都合のいい男

美浪

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エクア・ドル。獣人編

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――四神結界――
ミナキの傍には全員集合している。

「目が慣れたら手伝いに来てね?」
暫くしたらボスやシアンは大丈夫だろう。

「外へ行くぞ!」
アジトは壊したくない。

「お前?見えているのか?」
スティーブンがそう聞いてきた。

「さあ?どうだろうね?」
クスっと笑う。
まあ、この動きでバレバレだろうけれど。

外は月明かりも無い夜中の様だった。
清々しい!本当に暗闇!

これは本当に快適空間。
山の立地がちょっと平地に比べると戦闘がしにくいが。そこは仕方無い。

剣を抜く。

スティーブンも剣を抜いた。

じゃあ、お手並み拝見。
さっと近寄り剣を振るう。ガチッと受け止められた。
そこから攻防戦。

1歩も引かないね。
まあ、Sランクになるだけあって強い。

体力面ではやっぱり俺はダメだな。
1人で勝てる?

早めに仕掛けるか。

スピードを上げて更に向かう。
ザシュッ!!
軽くだが斬りつけた。

「クソ!カプリスめ!!喰らえ!!」
スティーブンが何か叫んだが避ける。

俺はイラついてるんだよ。喰らうか!

――完全なる闇パーフェクトブラインドネス――

「え?」

・・・見えない。

「見えないだろ?」
スティーブンがそう言った。

目を開けているのに。

この異能は盲目か!?

移動した気配。

気配を研ぎ澄ませ・・・。音・・・。何処だ?

来る!!
ザシュッ!!!
「クッソ!」
痛てぇ。左手からポタリと血が流れる。

いたぶる様にスティーブンは剣を振るう。

その時アジトの扉が開く音がした。

「来るな!!コイツの異能は盲目にする!」
どう言う風に発動してかけられたかも解らなかった。

触れられた訳でも無いし。

ガチッ!そう言っている間もスティーブンの攻撃は止まない。

見えないバトルは厳しい。
普段の闇で慣れているとは言えそれは闇でも見えるからだ。

見えないと言うのは恐怖が伴う。

バシュッ!
今度は背中を斬られた。

クソ痛てぇ!

――異能初期化デフォルト――

自分にかけるのは初めてだが目にデフォルトをかけてみた。
少し薄らと・・・。

グルルル・・・。グルルルル!

「え?!来るな!!」

気配と音とほんの少しだけ見える目に映る。
獣人化したゼットの姿・・・。

美しい銀に青の混ざった毛並みの狼。

「クソ!獣人がぁ!!」
獣人化したゼットの動きは速く剣をもろともしない。

タッ!
地面を蹴る足音と影と影がぶつかり合う音と。
しかし、お互いに決定打に欠ける。互角・・・。
また盲目にされたら終わるぞ。

俺も戦闘に参加しなきゃ。

フッと背後に気配を感じた。
優しく暖かい。
「ハーミット様。治療します。」
これは神人だ。リョウの手術の時に見たやつ。

――再生医療リジェネレイティブ――

「見えた!」
傷も治ってる。
「ミナキ!ありがとう!」
ミナキの神人はスっと消えた。

ああ。ゼットかっこいいよ。お前って奴は。
「全く!何!助けに来てるんだよ!お前には嫁や子供や護る奴がいるだろ!」
キレながら戦闘に参戦した。

「は?!」
ゼットはキレ気味に此方を睨む。

この発言は失敗した様だ。嫉妬丸出し!
恥ずかし過ぎる。

「すまん。殺るぞ。忘れてくれ。」

俺が剣を振るう。ゼットが襲いかかる。
上手いコンビネーションで相手を追い詰めて行く。

――完全なる闇パーフェクトブラインドネス――
スティーブンの盲目の異能が発動した。

どう言う仕組みか今度は見極める。

「影か!」
闇に乗じて更に濃い闇が此方に迫るのが解った。

さっきは解らなかった。ほんの僅かの闇の濃さの違い。

解れば避ける。

1人でバトルだったら見極めは厳しかったろうな。助かった。

「ゼット!!盲目の正体は更に濃い闇だ!」

「了解!狩るぞ!」

ゼットの動きに合わせて攻撃を加える。

タッ!と後方に下がったゼットが構えた。

獲物を次の攻撃で仕留める気だ。
俺も剣を構え直す。

ゼットがスティーブンに向けて飛び掛った瞬間に俺も動く。

喉は躱されたが右肩にゼットが食い付いた。

背後に回って刺す・・。ザシュッ!!

剣が背中を貫く手応えと共に・・。

「眩しっ!!!」
電気が付くかの様に辺りは明るくなった。
陽の光が眩しいー。

「アルージャ。ありがとう。」
獣人化したゼットは元の人型に戻る。
「いやいや。こちらこそ。助かった。獣人は暗闇に強かったな。」

そうだ。俺はあの日から。

「闇の中の方が居心地良いからね。」
ゼットはそう言って笑う。

うん。獣人との生活。夜は真っ暗だった。明かりを付けなくても見える彼等の生活に合わせた。
最初は苦労したが。慣れると見える様になる。

それからだ。

普段でも俺は夜でも明かりは付けない。

俺は獣人といや、お前との暮らしを何処かで夢見て?

叶わぬ夢を・・・アホだな。

「戻るか。アジトに。ユウエンにまた来て貰わないとなあ。」
ゼットに笑いかける。

「なあ?アルージャ?何か勘違いしてるよね?」
ゼットは先に歩く俺を呼び止めた。

「ん?なんだ?」

やれやれ今度はなんだ?と振り返った。

「俺、独身なんだけど。」 

・・・・・・?ん?

何故!?え?待て?

「じゃ、戻ろう。アルージャ。」
今度はスタスタと俺の前を歩くゼットを追い掛ける。

え?なんで?

脳内は混乱して俺の心はまた乱される。

本当に勘弁して欲しい。
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