都合のいい男

美浪

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エクア・ドル。獣人編

過去

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「獣人がこの世界に召喚されていたのは30年前迄。」
目的はマフィアの制圧と言う今の異世界人と同じ目的だ。
「あれ?20年前じゃなかったか?」
ハーミット様が口を挟むとそれは俺達が会った時の話だろ?とゼットは笑う。
ハーミット様もそうだったね?と何か意味もなく嬉しそう。

統一されている世界だとは思っていたが。

この世界は先代総帥の時代に大きな世界戦争があり世界は制圧されたそうだ。

世界征服したのは先代総帥。なるほど。

しかし、時が経つと各国にも強い異能者が誕生しマフィア組織拡大など完全なる制覇が難しくなっていった。

手足となる異能者、マフィアを制圧出来る異能者の召喚を最初に行ったのは先代総帥。

その異能は総帥にも引き継がれた。総帥は召喚と洗脳の異能者。

「ある意味驚くだろうけれど召喚された獣人って男性5名女性5名くらいなんだ。それが増えたんだ。生命力が強いから。」
と苦笑した。

獣人召喚前から元々、俺達の世界から人間を召喚していたが当時は年間1名召喚出来るか出来ないか程度で効率が非常に悪かった。
お互いの世界の繋がりが上手く行かなかったからだと思うとゼットは言った。

それに比べて獣人世界との繋がりは容易だったらしい。

「最初の召喚は人間なんだ?獣人は一時的なものだったの?」
獣人の後に人間だと思ってた。
勝手な勘違い。

「そこは解らないよ。最初は偶然の異世界転移だったんだと思う。それから召喚して戦わせよう等と考えたんだろう。俺が知ってる召喚された獣人は10人としか聞いていない。」
なるほど。中断させて申し訳ない。

「えっとね。人間と違って獣人には洗脳の異能が効かなかったんだ。」

獣人1人の時は真面目に任務をしていた。しかし数年間に渡って次々と召喚され仲間が増えた途端に結託して政府異能者達を倒して脱走したと聞いている。

そして更に数年後、獣人達は子供も産まれ数は増え。この世界でも生きていく目処がたったと思われた。

少し間が空いてゼットは辛そうな声で話をまた始めた。
「しかし、エメリヒ大元帥の召喚で獣人達は追い詰められる事態になったんだよ。」
ゼットは大きく溜息を付く。

「召喚された大人の獣人達のうち8名はエメリヒの異能、洗脳により互いを殺し合って死んだ。奴の異能の洗脳に抗える者は居ないと聞き伝えられている。」

「洗脳は思った通りやな。」
リョウの発言に俺達も頷いた。

逃げ延びた獣人達は身を隠す事を余儀なくされる。

「さて、それから何年後かな?良く解らないんだがトール元帥が召喚された。」

ゼットは質問してきた。
「トールは何を作ったと思う?」
俺達は海誠先生に聞いていたので政府異能コンピューターと答えた。

「半分正解。」
そう言われてハーミット様が首を傾げた。

「政府異能コンピューター、アインシュタインだろ?それ以外にあるのか?」
ゼットの顔は真顔で少し目を閉じた。

「アインシュタインってね。総帥の名前なんだ。」

それってどう言う意味?
総帥の名前を付けただけじゃそんな風に言わないよね・・・?

「政府異能コンピューターアインシュタインは総帥だよ。」
ゼットは真剣な眼差しで俺達を見た。

「嘘は言うてへん。」
リョウがそう言う。
ちょっと想像を超えて来たぞ?!

「トール元帥の異能はそう言う異能なのか?」
ハーミット様も眉間に皺を寄せてゼットにそう聞く。脳内チップを入れる異能者じゃないのか?

「脳内チップ完成はもう少し後だ。彼の最大の異能は人間の機械化。ただしエメリヒの協力が必要。完全洗脳後にしか出来ない。」
と言う事を生き残った獣人に聞いた。

2名の生き残りは仇討ちの為にずっと政府を探っていた。1人は俺の親父だからこの話は間違い無いよと言った。

「エメリヒとトールの目的はこの世界への復讐。いや?もしかすると。トールも洗脳されている可能性は高い。」
困った事に想像通りだった。

「その後アインシュタインを使って召喚したのがユウヤ・エノキズ。それからは彼が召喚異能者として今の政府を作っている。」
俺達は大きな溜息と共に頷いた。

「本当に獣人にはきちんと伝承されていたんだな。そりゃ政府が始末したがる訳だよ。総帥が死んでるんだもんな。」

ハーミット様がゼットの肩をポンポンと叩いた。
「どうしたい?逃げるか?」
そう聞くとゼットを含めた獣人男性達は顔を見合わせた。

「・・・。」
迷っている感じかな。沈黙が暫く流れた。

その時、何か異様な殺気を感じた。

「迷う暇ないで。来るで!!!」
リョウが叫んだ。

ドーン!!!と爆音がして地震が起こったように家が揺れた。
ドスッ!!とまた激しい音と共に屋根が崩れ始める。

「エンジェルや!!」

「外へ!!女達は子供を!!」

「ミナキ!!!」
「了解!」

――結界都合のいい男――

崩れる家を結界で護りつつ脱出する。

「やっほー。見っけたー!」
外には見た目エンジェル・・・。中身はデビル・・・の金髪の異世界人異能者。

樹齢数千年の大木の太い枝が途中で折れて家の屋根を押し潰そうとしていた。

「あれー?カプリスもいるんだね。しかもリョウちんまで。」
エンジェルはフフっと企んだように笑う。

その殺気は本当に異質。

「やっぱり沢山人が居る所を捜すのが手っ取り早いよね?あはは。」

エンジェル・ターナー。
熱の異能者だよね。

「サーモグラフィーか。」
ボスがこれ程離れて居ても見つかるとはとボソッと呟いた。
逃げても必ず見つかるって事か。
イメージは映画のプレ〇ター。あのエ〇リアンと戦ったやつ。

どう倒す?
辺りは熱風を帯びた殺気に満ちて居た。
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