都合のいい男

美浪

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殺人鬼との同居生活の始まり

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廃ビルを出た瞬間だったと思う。
「おやすみ。」
そう聞こえた。首に鈍痛。意識が遠のく。

「良いねぇ。異世界人か。何て美味しそう。はは。」
匿うと言ってくれた男のニヤリとした顔と発言が脳裏に焼き付いて倒れた。


「痛え。」
目が覚めると知らない天井が見えた。

「お目覚めかな?」
ソファに寝かせられていた様で首を押さえて起き上がる。手刀?を食らったのか?気絶させられていた様だ。

「何でこんな事を。」
椅子に座って此方をニヤニヤと見詰める男に問いかける。

「家。バレる訳にはいかないからね?」
まあ、最もな事ではあるけれど。兎に角、俺には全て秘密なんだろう。

「さて。ナナシ君、自己紹介するよ。俺はシアン。職業は殺人鬼。」
クスクスとシアンと言う男は笑う。

殺人鬼?!
「そう。殺人鬼。趣味みたいなものかな?」

何かもう頭が全然追いつかない。殺人鬼に盗みや殺しの職業?
何て奴らに声を掛けてしまったんだろう。
シアンか。どうせ偽名だろうし。

「可愛いねぇ。顔が引き攣って困惑しきっているよ?」
シアンはニヤニヤと笑う。
イケメンだけど怖いと感じたのは自分自身の勘だったのかも知れない。
正直、この人から醸し出す何かが怖い。

家は広い。一軒家なのかな。今、いるのはリビングダイニングルームっぽい。逃げるか?玄関は何処だろう。
でも、逃げて何処へ行く?困惑でモヤモヤする。

「さっき、ボスに何て言われたでしょう?聞こえた?」
そう言われて翻訳機にノイズが走り聞き取れなかった事を思い出して黙る。

「フフ。あれはボスの異能。電波妨害。」
「電波妨害?」
首を傾げ訝しげな顔でシアンを見る。

「ボスの異能は翻訳機能等を無効にする。他にも彼は異能があるんだよねー。流石、ボスって感じ?」
ヘラヘラとシアンは笑いながら此方を小馬鹿にした様に見詰める。
「で?ボスは何を言っていたんだ?」
イラつきながら尋ねる。

「好きにして良いってさ。」
シアンは立ち上がって此方へ向かっ来た。

「好きに?」
ヤバい。殺せってこと?
圧が凄い。立ち上がれない。動けない。
ブルっと身体が震える。
シアンが横に腰掛けてきた。

「可愛いなあ。堪らない。」
シアンの右手がグッと僕の首を軽くだが絞める。
「くっ。離せ!」
漸く動く様になった身体を捻り抜け出そうとする。
「嫌だ。」
シアンはニヤリと笑い俺の唇に・・・。

キス?

唇を塞がれる。強引に舌が割って入ってくる。
何時の間にか体は引き寄せられ強く抱き締められていた。
「ん・・。やっやめて。」
引き離そうにも力が強い。

「くっっ!!」
ガリっとシアンの唇を噛む。
はぁはぁ。シアンの拘束が緩み立ち上がる。
でも、キスの破壊力が凄くてちょっと足元がフラついた。

「もう。可愛いなあ。」
シアンは唇の血をペロリと舐めとる。

「俺はね。殺人にしか興奮しないんだ?戦闘時と殺す時。でも、何故だろう君には凄く興奮する。」
何を言っているんだ!こいつ!
逃げなきゃ!

兎に角、部屋を出て。

「だーかーらー。逃がさないよ?」

えっ?!!
手足が縛られる感触がしてそのまま無防備に倒れる。
「痛ったい!何で?!」
何時の間にか腕と足に縄が。縛られている。
「何で縄?!クソ!解けない!」

シアンはゆっくりと近付いて来た。
「やっぱり縄が見えるんだね。異能者にしかその縄は見えないんだよね。これは俺の能力。拘束。」
そう言ってシアンは俺を抱き抱えた。藻掻くけれどダメだ。力の差があり過ぎる。

ドサリとベッドの上に放り投げられた。
まさか?そういう事?

冷や汗が背中を傳う。
確かに俺は男性が好きかもしれない。

この男の事もカッコいいと思った。

でも、でも!会ったばかりの男と?まだ恋愛感情も無いのに?

「何するんだよ!!」
クソ!さっきの俺の異能。そう結界?バリア?どうやったら発動出来るんだ!?

「何する?そりゃあ勿論。君を食う。」
美味しそうだなあとシアンはニヤリとまた微笑み舌なめずりをする。

「食べても美味しくない・・から。」
声が震える。
「そんなのは俺が決める。」

両手両足縛られた状態で腹筋で起き上がる。
縄切れない。
結界!俺を守れ!守れよ!

何故発動しない!!!!

「仕方ないベッドに縛りつけるか。」
こいつの異能は自由自在に発動している。そして俺の腕と足はベッドに縛り付けられ本当に動けなくなってしまった。

「やめて・・くれ。」
首筋へのキスと吐息に身体が震える。

「そうか。脱がすと君の言葉解らなくなるなあ。でも。それも乙だなあ。」
パーカーのファスナーが下ろされて脱がされる。
シャツのボタンも外され俺のピンマイク型の翻訳機も外された。

「何で?本当にやめてくれ。」
この殺人鬼は本当に俺に欲情しているのか?
殺しじゃなくて?

「悪いけど。何て言っているか解らないから。綺麗な肌だ。」

俺の上半身をそっと撫でる。その目は本当に興奮していて。 
奴も着ていた服を脱いだ。
その身体は彫刻のように筋肉が付いていて逆三角形の美しい肉体だった。
「もう噛むなよ?」
唇が重なる。

舌が絡まり頭がぼーっとしてきた。
嫌なのに身体が反応する。

「嫌・・だ。」
首を横に逸らす。こんな事しか抵抗出来ない。

「嬉しいなあ。君の身体は正直だ。」
服の上から下半身を撫でられる。
うっ・・・。

「触るな・・って。あっ・・・。」
「言葉が解らないならなあ。直接触って欲しいのかな?」

兎に角、必死で悶えて暴れた。
奴はクスクス笑いながら俺のベルトに手をかけた。
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