フードコートの天使

美浪

文字の大きさ
上 下
1 / 36
再会 feat.アキラ

片思い再び

しおりを挟む
本当に心から理想の相手と言うのは居るもので。

その人に出会ってしまってから何もかもがそれ一色に染まる。

俺は大学生の頃。

5年前にそんな人物と巡り会えた。

その人と実際に会ったのはたった1回だ。

出会いのきっかけはネットゲーム。
同じギルドと言うかチームのメンバーのリア友でその人は招待される形で入ってきた。
それから個人的にもリンクした。

相手は勿論、男性。
中学生くらいから自分の性癖には気付いて居た。俺は男性が好きだ。

だからと言って出会い目的でゲームを始めた訳では無い。同じチームにも男性は沢山居たし。

でも、この人とは最初の挨拶時から本当に気が合った。

毎日、アバター越しの君との会話が楽しくて。文字だけの関係なのに。沢山、ゲーム内で語りあった。
そして顔も見た事が無い君に恋をした。

それは当時付き合っていた彼氏と別れる程ゲームと言うか君にのめり込んで行った。

そして・・。オンラインだけの関係から同じ学生と言う事もあり連絡先を交換。向こうも本当に気が合うと言ってくれていたし。

それからはほぼ毎日連絡をしたまに電話したりとリアルでも仲良くなってサシでオフ会まで漕ぎ着けた。


会って・・・。
可愛さに衝撃を受けた。
そして言うまでもなくもっと好きになってしまって・・。

友達でも良かったんだ。

しかし、その後・・。
俺の気持ちは何故か相手にバレてしまった。
そんな露骨な態度を取った?と言えばそうかもしれないが。
もう、思い出したくないくらい告白も出来ないまま終わると言う黒歴史。

突然、彼はゲームを辞めてしまった。
同時に彼のリア友はチームを抜けて俺はリンクを切られると言う事態になった。

メールや通信アプリは音信不通。ブロックされた様だ。

電話はもう怖くて出来なかった。

程なくして俺もゲームから疎遠になった。

でも、今でも忘れられないんだ。
 
君の心も見た目も・・・。忘れられないんだよ。

ちゃんと告白して振られたかった・・。


               ・・・・・・・・・

さて。現在。

ブルーローズショッピングモールの3階フードコート。
それが俺の職場。

大手ファストフードチェーン店SSSトリプルエスバーガーの店長になって3年。

この店はまだ1年目だ。

フードコート開店10分前です。館内放送が流れた。


ここ、ブルーローズショッピングモールの開店は9時だがこのフードコートの開店時間は10時。

フードコートは店が開いてなくても母店が開いてたら自由に利用出来るのがお客様にはメリット。別に何も飲み食いしなくても利用出来る。

しかし、俺達店側からすると昼飯時に店を利用したお客様が座る事が出来なかったりする事もありそれはデメリットだと思っていたりする。

さて、平日にも関わらず今日もモール内にあるフードコートに隣接するゲームセンターのオープン待ちの客がチラホラと座っていた。
ゲーセンの常連さんは何して生活してるのかなあ?等と何時も思うがそこは仲良くなっても踏み込めない関係性。

「店長、サラダは何個作ります?」
「んー。6個にしよ。」
バイトの子とそんなやり取りをして、間もなく今日も1日頑張ろうと言う時だった。

フードコートの中央辺りに1人の男性が此方を見て立っていた。

ドクン・・・。胸が高鳴る。

見間違う筈がない。

キュンキュンとあの頃を思い出して心がときめく想いがした。

本物?


身長160センチくらいに見えるし。

まだ顔は良くは見えないが似ているだけ?


そんな彼は俺と目が合うとニッコリと微笑んだ。

嘘・・・。笑った・・・。
あの頃と同じ様な天使の様な可愛い笑顔で。

君はゆっくりと俺の方に歩いて来て。

目の前に来た。


ごくっと唾を飲み込む。

ジュン?だよね?


「いらっしゃいませ。」
何と声を掛けるか迷った挙句出た言葉。

「隣の・・。」
君はそう言って微笑んだ。
「隣のタコ焼き屋の店長として本日付けで赴任しました。大濠おおほり純です。宜しくお願い致します。」
初めましてとは言われなかったけれど。
余りにも普通な態度。

そっか。大濠君って名字だったんだ。
当時はジュンってハンドルネームしか知らなかった。
「SSSバーガー店長の西山あきらです。此方こそ宜しくお願い致します。」
俺もペコっと頭を下げた。

「ブルーローズモールは初めてなので色々教えて下さいね。」
「俺で良ければ。」
これからお店、お隣さんか。

不思議な縁だ。

もう、あの時の事なんて忘れているんだろうな。
本当に会ったの数時間だし。

俺に取っては本当に一世一代の恋ってくらい惚れたのに。

タコ焼き屋チェーン店に就職した事すら知らなかった。

「店長!電話でーす!」
バイトの子がそう言って我に返った。

「あっ。じゃあまた!」
ジュン君に微笑んで店の中へ。
君はヒラヒラと手を振って隣の店へ消えて行った。

「お電話ありがとうございます。SSSバーガーブルーローズ店です。」
電話の主は他店のマネージャーだった。
「資材?えーと。ちょっとお待ち下さいねー。」
近隣店舗で資材の貸し借りと言うのは日常茶飯事だ。
ハンバーガーで使用するバンズ、野菜やソース類だけでなくストローや紙コップ、洗剤に至るまでSSSバーガーでは決められた物しか使えない。

「バンズ大丈夫ですよ。はーい。では。」
だいたい売上の予測で発注、プラス1ケースから2ケース多めに発注するから足りるが時折イレギュラーで売れるからなあ。

11時。アルバイトのフリーターから主婦も揃いお昼のランチタイムに備える。

店長と言う役割は普段はあまり店には入らない。
基本は雑務。
この店の経営を任されている。

「忙しかったら呼んで下さい。」
主婦のマネージャーにそう言って店の奥にある休憩室兼マネージャールームに入った。

モールの店舗は狭い。
独立店舗、フードコートとかでは無いドライブスルー等がある店舗は店の広さ分の休憩室がだいたい建物の上階に作られているんだが。此処の店舗は8畳程しかない。

パソコンに向かって溜息を付いた。

やっぱり、俺は忘れきてれ居なかった。
あれから他の人を好きになろうとか一夜限りのお付き合いとかしたけど。

まだ心の底に・・・ジュンが居たんだ。

「仕事。しなきゃ。」

俺の2度目の君への片思いが始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

旦那様と僕・番外編

三冬月マヨ
BL
『旦那様と僕』の番外編。 基本的にぽかぽか。

処理中です...