都合のいい男

美浪

文字の大きさ
上 下
5 / 180
1週間

好きってなんだい?

しおりを挟む
舌が絡む。本当に快楽に押されそうになってきた。キスってこんなに気持ち良いの?
ダメだ!本当に!!
「ちょっと本当に・・。やめてくれ!」
必死でシアンを引き離した。

「異能発動しないね?本気でやってる?」
ニヤリと笑いながら俺の頬を撫でる。

「うぅ。やってます。」
自分の顔が赤く染まっているのを感じる。
やっぱり人を護る時にしか発動しないのかな。
それともキスされるのが嫌じゃないのか。

ダメだ。解らない。

「シアンはその・・・。俺が好きなの?」
まだ全然、俺はこの人に愛情とか持てないんだけど。きちんと考えないといけないとは思う。

「好きってなんだい?」
欲情や発情とは違うの?と聞かれて。
怒りが込み上げてきた。

「好きじゃないならもう絶対しない!!キスもエッチもしない!バカ!」
ムカつくと語彙力が無くなるなと思ったがそんな子供みたいなセリフを吐き捨てて立ち上がってリビングのテーブルへ移動した。

自分のバッグを開けてお茶を取り出してがぶ飲み。
あー!ムカつく!せめて一目惚れしたとか言うなら可愛げあるのに。


「うーん?何故怒っているのかさっぱり解らない。」
シアンはソファに座ったまま腕組みして首を捻っている。
あぁ。俺はこんな奴にやられたのか。全然記憶に無いけれど。
ショックだ・・・。
ペットボトルをダンっ!と怒り任せにテーブルに置きシアンの顔を睨みつけた。

「はぁ。」
もう溜息しか出ない。全然こいつ解っていないみたいだし。


あれ・・・。眠い。えっ?突然?
本当に1週間は殆ど寝てるとかシアンが言っていたけれどこんなに我慢出来ないものなの?
足から崩れるように床に倒れて・・・。
Zzzz・・・・。


         ・・・・・・・・・・・・・・・


「おーい!また寝た?」
やれやれ。世話が焼ける異世界人だ。

床に倒れたナナシは寝息を立てて本当に寝ている。
「活動時間の限界は連続2~3時間?って所かな。」
抱えてベッドに運ぶ。

キスの後の続きが出来るかと期待したのだが何やら怒るし。理解不能。

性欲?欲情?発情?と何が違うと言うんだ?
したいからするではダメなのだろうか。

そもそも殺人以外に性欲が湧く事が自分の中では人生初なのだが。

まあ、良い。
ちょっと気になる事もあったから寝てくれた方が助かる。

携帯っと。
おっ。駆除人からだ。

―遺体処理完了。支払い宜しく―

メールが来ていた。相変わらず仕事が早くて助かる。


要件はメンバーにあった。

「もしもし。シアンだが。寝てた?」
電話の相手はCapriceカプリスのメンバーの1人ハーミット。

「何?」
彼も俺と同じ様なタイプの人種で殺人好きのドS傾向があって勝手に気が合うと思っているのだがイマイチ好かれていない。

「今、匿っているナナシの事なんだけど。調べて欲しい事がある。」

「で?」
警察管轄の異能者が話していた事を話す。
確かに異世界人が召喚される情報は無いと言っていた。

「ボスの命令に逆らって殺し?」
冷たく言い放つハーミット。

「それは理解されての勧誘だった筈だよ?取り敢えずハッキングして欲しい。」
彼の異能を組み合わせたハッカー能力は本当に素晴らしい。
本当に召喚された異世界人で無ければ政府も捜していないだろうから今後、メンバーに引き込んでもリスクが無い。
そう言う説得をして電話を切る。

末端の警察だったから知らなかっただけかもしれないが。


ナナシ、良く寝てる。
自分もベッドに入った。隣に寝ても起きもしない。無防備過ぎる。

可愛い。

あぁ。そう言う言葉が似合う。
「早く君の名前を知りたい。」
スヤスヤと眠るナナシの髪を撫でてみた。
本当に起きない。
そっとキスをする。犯したいそんな衝動も起きるがどうせなら起きている時にじっくりと。ペロっと舌なめずりをして横になる。

少し寝るか。

2時間後。電話の音で目が覚めた。
「早いね?もう終わったの?」
ハーミットからだった。

「家の前に居る。開けろ。」
へー?珍しい。
気配を確認して初めて居るのが解った。
流石、Capriceカプリスのメンバーだ。

扉を開けると彼の姿があった。

「その様子だと俺の予想が当たった?」
「政府はここ最近は誰も召喚していない。勿論、捜索司令も出ていなかった。」

大当たり。野良異世界人確定だ。

「何か飲むかい?」
ハーミットに尋ねると珈琲。そう言って椅子に座った。

「寝てるのか?」
ベッドのナナシを見てハーミットは苦笑する。

「珍しいねぇ。わざわざ家に来るとは。」
実際に彼は俺に対してフレンドリーさの欠片も無い。俺もメンバーと馴れ合う気は無いが。

様子見に行けと命令されたって所だな。

「俺は自分のハッキング能力を信じている。どんな極秘情報も手に入るし。この男が召喚されていない異世界人なのは確定した。」
なるほど。
珈琲を飲みながらハーミットは満足そうにニヤリと笑った。

「お前?さっき2人殺したと言ったが?3?いや4人殺ってるな?」
鋭いねぇ。

「風呂入ってないだろ?血の匂いする。」
「バレたか。」
仕方ない。シャワー浴びるか。

「見張り頼むね。起きないと思うけど。」
ナナシを殺りに来た訳では無いとは思うが一応警戒しておく必要があるな。

「見張り?まだ2~3日は赤子並に寝る筈だ。多分起きない。」
ハーミットは珈琲を啜りながら勝手にテレビを付けた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...