都合のいい男

美浪

文字の大きさ
上 下
180 / 180
番外編

ウェンに俺の秘密を話した日

しおりを挟む
同性婚の法律が間もなく制定とされる少し前の事だ。

夢を見た。
初めてカプリスがJUSTICE&に登場した回の漫画を見ている俺。

思春期。
女の子に興味無し。かと言って男?
どちらかと言えば男が好きだと思っていた頃だ。

初登場のカプリスでまだ名前も無いウェン。うん、初回はボスとシアンとバックスレーさんしか名前無かった。

名も無いキャラクターに恋をした。

それで自覚したんだ。
男が好きなんだって。それも2次元・・・。

カプリスが登場する度にドキドキと恋心が増した。
ウェン・ムーン。その名前を知った時。

本当にこの人と付き合いたいと馬鹿だけど思ったんだ。
俺の推し。

そう、世間一般的には推しキャラ。

でも。俺は本気で好き。本当に好き過ぎて・・・。


「ミナキ。朝だよ?」
「!!?ウェン・・・。」
何びっくりしてるの?とウェンは笑いながら優しく抱き締めた。

そうだ。言わなきゃいけない。

もしも俺がこの世界に来ないと言う事になってしまう過去なら俺は消える。
海誠先生の漫画次第なんだ。

凄く結婚したいけれど・・。今はダメだ。

ずっと隠してきた事実。

言ったら嫌われるかもしれないと言う思いがどうしてもあった。

最初から知ってた何て気持ち悪いよね。

「ミナキが何か思い詰めている。」
ウェンはちょっとムスっとした顔で言ってくれないの?と言った。やっぱり顔に出てたか・・。

言わなきゃ。俺は大きく深呼吸した。

「今から話す事。良く聞いて。そして信じて欲しい。」
ベッドから起き上がってそのまま座った。
「何?勿論、ちゃんと聞く。」
ウェンも起き上がって座ってくれた。

「今迄、黙っていてごめんなさい。」
先に謝った。ウェンは少しばかり不機嫌。

「あのね。俺はこの世界の事知ってた。この世界に来る前に海誠先生の漫画を読んでた。」
海誠先生達より少しだけ未来から来たんだ。


           ・・・・・・・・・・・

ミナキは真剣な顔で語り出した。
俺はそれを聞く。

「漫画家さんが帰ってから描いた漫画を読んでた。なるほど。」
ミナキは頷く。

知ってたか・・・。カプリスの事や俺の事。

「あの。ウェン?ごめんね。気持ち悪いよね。」
ミナキは何故か酷く落ち込んだ顔で今にも泣きそう。

「え?どうしてそんな発想になる?」
寧ろ謎が解けたと言うか。

ずっと俺を好きだったんだ。

そう、ずっとずっとずーっと前から。
俺に逢う前から。

顔、ニヤけそう。

ダメだもう無理。
「フフっ。あはは。ミナキが可愛い過ぎる。」

「え?!ウェンの方こそ何故、そこで可愛いって反応になるの?」
ミナキは何とも言えない顔をして俺のニヤケ顔を見詰めた。
いや、嬉しいし可愛いし。

「ミナキ。上手く言えないけれど。漫画家さんが帰還してこの世界の話を描くのは事実でしょ?そう言ってたし。それをたまたま?時代がズレてて読んでただけ。」

ミナキはそうなんだけど。と頷いた。

「カプリスを知っていても漫画家さんは全ては知らなかったよね?だから不自然では無かったと言うか?」
皆の年齢とかミナキは知らなかったし。ボスの名前とか。
後は同性愛もか。

「うん。最初のエバーステイの宝石盗むミッションだけちょっと知ってた。後は何か漫画と違ってて・・。」
ミナキはそう言った。
あー!あー!

「それで、バックスレー?」
あの時、オーガが来る事知ってたのか。
そうかそうか。

「うん。バックスレーさんの事は助けたくて。本当は腕を失うって話だったから。歴史はそこは変えたかも。」
ミナキは頭をポリポリ掻きながら気まずそうに頷いた。
それは良い事をしただけでは?

