都合のいい男

美浪

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Caprice(カプリス)

ウェン・ムーン

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「ウェン。本当に気に入ったんだなあ?」
ラズがまだ笑いながらそう言った。

「まあね。」
自分の異能との相性が抜群。
普段は体術を極めているので戦闘に困る事は無い。
しかし、せっかくの一撃必殺の異能があるのにそれを発動するのには少々時間がかかるデメリットがあり普段は宝の持ち腐れ。
俺の異能は1体1に向いて居ない。誰かの戦闘中に溜めるしかない。
しかし、それが使い放題となる。これ程望んだ異能者との出会いが嬉しい。

「俺の専属にしたい。」

「そうだろうなあ。アルージャが会いに行った時にシアンがミナキを獲物って言ってたらしい。奴なら殺りかねない。」
ウェンが付いていたら安心だろうとラズは言った。
シアンか。俺は奴を信用していない。カプリスに入れたのもボスの気まぐれだし。
殺人鬼は俺よりも自己中心的。
シアンは半年前にマフィアに雇われて俺達と戦闘となった。
ボスとの1体1の戦いは引き分け。奴はマフィアより此方が面白いと雇っていたマフィアを裏切りカプリスに付いた。
奴はやはり信用に値しない。
「晩飯何がある?」
ラズは立ち上がって台所へ向かったが
「カップ麺。」
だろうな。そう言ってお湯を沸かし始めた。

「あの。着替えありがとうございます。」
俺のTシャツとハーフパンツを履いてミナキが風呂から上がってきた。
「洗濯機かけて。」
そう言うとパタパタとまた脱衣場に向かっていく。
服持ってないなら俺の服もう少しやった方が良いかな。身長少し小さいくらいだし。

「あのぉ。カプリスの皆さんってその戦闘時って普段着なんですか?それとも何かスーツとか揃えているんですか?」
ミナキがそう聞いてきたのを
「俺は軍服!!」
とラズが答えていた。
「ウェンは武闘着だなあ。アルージャは黒服に黒マントだし、ジハードはスーツ。何だかんだで拘りあるなあ。」
うんうん。俺もラズの意見に頷く。

「俺はどうしよう。」

「これは自分の趣味と動きやすさだな。」
「なるほど。悩みます。ラズ様とウェン様の戦闘時の格好早く見てみたいなあ。」

ミナキ、なかなか様付けが取れない。シアンは呼び捨てなのに。
ちょっとムカつく。

「様付け。取れないなら飯抜き。」
「えぇぇー!!」
また叫ぶしラズは爆笑。俺は本気。


         ・・・・・・・・・・・・・

「うう。呼び捨てか。」
恥ずかしいと言うか照れると言うか。
でも、お腹空いたし。何かラズ様はカップ麺食べてて美味そう。

「ウェン。ラズ。ご飯食べたいです。」
恥ずかしーい!思わず顔を覆う。

「おー!言えた!良し良し。食えよ!」
ラズ・・。ラズがそう言ってくれた。思考中も頑張って呼び捨てにしないと直ぐに様付けそう。

「来て。」
ウェン様。いや、ウェンに呼ばれて台所へ。
うん。沢山カップ麺。何時もこう言う食事なのか。それでどうしてあんな筋肉が?
タンパク質だけ生活とかじゃないんだなあ。
そう言えば字が読めない事に気がついた。

「あの。字が読めない。」
カップ麺何味か解らない。アルファベットに似てるけどちょっと違う。
「そうか。脳内チップが入ってないとそうなのか。」
ウェンは塩ラーメンと焼きそばを勧めてくれた。食べ物はこの世界本当に最高だな。
焼きそばをチョイス。
作り方は同じ。ソースの香りが食を唆られる。

ウェンも一緒に焼きそば。
何か幸せ。

「あっ。向こうの世界と味が変わらない。美味しい。」
本当に美味いし。

「食の好みが異世界も変わらないってのは楽だな。」
ラズはもう一個食うと言って台所へ向かった。

「今日、ベッド使っていいから。」
焼きそば食べてたら突然、ウェンがそう言った。
「いやいやいやいや。俺、床で寝ます!」
「俺はゲームするから。」
ん?テレビの方を見ると何か知らないゲーム機本体が繋がっていた。
え?まじか。
ちょっと意外だった。やるんだ?ゲームとか。
「俺もやりたいです!」
その発言が予想外だったのかウェンは目をパチパチっとさせて食べたらやろうか?と言ってくれた。

「良かったじゃねーか。こいつめちゃくちゃゲーマーだから眠くなったらちゃんと寝ろよ。」
ラズが笑いながら俺は食ったら帰ると言っている。
もう少しラズにも居て欲しかったけどゲームしていたら場は持つかな。良かった趣味が合う。

ラズがおやすみー!と自室に戻った後で2人でテレビの前に座る。
「何やる?」
ソフト沢山。てか、ミッション中も自宅から持参しているのか?そう思うと可愛いすぎる一面を見た気がして益々萌える。
「お勧めは?対戦系あります?」
「今、ハマり中。格闘ゲーム。」
そう言って格ゲーをウェンは起動させた。
説明書読んでも字が読めないけど技の出し方とかは異世界共通。下→斜め下→右→赤ボタン。等など。
行けそう。
共通語では無いがこの世界、英語もあるらしい。

試しにウェンが1人プレイでやって見せてくれた。
強いな。やり込んでる感がある。

「じゃ、対戦!!」
格ゲー久々だけど俺もゲーマーで結構色々やり込んでるから大丈夫。

「げっ。投げ技もあるのか!」
しかもゲージ減るなー!
ここは距離を取って。
カチャカチャとコントローラーの音とゲームの音楽だけの空間。
ウェンとの距離は20センチ。

「なかなか上手い。」
負けたけど。

楽しい。普通に楽しい。ゲームに集中している間はウェンの顔を見なくて済むし。
見るとやっぱりドキドキする。

「おー!初勝利!」
「やるね。」
ニヤっと笑うウェンの顔をチラ見でキュンキュンする。

本当にカッコいい。

「お前、本当にゲーム得意だな?」
「うん。好き。色々やってた。」
ウェンは表情は変わらないけれど嬉しそうって言うのが至近距離だからか伝わる。

そして多分、夜中の2時を回った頃に俺は限界を迎えて寝落ちした。
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