都合のいい男

美浪

文字の大きさ
上 下
37 / 180
ボディーガードミッション

送り届ける

しおりを挟む
結局、おにぎり2個にパンを食べ、お茶に牛乳も飲んだ。
「はぁ。」
溜息。でも、確かに食べたら使った異能が回復してきているのが解る。
四神を出した訳でも無いしこの前より回復は早そうだ。

「ミナキ。俺も食うから運転交代して。」
まじっすか。
あー。もう全て最初から仕組まれていたのかも。運転出来るか聞いたのもそうか。

絶対、晩飯は高級料理!!
ハザードランプを点滅させて車を停止させてボスと運転を交代した。

人生初の左ハンドル。しかも俺は初心者。
舗装されている山道の坂道をゆっくり降る。
感覚が違い過ぎる!!
「ミナキ・・。運転苦手?」
パンにかぶりつきながらボスが笑う。
「だーかーらー。初めてなんですよ!こんな高級車も運転した事無いし!」
車は軽自動車!通勤は電車だし。休みの日しか運転しない。自動車学校以来の普通車。外車だし。言い訳だらけだけど。
やっぱり下手だよな。
ボス笑い過ぎ!

必死で運転する。
左右の感覚が何とか慣れてきた。

山を降り一般道に入った。

「こいつがラストかな?」
ボスがバックミラーで確認している。

「え?まだ敵?!」
もう勘弁して欲しい。

「本当に私達の存在を消したいんですね。」
シンシアさんは苦渋の表情と声でギュッとフランツ君の肩を抱いた。

「そもそも跡継ぎを放棄とか出来ないんですか?」
法律が違うのだろうか?
「本妻の子供は女の子なんです。それで法律上の問題が・・。」
シンシアさんはそう言った。
あまり深く話しすると俺が異世界人ってバレるしな。
男子優先の跡継ぎなのかなあ。

「運転交代しないんですか?」
呑気なボスに話しかける。

「止まらない方が良いよ?」
「了解です。」
仕方ない。後2時間弱か。

敵は一般道では何もしない。
次の戦闘はもっと車のいない所かな。

ボスに指示されながら道を進む。
1時間、市街地や民家を抜ける迄は本当に何も無かった。

だんだんと家が疎らになり車も減って来た。
あれか・・。バックミラーを確認すると俺でも解る。シアンの乗っている車の後ろにピッタリとくっ付いて走る黒の車。

「俺達が向かっているのは国境警備の緩い高速ゲートだ。国民カードを機械に通すだけでジ・パングに入国出来る。」
ボスがそう言った。まだ高速道路らしきものは見当たらない。

「そろそろ準備しますね。」
全く、運転しながら結界張るとか神経使う。でも、やらなきゃ殺られる。

「ミナキ、成長したね。それで良い。」
ボスが嬉しそうなのだが本当にこの人って能天気と言うか、うーん?それだけ自信があるんだろう。

海外らしいと言うか何も無い平野。
見通しが良い。

「ボス!何か居ます!!」
200メートル程くらい先。道路の真ん中に突っ立っている人。
明らかに可笑しい。

「ミナキ!シアンの車まで広範囲に結界を張れ!!」
ボスが大声で叫んだ。

広範囲?!
――結界都合のいい男――

結界を大きく広げシアンの車まで。やっぱりシアンは仲間だからなのか結界を広げても強度が落ちない。

「ブレーキ!!!」
え?!ボスに命じられるままにブレーキをかける。

シアンの乗っている車も急ブレーキをかけて止まった。
ガシャン!!と結界に激しくぶつかる後方の追跡車。
俺にも多少の衝撃はあったが結界は無事だ。追跡車のボンネットはグチャっと潰れてエアバッグが開いていた。

「え?これが狙いで?」
まさかの結界による車の破壊とか?
「来るぞ!!構えろー!」
ボスがまた叫ぶ。


その瞬間。

竜巻!?!!

あの道路に立っていた怪しい奴の異能?

ものすごい突風とゴゴゴゴゴと言う地鳴りの様な音。

これはヤバいな。
また冷静な自分が居る。

「護れ!青龍、白虎、朱雀、玄武!」

――四神結界――

四神が命令を聞く・・。

四神の柱はスクエアに俺達とシアンの車を護る様に立った。

周りのゴミや枯葉や様々な物を巻き上げながら竜巻は近づくが結界にぶち当たり消滅した。

「合格だ。」
ボスはそう言って俺の肩をポンと叩き外へ出た。
シアンも車を降りて2人は竜巻を放った異能者の元へ歩いて行く。

「合格って・・。もう!!」
振り回されまくりだよ。
でも、四神が発動してくれた。本当に俺は成長したのかもしれない。

ボスとシアンはいたぶる様に竜巻を起こした異能者とバトルしている。
あんな事が出来る異能者だから強い筈なのだが。
ふとバックミラーを見ると後方の追尾していた車を運転していた男が俺の四神結界に当たって弾かれてぶっ倒れていた。
入ろうとしたんだろうなあ。
そんな風に見れる自分・・。変わったな。
すっかりこの世界の人間になってしまっている。価値観とか。

ボスはシアンに最後は譲り止めを刺させていた。
仲良い。やっぱり。あの日のボスの発言は聞き間違いでは無かったのかもしれない。
後で聞いてみるか。
今日はいっぱい策略に嵌められたしそのくらい聞いてみる権利くらいあるだろう。

「やー!お疲れ様!終わったねー。」
満足そうにボスは車に乗り込んで来た。

シアンはニヤりと笑いながら後ろの車に乗り込む。

「本当に疲れましたよ。」
溜息をついて車を発車する。

暫く走るとまたポツポツと家が見えてきて高速らしき入口。
「はい。そこだよ。」
言われるがまま走らせる。
車、結構多い。ジ・パングへ行く高速は渋滞はしていなかったが一定量の車が走っていた。

「ありがとうございました。」
シンシアさんとフランツ君は安心した様に笑顔でお礼を言ってくれた。

「いえいえ。お気になさらず。」
ボスはクールそうな笑みを浮かべる。
本当に高速出口は俺の国民カードで支払いもせずに入国出来た。
ハーミット様の技術が凄いよ。偽造なのに。

無事にジ・パングに入国。
まだ郊外だが雰囲気が見た事ある感じ。何か日本に似ている。

そこから10分程車を走らせる。
そして指定された家の前で車を停めた。なかなか豪邸だ。セキュリティもしっかりしているし門もある。
「此処で良いんですか?」
まだ市街地では無いけれど高級住宅地って感じの場所だった。
後方のシアンが乗っていた車からリモコン操作されたのか門が開く。
中に入り車を駐車させた。

「本当にありがとうございました。」
「お兄ちゃんありがとうございました!」
シンシアさんとフランツ君は改めてお礼を言われて車を降りる。

「さあ、降りて向こうの車に乗るぞ。」
ボスに言われてそうだこの車はカプリスのじゃないと思い出す。
ボケてるな俺。

「では。無事送り届けましたので。残りの報酬は振り込みお願いしますね。」
シアンも車を降りて来てシンシアさんに挨拶と言うか振り込みのお願いをした。

「ミッションコンプリート。行こうか。」
2人に促されてシンシアさん、フランツ君、運転手さんに別れを告げて車に乗り込んだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...