「やっぱり。どう聞いても気持ち悪くない。ミナキは本当にカプリスが好きだったんだね。」

この世界に来たのはミナキの両親とアインシュタインの策略みたいだけど。

「俺、言おうか迷ったんだ。でも、余りにも漫画と現実が違い過ぎと言うか。海誠先生が描いてないから知らなくて。」
ミナキの頭を優しく撫でた。

そりゃ、知らなくて当然だし。


「ミナキ。好きなカプリスメンバーって。1番は俺。後はジハード、アルージャ、ボス、ラズだった?」
少し意地悪してみた。

だって。オーラがそう語ってたし。

「え?!!うっ。うん。」
ミナキは動揺した顔で少し苦笑い。

「あの自己紹介の時に解った。あぁー!本当にスッキリしたー!」
俺はミナキを思わずギュっと抱き締めた。

「聞いたら益々、好きになった!出会った瞬間から俺を好きだった謎も解けた!」
俺、相当テンション高い。

「うん。まあ、最初から好きで会えた事が嬉しくて仕方なかった。」 
ミナキが可愛くて可愛くて堪らずキスをした。


異能って言うのは遺伝や環境、強く望む思い、後は能力値とか適正とかあるけどそんな事で決まる。

俺は全てをぶっ壊したい思いが光弾となり。

いらない異能と思っていた好きか嫌いか見えるオーラ。

違った。

これは必要な異能だった。

俺は愛が欲しくて仕方なかったんだ。

誰かを愛して愛されたくて。

誰かの1番になりたかったんだ。

それなのに家族なんて要らないなんて思っていた。

自分から誰も好きにならず。

愛が何かも解らず。

「ミナキが俺に全て与えてくれたんだよ。愛する事、愛される事を教えてくれた。」
好きだ。好きだ。好きだ。
愛してる・・・。

「ウェン。ウェンは俺の初恋。今も昔もずっとウェンだけだよ。」
ミナキは微笑んで俺に優しいキスをくれる。

「話して良かった。でも、皆には秘密ね!」
そう釘は刺されたけど。勿論、言う必要は無いと思うし。
既に時効だろう。


ただ、結婚は延期になった。

ミナキの消えるって可能性を聞いた時は顔に出さない様に必死だった。

この世界に来ない可能性?

怖い。失うのが怖い。

半年くらい生きた心地しなかった。
ミナキも言わなかったけど同じだったと思う。

ミナキがこの世界に来た日は俺達の結婚記念日になった。

同性婚は別姓でも良いのにミナキは俺と同じ苗字にした。

ミナキ・ムーン。

何だか照れる。

そして、幸せ過ぎる。


            ・・・・・・・・・・・


ミナキ・ムーンになってから5年。

「ウェン!結婚記念日!デートしよう。」
実は何だかんだで小心者なので自分が消えないかこの結婚記念日って嬉しいけど内心ビビっている。

今年も大丈夫だった!

付き合いと結婚合わせて6年ちょっと。好きになって12年ちょっと。

今でもウェンが大好きだ。

「ミナキ。愛してるよ。今日は夕方までデートして。夜はいっぱい可愛がるから。」
ウェンも変わらずで。

俺達は相変わらず愛し合っていて。

幸せです。

これからもずっと。ずっと。



☆番外編お付き合いありがとうございました。読んで頂けて本当に嬉しかったです!☆
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

みけ
2020.08.09 みけ

完結してしまったのでこれから先、皆んなに会えないのはちょっと寂しいです。でも、ハッピーエンドで良かったです。ありがとうございました。

美浪
2020.08.09 美浪

ご感想ありがとうございますm(_ _)m
完結まで御付き合いありがとうございました♡
書きたい事は書いた・・・と思います。
次回作(ジャンル未定)、そのうち書きますので、また機会がありましたら読んで下さい。

解除
みけ
2020.06.13 みけ

いつもハラハラドキドキしながら、読ませていただいております。関西人として、一点だけ気になっている事があります。「本間」は「本当」との意味なら「本真」ではないかなと思います。間違えていたらすみません。これからの展開、楽しみにしております。

美浪
2020.06.13 美浪

この度は御感想と御指摘ありがとうございます!!
御指摘の通り、間は真でしたm(_ _)m
御恥ずかしい限りです。
ありがとうございますm(_ _)m

今後も頑張りますのでどうぞ宜しくお願い致します!

解除
あたた める

8話のエロさがすごいことになってた!!
お手本のような官能的な描写!!

素晴らしい!

美浪
2020.02.29 美浪

ご感想ありがとうございますm(_ _)m
そう言って頂けると非常に嬉しいです!!

解除

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

登山

むちむちボディ
BL
趣味として山登りを楽しむ中年男性に起こる物語です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。