都合のいい男

美浪

文字の大きさ
上 下
75 / 180
遺跡

逃げ切れるか?

しおりを挟む
参った。このガキ強すぎる。

カプリス結成10年。1番のピンチ。
人生でこれ程の強敵と手合わせしたのは初かもしれない。

しかも1体1じゃない。4対1の俺達と対等以上のバトルをしやがる。

Aランクの政府異能者?いやSランクかもな。
全然、思考が追いつかない。逃げるアイデアや勝つ方法すら考える暇が無い。
俺の異能の地獄の大鎌の発動の一瞬がバレている。行動が読まれている。異能発動時の僅かな気の流れを感じ取る力か。

使おうとすると光弾が来る。

この光弾は当たると無生物に変えるだけじゃない。無生物になった人間をマリオネット化する?様だ。
異能が何か解っても今回ばかりは全く役に立たない。攻撃に当たってはダメだ。

ジハードの重力、シアンの拘束も発動の瞬間が与えられない。
いい加減疲れてきた。傷だらけの身体から少しずつ流れる血が冷静さを失わさせる。

ヴァルヴァラの異能力の底が見えない。今、此奴は何発?何十発?光弾を放った?
全員で攻撃する?
いや、被害が出る確率が高い。

ミナキの結界で護りきれるだろうか。
でも、此処はあいつに頼る方法しか思い付かない。
最悪、俺が犠牲になろう。カプリス全員を巻き込んだのは俺の気まぐれだから・・・。


「ボス!!」
バックスレーのデカい叫び声がした。
良かった。あいつらは勝ったか。

「ふーん?マイケルとダクシナが死んだ・・・か。」
ヴァルヴァラが不満そうな顔で俺達を見た。

「誰か欲しいな?」
ヴァルヴァラがそう呟いた瞬間にバックスレー達へ向かって今迄で1番デカい光弾が放たれた。
ノールック、放つ気配すら解らなかった。
「ミナキー!!」
ウェンの叫び声と
爆音と爆風と・・・。土煙で様子が解らない。
「チッ!厄介な異世界人だ。」
ヴァルヴァラが眉間に皺を寄せている、良し!!護ってくれたか!

この瞬間を逃すな!!

「撤退!!」
俺は叫んだ。全員、心得ている。迷うことは無い。全力で逃げる。
それが俺達のポリシー。仲間を優先。

ミナキの結界が俺達を包み込む。
「果たして壊れないか?自信なしです。でも頑張ります!」
俺は良い仲間を持った。

「走れ!」
ヴァルヴァラは攻撃をしながら追ってくる。
結界の範囲は約10メートル程の小規模円。ミナキを中心に全員をギリギリ護れる範囲。
多分、この前の様に壁状態の結界だと直ぐに破られるからだろうな。

後、少し。

「ボス!!何か来る!」
ラズが叫んだ。

景色が変わった。
此処に来てダンジョンマスターの復活かよ。
道が無くなった。異空間?街?地下街?なんだこれ。
「ボス!これは幻影だ。このダンジョンマスターは元マジシャンなんだ!全部嘘!」
ミナキの声に我に返る。

「なるほど。悪かった。少し焦り過ぎたな。」
冷静じゃない自分なんて久しぶりだ。
目の前のトリックに騙されるなってか。

「ウェン!先導してくれ!俺は殿しんがりをやるから!」
大丈夫。ウェンなら見える。

俺はもしもの為に。メンバーを護る。

此処は遺跡から雑木林に続く道。足元は土。
そう。この地下街の様な風景は偽物。ダンジョンマスターの気配は消えた。
ウェンの攻撃を受けた傷は癒えていなかった様だな。悪足掻きと見て良さそうだ。

問題はヴァルヴァラの背後からの止まない攻撃。
ミナキは必死で結界を維持している。

後、少し。
間もなく抜ける。転移魔法陣に乗ったら終わる。

「ヤバいです!!」
ミナキがはぁはぁと苦しそうな顔で。
結界が破壊され始めた。

後少しなのに。

抜けた!!

「張さん!!」
魔法陣を描き待っていた張さん達を発見。

その瞬間にゾクリと殺気を背後に感じた。

来る・・・。

間に合えー!!

1人、また1人と転移魔法陣に入る。


ああ。コマ送りだ・・・。時間がゆっくりと流れている。
死ぬ・・・。

解ってしまうんだよな。異能者って。

光弾が背中に迫るのが解った。
皆を巻き込むより俺がこれを受けよう。
金印を転移魔法陣に投げ込んだ。


「ランジャン愛してるよ。」
耳元でシアンの声がした。え?!

俺の身体が激しく魔法陣に突き飛ばされた。

「シアーーーン!!!!!」

光弾がシアンを襲う。

光弾を受けたシアンの身体は片手で抱けるほどのぬいぐるみに変わってポトリと地面に落ちた。

ヴァルヴァラがぬいぐるみを拾い上げた。
「残念。殺人鬼シアンか。ボスかミナキが欲しかったのに。」
ヴァルヴァラが何か言っている。脳が追いつかない。

「シアン!!シアン!」

「ボス!もう無理だ!行くぞ!!」
転移!!
「待て!シアンが!シアンが!!」


「次に会う時はシアンは敵だよ?」
ヴァルヴァラが最後にそう言ってニヤっと笑って手を振った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

烙印騎士と四十四番目の神

赤星 治
ファンタジー
生前、神官の策に嵌り王命で処刑された第三騎士団長・ジェイク=シュバルトは、意図せず転生してしまう。 ジェイクを転生させた女神・ベルメアから、神昇格試練の話を聞かされるのだが、理解の追いつかない状況でベルメアが絶望してしまう蛮行を繰り広げる。 神官への恨みを晴らす事を目的とするジェイクと、試練達成を決意するベルメア。 一人と一柱の前途多難、堅忍不抜の物語。 【【低閲覧数覚悟の報告!!!】】 本作は、異世界転生ものではありますが、 ・転生先で順風満帆ライフ ・楽々難所攻略 ・主人公ハーレム展開 ・序盤から最強設定 ・RPGで登場する定番モンスターはいない  といった上記の異世界転生モノ設定はございませんのでご了承ください。 ※【訂正】二週間に数話投稿に変更致しましたm(_ _)m

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

処理中です...