなって……。
なんて考えているうちに、俺は意識を手放してしまっていた。
★
窓から差し込む朝日で目を覚ます。
慌てて体を起こすが出勤時刻を過ぎているわけでもなく、むしろ目覚ましよりも早く起きていた。だが寝なおすにしては時間がない。
少しもったいない気分に浸りつつも、俺はベッドを離れた。
出しっぱなしだったティーセットを片付けて朝食を取り宿を出る。
配達ギルドに入ると、歓迎会の時に俺をたきつけた先輩がこちらを見て手を振っていた。
「新入りー!この前はすまなかった!」
まだだいぶ距離があるというのに、彼はそう言って頭を下げた。
近づいてから、俺は声をかける。
「頭上げてくださいよ。えっと、エリック先輩、でしたよね?」
「ああ、そうだ。だが、頭は上げられん!」
「何でですか」
それは……。と彼は一息ためてから。
「酔った時の勢いで、君に魔女エリアの配達を押し付けてしまっただろう?」
なんて言う。素面の時は普通にやさしい先輩なのだろうか。
俺としては最初こそ驚いたものの、今では理想のパーティーの足掛かりになっているのだからむしろ感謝しているくらいだ。
それを伝えると彼は困ったような顔で顔を上げた。
「本当に、君は冒険者に憧れているんだね……」
「はい。昔からの夢ですから」
そうか。と頷いたエリックは最後に一言「何かあったら頼ってくれ」とだけ言って仕事に向かった。
「強い先輩だったら、パーティーに誘うんですけどね」
何て失礼な言葉を吐いて、隣で見ていたアルカに視線を送った。
「言わないであげて。おしゃべりが終わったなら配達行ってらっしゃいな」
彼女はそれを流してしっしと手を振る。
彼女の興味スイッチはどこについているのだろうかと気になって仕方がない。今日帰ってきたらまた魔女の話を聞かせようかな。
いつも通りの荷物と魔法についての本を携えて、俺は今日も魔女エリアへと向かった。
賢者の職業から得られる知識と、魔女の力の万能性。暴走さえしなければ魔女はとても便利な職業だという噂は嘘ではないようだ。
まあ、何回か死にかけたけど。
「な、治したじゃん!許してよ!」
最初は落ち込んでいたルルも、次第に明るさを取り戻してきた。多少無理しているように見えなくもないが、塞ぎ込むよりは回復もしやすいだろう。
極論、彼女が魔力を制御できるようになればいいだけの話なのだから。
「怒ってはないから安心して。むしろ感謝してるくらい」
「それなら私もしてるし!」
こうやって森の中で騒ごうが、襲ってくる魔物はルルが一瞬で蹴散らしてくれる。
安心安全。
「あ、避けて!」
「あぶっ!!……痛いんだけど?」
「ご、ごめん」
安全ではなかった。
ルルが出した氷の槍は私の肩を掠る。
「治れ、治れ~」
ルルがさするとすぐに傷口は塞がるが、これもどこまで治せるか分かったもんじゃない。
すっかり元通りになった肩に手を触れて、こちらを心配そうに見上げてくルル。もう一、二言文句を言ってやろうかとも思ったが、その気は失せてしまった。
「大丈夫だってば。ほら、私って冒険者になりたいって言ってたでしょ?冒険者ってね、怪我なんて当たり前なのよ」
強がりではなく、本心だった。
文句はあるが、恐れていないのは事実なのだ。
実際私の職業は戦闘には向いていないが、今の冒険はそれはそれで楽しい。
彼女が孤独にならないよう。私は魔女なんかに怯えてはならないのだ。
★
冒険に憧れていた、戦闘職じゃない私。そこに少しの共感を抱いた。
俺も魔女にはさんざんやられているが、確かにそれだけじゃ立ち止まれないもんな。
しかし、魔女との冒険は想像するだけで楽しそうに感じられる。俺も魔女と仲良くなって……。
なんて考えているうちに、俺は意識を手放してしまっていた。
★
窓から差し込む朝日で目を覚ます。
慌てて体を起こすが出勤時刻を過ぎているわけでもなく、むしろ目覚ましよりも早く起きていた。だが寝なおすにしては時間がない。
少しもったいない気分に浸りつつも、俺はベッドを離れた。
出しっぱなしだったティーセットを片付けて朝食を取り宿を出る。
配達ギルドに入ると、歓迎会の時に俺をたきつけた先輩がこちらを見て手を振っていた。
「新入りー!この前はすまなかった!」
まだだいぶ距離があるというのに、彼はそう言って頭を下げた。
近づいてから、俺は声をかける。
「頭上げてくださいよ。えっと、エリック先輩、でしたよね?」
「ああ、そうだ。だが、頭は上げられん!」
「何でですか」
それは……。と彼は一息ためてから。
「酔った時の勢いで、君に魔女エリアの配達を押し付けてしまっただろう?」
なんて言う。素面の時は普通にやさしい先輩なのだろうか。
俺としては最初こそ驚いたものの、今では理想のパーティーの足掛かりになっているのだからむしろ感謝しているくらいだ。
それを伝えると彼は困ったような顔で顔を上げた。
「本当に、君は冒険者に憧れているんだね……」
「はい。昔からの夢ですから」
そうか。と頷いたエリックは最後に一言「何かあったら頼ってくれ」とだけ言って仕事に向かった。
「強い先輩だったら、パーティーに誘うんですけどね」
何て失礼な言葉を吐いて、隣で見ていたアルカに視線を送った。
「言わないであげて。おしゃべりが終わったなら配達行ってらっしゃいな」
彼女はそれを流してしっしと手を振る。
彼女の興味スイッチはどこについているのだろうかと気になって仕方がない。今日帰ってきたらまた魔女の話を聞かせようかな。
いつも通りの荷物と魔法についての本を携えて、俺は今日も魔女エリアへと向かった。
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