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アンディー君のお誕生日

戻れなくなった

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いよいよアンディー君の誕生日パーティー本番当日。

朝、起きるとミミちゃんからメッセージアプリが届いていた。

『隠しキャラは何と2人居たの!生徒会長と王子!!』

『この王子が』
ここで不自然にメッセージは終わっていた。
生徒会長はウェルカムだしだけど。王子ねぇ。まあ、出会い無さそうだし関係ないかしらね。

それにしてもスマホの電波が・・・。
「どうしよう。本当にWiFi繋がらなくなってる!!」
もしかして・・。
朝からグレースちゃんのヘアメイクしなきゃならないんだけどパーティーは11時からだし。

気になって仕方ないのでちょっとだけお散歩!!とメイドさんに告げて急いで家を出た。

少し小走りでエリスパールの住宅街をパタパタと走った。

ここから元の世界。
足を止めて深呼吸した。

思わずグッと目を瞑って1歩、2歩と前へ進んだ。

目を開ける。

「エリスパールだわ・・。」
そこに豪邸公園は無かった。そっか。ミミちゃんの言った通り、私の予想通り。
戻れなくなった。
四方を見渡しても景色は異世界のままだ。
自分で決めたけど現実となるとダメージ受けるのね。

「まあ、おネエなんて何処の世界に居ても扱いは変わらないか!!」
寧ろこの世界の方が差別意識が低く暮らしやすい!

「グレースちゃんのメイク頑張ろ!」
誰も聞いて居ないのに自分を奮い立たせる様に言葉にした。

帰ろう。ぐるっと回れ右をしてベイリー家に戻る足取りは少しだけ重かった。
この世界でもおネエの友達だけは欲しいわね。同じ性癖のお友達は大事だわ。
それだけは元の世界が良かった。

言い聞かせているだけでミミちゃんやゲンちゃん、アユム君の顔が浮かぶと泣きそ。

でも、家に入ると何時もの慌ただしさに不思議と元気が出る。

「アリスねーさん!お散歩終わった?今からドレス着替えるの!」
顔を洗ったグレースちゃんがバタバタと2階へ駆け上がろうとしていた。

「私も準備して部屋に行くわ。今日はスッピンに見えるメイクじゃないわよ!本気出すわ。」
そう言うとグレースちゃんは凄く可愛い笑顔で頷いた。

うん。この子を幸せにする!

そして、私はグレースちゃんのお付きとしてアンディー君の誕生日パーティーに参加するのだ。

こっそりジュリエットを邪魔するために。うふふふふ。

良し!気合い入れてメイクするわぁ。

フルヘアメイクセット持参でグレースちゃんの部屋へ。

「まだ!見ちゃダメ!」
「あら。ごめんなさい。」
お着替え中でした。
良いわねぇ。女装はしないけどあんなドレスは着たいわぁ。

スカートは子供の頃に姉に着せられてた事も何度かあったけど。女装にハマりはしなかったがあの頃から今の気質はあったのかも。

「どう!?ねーさん!」
自慢げに着替え終わったグレースちゃんがドレスの端を摘んでくるっと回って見せた。
ヒラヒラ、フワフワのレースが綺麗。そして良く似合う赤を基調とした可愛らしいドレスだ。

「可愛いわ!良し!今からマツエクをします!」
「マツエク?」
この世界にはマツエク、そうまつげエクステは無いのか流行って居ないのか。
つけまつ毛はあるけど。
「私を信じて目を閉じなさい。出来上がりをお楽しみにね。」

リクライニング出来る椅子に座ってもらいまつげエクステ開始。
道具持って来ていて良かったわ。

本当に戻れなくなっちゃったし。

さて、日本人と違ってグレースちゃん達って元々が整った顔立ちなのよねぇ。
その中でもジュリエットは誰が見ても可愛いってやつだ。

マツエクは不自然にならない長さで密度を少し増す程度。上向きクルン。

その後、本格メイク開始。
と言っても濃すぎるのは高校生くらいの男ウケは悪い。

経験値積みまくった年齢になったら色気とかの滲み出る感じにするんだけど。
テーマは恋する乙女ね。

血色感のある肌にして。鼻は高く見える様に。
目元はまつ毛が自然に長く見えるから目は大きく見える。
色はドレスが赤だから。赤系のグラデーションにしよう。

チークはフワッと。
口紅は落ちにくいティントにしよう。御飯食べるかもしれないし。
色は赤よりコーラルかしらぁ?ベージュも有りか。
「ちょっとグレースちゃん目を開けて。最後のメイク仕上げ。」

ずっと目を閉じてたグレースちゃんは少し眠そうだったが鏡を見て大きくなった目を更に見開いた。
「わわわ!びっくりした!え?!」
「うん。派手よね。」
グレースちゃんは更に鏡に近付いて自分の顔をしみじみと色々な角度から見た。
「去年まで頼んでいた美容師さんとは全然!!全然違う!」
「気に入らない?」
そう聞くと最高よ!とちょっと鼻息荒く大きく頷いた。

「後は口紅なのよね。やっぱり赤よりコーラルかな。」
決定!!

「はぁ。可愛いー!自分で言ってるし!」
グレースちゃんはクスクス笑いながら満足そうに鏡を見詰めている。

髪の毛は大人っぽ過ぎず子供っぽ過ぎず。
先ずは髪を巻いてっと。
そして、編み込みをカチューシャのようにして。
下ろす横髪と後ろ髪の加減大事なのよねぇ。
完全にアップにすると大人っぽ過ぎる。

「どう?」
「良いわ!これなら目立つ事間違いなし!」
私達は悪そうな微笑みで鏡越しに見詰めあった。

「ジュリエットの邪魔は任せて。後は手筈通りに交代でダンスするのよ?」
「ありがとう。アリスねーさん。今日を乗り切るわ!」

私もパーティースタイルの洒落たスーツに着替えた。
燕尾服はちょっと趣味に反するのよねぇ。
だから某ブランドのお高いやつ。これでテレビにも出た事あるし。

準備万端。

いざ!アンディー君の家に!
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