フードコートの天使

美浪

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話すと決めたから feat.ジュン

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俺が話す間のアキラさんの顔は苦渋に満ちて居た。嫌な思いさせてる。でも、俺の中でもまだ笑い話に出来る程は割り切れていなくて。

「全部、削除した後。テキーラ飲まされて。頭はグルグル。どうやって家に帰ったかも覚えていない。ヒロさんの言いなりなってしまって本当にごめんなさい。」
黒歴史はそうして幕を閉じたんだった。

沈黙の後。アキラさんが口を開いた。
「ごめん!!俺が全て悪かった。」
アキラさんは誰を責める訳でも無く俺に頭を下げた。

「違うって!俺が弱かったから。言いなりになったから。アキラさんは全然悪くない!」
でも、俺、自分も悪いけど。頭のどっかで本当は元彼が異常だったって思っていた。

だけど、アキラさんは責めなかった。

それが少しだけ。嫉妬の混じった感じの感覚で少し悔しかった。
俺、アイツのせいだったって言って欲しかったんだ。

良いな・・・。元でも彼氏だったんだなんて。アキラさんの人生に食い込めた男が羨ましくて何か色んな思いが込み上げて来てしまって涙が潤む。

「ジュン。ごめん。泣かないでくれよ。ね?」
アキラさんは優しい。

優しいけど俺じゃ恋愛対象にならない?

ねえ。漫画みたいにさ。ここは押し倒す所じゃないの?
ゲイだって知ってたって言ってんのに。

俺は・・・。俺は魅力無い?

「ねぇ。俺じゃダメ・・?」
何、言ってんだ。
アホや。

アキラさんは無言で俺の頬を伝う涙を拭ってくれた。

「ジュン?それは・・。俺の都合の良い解釈だと。その。ね?」
真剣な顔で見詰めた後、ギュっと抱き締めて来た。

「こう言う事なんだけど。」
ボソッと耳元で呟かれた。

アキラさんの腕に包まれて顔が赤くなるのが解った。
幸せで温かくてずっと望んでた事。

「嫌じゃない?」
アキラさんは不安そうにそう聞いた。
「嫌じゃない。嬉しい。」

抱き締められていた腕にグッと力が入った。
「俺じゃダメじゃなくて・・・。ジュンじゃないとダメ。ジュンが良い。」
スっと髪を撫でられる。

うわっ・・・。それはつまり?

りっ・・・両思いって事!??

俺達、凄く遠い遠い回り道した。
でも、やっと辿り着いた。

「アキラさん。俺も・・。アキラさんじゃなきゃダメ。」

そっとアキラさんの背中に手を回した。

好き。好き。大好き。

心の中が満たされるとまた涙って溢れるんだ。

「ジュン。俺も・・幸せで泣きそう。」
泣きそうじゃなくてもう泣いてるやん。

「アキラさんにやっと・・・言えた。グスッ・・・。」
「うっ・・・うん。好き・・だ。」
泣きながら抱き合うって経験が今迄無かったけれど。
本当に心が満たされて幸せで。

気持ちが通じると言う事が胸を熱くして何時までもこうしていたいと思えた。

でも・・・。

ピリリリリ・・・着信・・・アリ。

アキラさんの携帯が鳴った。

「ごっ・・・ごめん。げっ。店からだ。」
アキラさんは鼻を啜って声をうっうんと整えてから電話に出た。
「お疲れ様です。西山です。え?・・・・・・壊れた?動かない?あー。」
トラブル発生みたい。

「はいはい。モーターだな。えーと。それなら修理経験あるから。今から行きます。暫くメニュー止めて・・・。」

めちゃくちゃトラブルみたいだな。

電話を切った後、大きく溜息をついて。
「ジュン。ごめん。パン焼く機械が止まったようなので店に行ってくるよ。」
名残惜しそうな顔で俺の頭を撫でた。

「大変やん!はよ、行かな!」
「うん。そうなんだよね。また、後で!あー。無理ならまた明日!」

俺も名残惜しい。
キスくらいしたかった。

アキラさんを玄関先で見送って暫く惚けた。

「両思いかぁ。」
顔がニヤける。

ジュンじゃないとダメか。

何度も思い出す様にその言葉が頭を巡る。

好きー!!!!

ベッドにダイブしてゴロゴロ悶える様に転がった。

あー!アキラさんが俺を好き?
好き?
まじかぁ!!

「やばい。軽く勃った・・・。」
抱き締められた感触を思い出すとそうなるよね。

えーと。
俺達、付き合うとなると俺が入れられるんだろうか?痛く・・無いのかな・・・。

実はこの歳まで俺は誰ともした事が無く。

何もかも初心者なのだが!!!

想像すると急に恥ずかしくなってきた。入れられるの怖いが。かと言ってアキラさんに入れる?!それこそテクニックゼロ。

どちらにせよ上手く出来るのかな?

下手過ぎて引かれないか?
エッチで嫌われたらどうしよう!!!

ちょっと・・・勉強しよう。

その日、俺はゲイビ鑑賞と検索に明け暮れるのであった。
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