都合のいい男

美浪

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1週間

困ったね?

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グルるるる。ドキドキもムードもぶっ壊す腹の音。
「プッあはははは!ずっと寝ていて食事もしていないからか。」
奴が飯でも食べるか?と言うので素直に頷いた。

「何処くらい寝てたの?」
服を着ながら尋ねた。漸く服が着られる。裸体を晒すのは恥ずかし過ぎる。

「今、23時」
夜?この世界に来たのは午前中だったから10時間以上寝てたのか。

「異世界人は1週間は死ぬ程寝るらしい。」
そう言って奴はキッチンに向かう。
冷蔵庫も電子レンジもある。そう言う所は同じなんだな。家の作りとかも。違うのは治安や異能者が居ることくらい?

しかし、殺人鬼が想像していたより優しい。
まだ信用はしていないけれど。それは多分お互い様か。

チンと電子レンジの音がして食べな。とピザが出された。
まともなご飯だー!
「座れ。」
そう言われ大人しく椅子に座る。
「いただきます。」
熱々のピザの味は日本と変わらない。美味い。
奴は俺の前に座り見詰めてくる。

「何故?俺を名前で呼ばない?」

「何故って。偽名じゃないの?他の人も教えてくれなかったし。」
奴はクスクス笑いながら本名だよ?と言った。

「疑われるなんて心外だなあ。」
いや、貴方も疑っている癖にとは言えない。仕方ない。名前の件は信じるか。

見詰められると食べづらい。
あんな事しておいて何でこいつは平気な顔しているんだろう。



「困ったね?」
シアンの顔が急に冷酷な表情になった。

「何?」
その表情はやっぱり怖い。俺、何かした?いちいちビビる。

「割と近いな。警察管轄の異能者だ。」
シアンは目を閉じて確認する様に黙った。

「2人か。」
開いた目は殺人鬼そのもの。だがまだシアンは殺気は放っていない。
「どうしたら良い?」
一通り食べて腹も満たされたし俺も役に立つかも・・しれない。

「ナナシの異能はなんだ?」
そう聞かれて
「結界。でも、さっきシアンに襲われた時は発動しなかった。」
貞操守れなかった・・・。

「なるほど。それはやりたかったんだろう。」
こんな時にニヤリとイヤらしい笑いを浮かべるシアンにぐうの音も出ない。
それは本当にそうなのかも・・。とさえ思えてきた。


ビクッと身体が反応する。
殺気を感じた。外からだ。距離、結構近い。
シアンは既にこれを感じ取って居たのか。
殺気を感じられるこの身体にも驚かされる。
これからこれが日常になるのか。

「覚悟を決めろ。殺るぞ?」
「家がバレても大丈夫なの!?」
それが1番心配。

策はあるさ。そう言って2階へ上がる様に言った。この家、平屋じゃなかったのか。
まだ家の中散策もしてないし。知らなかった。

「まだ見付からない範囲だから大丈夫。気配は消せ!」
シアンは窓を開けて行くぞと隣の家の屋根に飛び移る。
俺に来いと?!
あー!やるしかないのか!!せめてスニーカー履きたいよ!!
飛び移る。行けた!サンダルでも飛べた。やっぱり運動能力が格段に上がっている。

