86 / 369
ゲネプロ
しおりを挟む午後練習開始。
オケの演奏はほぼ出来上がっており練習のメインは合唱となった。
私の歌声を聞いていたスミスさんの指示が的確で明白。自分でも上手くなったと明らかに解る。
最終的には1回通して歌える程揃った。
「もっとしっかり歌いこみしてきます!」
スミスさんや楽団員達に本日もお疲れ様でしたとお辞儀をし練習室を出る。私達の練習が明らかに不足していると感じた。
ストーカーが悪いんだ!と八つ当たりしたくなる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後。
3月練習1回目収穫なし。『ストーカーホイホイ作戦』は名前を知らないメンバー以外はレオナルドさんとリサさん、ブルーさんとアーリーさん、マリーさん等の同じ様な方々しか集まらなかった。
自宅へのストーカーからの手紙は2回ポストに入っていた。
ジミーさんが手紙の主では無い事は確定した。
手紙の内容は
歌声を褒めたり、愛してると書いてあったり。貴女の声は誰にも渡さないとか。そりゃもう好き放題書いてあった。
直接的な接触は1度もない。
私達は取り敢えず第1容疑者はレオナルドさんと言う事にした。
定期演奏会で接触して来たし。会話は殆ど交わしていないがその都度の怪しい場面に彼は居た。
第2容疑者はアレックス・ブルーさんなのだが。これはエミリアの手前大っぴらにして居ない。疑いはある。
そして進展しないまま日にちだけが過ぎた。
最終練習、公演前日のゲネプロの日が来てしまった。
もう犯人見つからないのでは無いかと思えてきた。しかし見つけないとこれからの生活に支障をきたす。
本日は舞台で練習。本番と同様に行うので私達は出番まで客席で楽団の演奏を聞くことになった。
本当に上手い。1つ1つの曲で感動を覚える。
ゲームでは無いが共演後に犯人を当てると言うのはこのメンバーの誰も欠けてはならないと言う事なのかも知れない。
私達の出番。第九、歓喜の歌。
カインもクライスも精一杯練習して来た。
練習開始からすると格段に上手くなっている。
合唱も迫力が出て客席に響き渡る。
そのまま1発OKが出てラストのレクイエムまでは1曲なので舞台袖で待機。
本番でも行うであろう挨拶をスミスさんが行った。ジミーさんへの追悼のメッセージ。
未だに後悔が付き纏う。何故あの時追い掛け無かった。
彼は刑務所には入ったかもしれないが生きていられたのに。
レクイエムは心を込めて。彼の成仏を祈る。この世界の宗教では考えが異なるのだが仏教の思考が抜けない。
ゲネプロは無事に終了した。明日の公演は1回のみで13時からだ。
集合は10時。
犯人、明日解るのかな。
帰りのバスの中でふと鞄の留め具がいつも閉めている位置と違う事に気づいた。
開けて見ると手紙だ。何時もポストに入っている白の封筒では無く薄い水色の封筒だった。
「手紙が入ってた!!」
私が叫ぶと皆が一斉に此方を見た。
「読んで!!」
キャサリンが急かしてくる。
『明日、演奏会後の16時に音楽ホールの外庭の時計台の下に来て頂けませんか?』
「犯人来たー!」
生徒会長が叫ぶ!
「計画立てますよ!」
王子も張り切っている。
「でもな。何時もの封筒と色が違うしちょっと文章が何時もより丁寧な気がするなあ?」
私は少し引っかかる所がある。
しかしその意見は却下され皆の間で着々と計画が練られて行った。
外庭は音楽ホールの入口の左横に広がる花壇。その奥に時計台が有る。
確か外庭には音楽ホールの奥のガラス張りの一角が扉になっていてそこからも出入りが出来た筈だ。
音楽ホール内から時計台は見えない。
「全員の配置が重要だな。」
生徒会長が呟く。
学校に着いてレッスンルームの黒板には音楽ホールと外庭の絵が描かれ明日の全員の配置図を作成させた。
時計台には私のみで向かう。
時計台の近くの花壇の脇から王子、生徒会長、カイン
時計台から少し離れた木にルイスが隠れて立つ。何時でも飛び出せる位置だ。
音楽ホールに近い花壇にエミリアとキャサリン。
音楽ホール内の公衆電話から直ぐに警察に電話出来るようにジョージとクライスが待機。
犯人遭遇時点から連携で警察に連絡出来る様に配置が考えられた。
明日は公演。そして決戦。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する
みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる