都合のいい男

美浪

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計画と実行

その頃のボス

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さて、西アン・デスに侵入する1番の方法。
それには彼の異能が必要。

色々と考えたのだが安全かつ正確。

トントントントン!
ドアをノックして部屋へ入る。

「ボス!!久しぶりだな。」
「だよな。何時もうちのメンバーを鍛えてくれて感謝してるよ。張さん。」

そう。駆除屋に来た。

「ボスがお出ましって事は厄介事を頼みに来たんだろ?」
読まれている。苦笑しながら頷いた。

「西アン・デスの遺跡に行きたい。」
張さんは目を閉じて口元はニヤっとわらった。

「ついに政府管轄国に手を出そうって言うのかい?」
「ああ。金印を盗む。」
張さんは少し黙った。

「俺の異能は解っているよなあ?」

「行った国にしか転移出来ない。」
その通りだと頷かれた。

「行けと?まだ行ったこと無い西アン・デスへ。」
「そう。俺と行ってみないか?」
また無茶苦茶だな?と張さんはゲラゲラと笑い出した。

無茶苦茶だとは解っている。
だが、俺と張さんなら侵入は可能な筈だ。

「1歩でも侵入出来たら・・。仕方ない。俺にもオークション後の分け前はあるよな?」
「勿論!」

お互いにニヤっと微笑む。

「最大限に警戒して誰にも出くわさない様にしないとな。」
張さんも何だかんだで昔から強い。もし、出くわしても大丈夫。しかし、俺達の今後の目的がバレるのは不味い。

気配を消す行為は俺も張さんも大得意。

「西アン・デスの隣のコロン・ビア共和国から侵入するか。」
張さんは立ち上がり右手を前に出した。
何時見ても不思議な異能だ。

フッと右手に背丈より少し短いくらいの錫杖が現れた。武器隠して持てるの便利だよな。エルーカの異能に少し似ている。

「ボス!行くよ。」
「了解!」
張さんの錫杖がシャンと鳴る。

元締め部屋の床に魔法陣が描かれ始めた。

シャン・・・。
シャン、シャン・・。

トン!と錫杖が床に打ち付けられると光がブワっ!!と部屋を包み込み

――転移――

「おー。転移は久々だ。」
「フッ・・。」
張さんは俺の顔を見て笑う。
もう、錫杖は消えているし。俺もその異能は欲しいものだ。

コロン・ビア共和国の此処は国境付近の山林だった。
方角的には・・・。危険察知能力で上空から周りを確認。

相変わらず国境付近の警備は警察官だらけだ。

「政府異能者は近くには居ない様だな。」
「そうだね。それだけが救い。」

行こうか。と2人で山を降りる。
細心の注意を払いながら。

木々の間から国境を眺める。

「少し待つか?」
「そうだな。多すぎる。」

国境は2メートルちょっとくらいの金網に有刺鉄線が張られていて公的に入れる扉は1箇所。
勿論、異能者が護っている。

金網付近にも此方を見ている警察官が10メートル間隔くらいに立っていた。

まあ、此方には全然気づいていないのが救い。

「やっぱり西アン・デス四方の国境って全部こんな感じ?」
絶対、来た事がありそうな張さん。
「そうだな。此処は1番まし。」
だろうねぇ。

張さんは世界中の国を制覇したがっていると聞いた。
政府管轄国以外はほぼコンプリートな筈。

無言で待ち続けた。
チャンスは必ずある。
最悪、俺が囮になるかなあ。

「ボス。チャンス到来。見て。」
張さんが遠くの空を指した。

おっ。これは夕立くるなあ。

「1歩でもその国に立てば良いんだよな?」
「そう。本当は国を見て回りたいけどなあ。興味あるし。」
そりゃそうだろうな。

「今日は1歩だけ。1回来たらまた来られるじゃん?」
「まあな。」

空は雲に覆われて来た。

ポツ・・・

ポツリ・・・

雨が降り出した。

未だに警官達は国境にまだ居る。もう少し。

ドドーン!!と遠くに落雷が落ちた。

「良し!行動開始!」
張さんと少しづつ国境に近づく。

ドドドドーン!!!今度はもっと近くに。
そして大雨が。

警察官達の数はまだ減らないが。

雨の中、見つからない様に高速で木の陰に隠れながら移動する。

間もなくだ。

国境まで数メートル。

ドーーーーーン!!!強烈な音を立てて国境横に生えていた大木に雷が落ちた。

勢いよく燃え出す大木に警察官が集まった。

おめでとう。俺達って本当にツイてる!

「大木とは逆側の金網に!」
張さんと走る。

そこには見張りは居ない。

俺達は勢いつけて金網を飛び越えた。

西アン・デス入国。

フフっ。思わずニヤつく。
横の張さんも。

「戻るか。」
「了解ボス。」

ミッションコンプリート。
大木が雨で消火される頃には俺達は元の山林に戻っていた。

「流石、ツイてる男だなあ。」
張さんがケラケラと笑う。

「まあねー。」

俺はウェンが自分への好意がオーラで見える程度の戦闘とは無関係なあまり使えない異能がある。

幸運ラック体質とでも言うのかな。
発動条件は不定期。

「戻るか。」
「おぅ!」

――転移――


そして、駆除屋の元締めの部屋に帰って来た。
「ありがとうな。張さん。」
「俺も行きたかったからなあ。」
張さんはニヤニヤと満足そうに笑った。

「後は地図見て遺跡の位置を特定して転移魔法陣を作らないとなあ。」

張さんは緯度と経度で転移先を決める。

「世間の地図は曖昧だからアルージャに詳しい地図を添付してメールする様に伝えてくれ。」

「それは勿論。」

では、実行日が決まったら宜しく頼むとお願いして駆除屋を出た。

さあ、後はマフィア次第だな。

楽しみになってきた。
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