「急げ!」
促されるままにシアンに着いて屋根にまた飛び移る。パルクールなんて初めてだ。
出来る事にも驚きだが気持ち良い。飛んでいる様にさえ感じる。

家からだいぶ離れた公園に降りたった。
「呼ぶぞ?」
ゾクゾクと鳥肌が立つ。目の前のシアンの殺気だ。怖い。
警察の放ってた殺気なんてものじゃない。

そして殺気に誘われる様に警察管轄異能者が現れた。スーツ姿の外国人だ。

「殺人鬼シアンか。今度はこの街に来たのか。」
「この匂い。異世界人!?」
警察2人は俺とシアンを見る。

「新しい異世界人の召喚の連絡は来てないぞ?」
「余計な事は喋るな!」
何やら2人で焦っている様に見える。

「捕まえて政府に差し出せば大手柄だ。」
何やら俺を捕まえるとか言われている。

そんな2人を苦笑しながらシアンはバカだねぇ。此処で死ぬのにと呟いた。

大丈夫なのかな。シアン強そうだし。
俺も戦わなきゃ。

警察2人が攻撃を仕掛けてきた。
いける。野獣より遅い。
殴りかかってきた拳を避ける。結局、避けてばかりなのだが。
多分、相手もこちらの異能を待っている。牽制し合っている気がする。

シアンも拘束使っていないし。

その時だった。痺れを切らした様にシアンと対峙して居た警察官の手が炎に包まれる。
炎の異能?

こちらにまで熱が伝わる。
「異世界人は殺すなよ。シアンは俺が仕留める!」
警察官は炎を繰り出しながらシアンに詰め寄る。

これはヤバいだろ!!?
炎と言うより業火だ。
警察官から放たれた業火が襲いかかる。

「シアン!!」
そして俺の身体は勝手に動きシアンの前に出て庇う様に・・・。

――結界――

無意識に身体も動き異能も発動した感じがした。シアンと俺を護る様に張られた壁状の結界は易々と業火を跳ね返す。

「ぐあぁぁぁ!!」
業火は警察官を炎に包み込む。

「へえ?やるねぇ。でも、このくらいの炎じゃ死なないから大丈夫なのに。」
シアンはニヤっと笑ってスっと俺の目の前から消えた。

え?

早い!!俺と対峙していた警察官の後ろに既に回り込み警察官は何の抵抗も出来ずに倒れた。

ウゲッ!何した?出血して倒れているし。

「さて、トドメ刺さなきゃね。」
自分の火で焼かれて居た警察官へ向かいシアンは殺した。
早すぎて見えなかった。多分、刺したんだよな・・。

「弱かったね。異世界人じゃ無かったし。ピアス無かったし。巡査レベルかな?」
倒れた警察官を見てシアンはフフっと笑う。
やっぱりこいつ殺人鬼ってのは本当だ。
確かに荒野でお試しに戦った野獣に比べたらスピードも遅かったし弱かったよなあ。野獣も多分手を抜いていたんだろうしそれを思うと弱かったかも。

「この遺体どうするの?」
こんな遺体が発見されたら捜査が始まってまた今日みたいな事が起きそう。

シアンは携帯?を取り出し何やらメール?をしている。やっぱりこの世界も携帯電話あるのか。
「駆除人に頼んだから。こう言うのを無かった事にしてくれるプロ。」
そう言って帰るよ?と言った。

「駆除人?」
そうそう。遺体処理のプロ。シアンはそう言ってまた屋根に登る。
そんな奴らも居るのか。

屋根を飛び越えシアンの家に帰ってきた。

「家、広かったんだなあ。」
2階のこの部屋は何も家具が無いけれど。
フフっとシアンは笑いリビングへ。俺も窓を閉めて素直について行く。

シアンはドカッとソファに腰掛けて隣に座る様にソファをポンポンと叩いた。
うっ・・・。ちょっと躊躇して間を開けて座る。
「いやー。君の異能が見られて良かった。」
「うん。取り敢えず何か出来たね。」
シアンは考え込むように黙った。

「多分、君の異能は人を護る時にしか発動しない?んじゃないかな?」
「え?まじですか?」

確かに1度目と2度目の結界発動は確かに誰かが居てそれを護ろうとして発動したかも。

「試して見ようか?結界発動してみせて。」
シアンの顔が近づいてくる。
「ほら?発動しないとまた襲われるよ?」

「わー!待って!!結界!結界!」
叫ぶ俺の唇は塞がれた。
掴まれた腕の力強い。

「あっ・・。本当にやめて・・。」
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