都合のいい男

美浪

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計画と実行

始動

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ヴェガさんとガブリエルさんが帰られて2日程経った頃だった。

その日はウェンとラズとディードと4人でタッグマッチバトルをしようとジムへ来ていた。
休憩中に携帯を見ると

『決行日12日後。本日アジト集合。』
とボスからメールが来た。

「いよいよか。決まったんだ。」
「楽しみ。」
「俺はドキドキ。」
「俺も楽しみだな。」
俺だけドキドキみたい。
遺跡かあ。確か見た目はピラミッド?いや何だっけマヤ文明のやつみたいな感じだった。

「ねえ。今まで2つのマフィアが失敗しているんだよね?原因って何なの?」
単純に弱かっただけなのか政府の人間だらけだからなのか。

「俺がガブリエルに聞いた話では遺跡が迷路みたいでトラップがあるし政府異能者が強いって言ってた。」
とディードは話してくれた。

そこは予想通りだなあ。
「俺は知らない。」
「同じく。今日、聞いてみたら?」
ラズとウェンはそう言った。

修行終了後に皆でアジトへ向かう。
後、12日・・。俺は先ずは海誠先生に電話をしなきゃ。
「どうした?」
ウェンは俺の表情にとても敏感。不安とか直ぐにバレる。

「マコト・ソトメさんにかける電話。上手く話せるか考えてた。」
「あぁ。なるほど・・。ミナキなら大丈夫。俺なら無理。」
プッッ!思わず笑ってしまった。
ウェンもクスクスと釣られて笑う。

「大丈夫だ。悪知恵のアルージャも居るし。」
「そうそう。大丈夫だよ。」
ラズもディードも優しい。頑張ろう。

アジトにはボスとジハードとシアンが揃って居た。
「修行お疲れさん。晩飯班が来たら会議な。」
ボスは久しぶりに見たら全員レベル上がったねーとニヤっと笑った。

「あー。久々に家を出た。」
ハーミット様とバックスレーさん、エルーカさんにバニラさんが買い出しから帰宅。
ハーミット様はそれくらいずっと引きこもりだったらしい。

「今日の晩飯はお好み焼きとタコ焼きにした。」
うそー?!感動!あるんだ!本当に食文化日本バンザイ!

「ミナキも食べた事あるの?」
ウェンが嬉しそうな俺の顔を見て聞いてきた。
「好き!!」
そりゃ良かったとウェンも嬉しそう。

まだ温かいお好み焼きが美味い。タコ焼きも美味い。

「さて、キラービーの取引内容を説明しようか。」
ボスは俺が電話するという事でじっくりと話してくれた。
「メモしないと覚えられないかも!!」
取引時間に場所に・・。

「それは渡すから・・見ながらかけて。」
ハーミット様がタコ焼きをハフハフしながらそう言った。

「電話完了して相手が乗ってきたら始動する。」
ボスはそう言った。俺の演技力が大丈夫かだな。

晩御飯を食べ終わりハーミット様がパソコン画面を見ながら
「奴は自宅。メールは俺が打とうか?」

「そうですね。お願いします。」

『海誠先生。情報提供したいです。お1人なら連絡したいです。』

「カイセイ?って読んでるの?」
ボスに聞かれて漫画家の時の名前なのでと言うと解ったのか解らないのかちょっと首を傾げながら頷いた。
そう言えばアニメや漫画をこの世界で見た事無い気がする。

メールを送って10分程待つと電話がかかってきた。
緊張する。皆は物音1つ立てない様に静まり返った。

「もしもし。海誠先生?」

「昨日、夜勤で寝てたよ。遅くなってすまないね。待ってたよ!!」
寝起きらしいがテンション高い。

「先生は売人商会キラービーって御存知ですか?」
少し沈黙があって

「ヤクの売人。本拠地不明。勿論知ってる。」
そう言ってきた。本拠地知らないのか。ハーミット様は知ってそうだけど、取り敢えずそれは置いといて。

「その情報は入りますか?」
「いる!!キラービーは警察が潰したい組織の1つだ。」
乗ってきた!!良し落ち着け。

「キラービーが新しいクスリを作った様なんです。」
「まじか!全くそりゃ早く何とかしないと。詳しく解るかい?」
海誠先生も日本人だからクスリとか許せないんだろうな。

ハーミット様がパソコン画面を見せてくれるのでそれを読み上げる。
最近やっと字が読めるようになってきた。

「今月の15日にガーラントファミリーと取引があります。」

「ガーラント?東ボル・ネオか。」
流石、記憶の異能者、何でも聞いた事覚えているんだな。

「はい。取引場所も東ボル・ネオです。」
えーと。次は何て言うんだっけ?
パソコン画面を見る。

「何処でそんな情報を手に入れたんだ?」
え?どうしよう。
正直には答えられないし?濁す?ハーミット様の顔を見る。

『誤魔化せ!』
ハーミット様ぁぁ。パソコン画面に打ち込まれた文章にはそう書いてあった。

「言えません。前に言った通り余計なお喋りは出来ないんですよ。」
「そうだね。何処かのマフィアからの情報なんだろうけどそこをバラすとヤバいんだね?」
海誠先生は聞きたそうだが何とか納得してくれた。

「15日21時。東ボル・ネオ国。場所はコルド・バ埠頭のどこかです。埠頭の詳しい場所は解りません。」

「うんうん。そこまで解れば上等だよ。良いね!」
ホッとした。大丈夫そうだ。

実際に埠頭の詳しい場所は解っているのだ。しかし、怪しまれるから言うの止めようと今、ハーミット様がパソコンに打ち込んだのを見て考えてそう答えた。

「キラービーのネタは面白いよ。そしてガーラントファミリーか。リュートは出動決定だろうな。後は俺がこのネタを何処から仕入れたかってのを誤魔化して伝えないとねー。」
海誠先生も俺との関係は秘密だろうからなあ。

「大丈夫なんですか?取り締まれそうですか?」
情報を伝えたが動いてくれないと非常に困る。
 
「うーん?多分?」
多分じゃ困る。
ハーミット様が高速でパソコンを打ち込み始めた。
えーと。なるほど。

「この情報は今は活動自粛しているキラービーと対立関係にある密売組織ベータから足抜けした人からの情報なのです。それ言っても良いですよ。ただし足抜けした人の名前は言えません。」

ちょっと棒読みになってしまったが大丈夫かな?焦る。

「まじか。ベータからの情報・・。そうだったのか。解った。こんなデカい情報だ。名前は言えないと言っても誤魔化せる。」

ホッと溜息漏れそう。

「ありがとう!まさかこんな凄い取引情報が来るとはワクワクして来たよ。明日から警察も動き出すだろう。勿論、内密に行動するから安心してくれ。」

「では。またそのうち。」
そう言って電話を切った。

精神的に疲れた。

「はあー。おい!この漫画家って奴はもう少し色々考えているのかと思ったが適当過ぎるだろ?」
ハーミット様がプンプン怒っている。本当にハーミット様の咄嗟の悪知恵に救われた。

「俺もちょっと思いました。」
出処が何処かとか考えてくれていると思っていたし。

「まー。良いじゃ無いの。アルージャは定期的に探り続けてくれ。日程変更等あったら困る。」
ボスは笑いながらハーミット様を宥めてくれた。

「そりゃやるけどね。やるけどそろそろ俺も身体慣らししないと。」
身体が鈍り過ぎて今、弱いよー?とハーミット様は苦笑した。


そして本日より西アン・デス遺跡行き計画始動となった。
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