78 / 369
定期公演に行ってみる
しおりを挟む公演は土曜日の午前中のチケットだった。
コンクールの歌練習をすると適当な嘘をついて1人で国立音楽ホールに向かう。
チケットは余るが誰か連れて行って巻き込みたくは無い。
エミリアを?とも考えたけどまだブルーさんも犯人では無いという確証が無いからだ。
皆、公演にはお洒落をして行く。上流階級らしい格好。そこは敢えての制服だ。敵にも解り易いだろうし。
ポケットには勿論、特殊警棒。
音楽ホールに着いて座席を確認すると割と見えるやや後方の真ん中辺りだった。
ドヴォルザークの新世界より。良いねー。好きだなあ。堪能させて貰おう。
特に此方を凝視している楽団員は見当たら無い。
でも、満員御礼の中で隣の席が空いているから解るだろうな。
ブルーさん、コンマス、指揮者以外は名前も不明。
こういう時に相手の出方を待てないタイプなので我慢するのに苦労する。
そう言えば演奏会後に握手会が開催されるらしい。
アイドルかよ!?と突っ込みを入れたい所だが我が国にはアイドル歌手とか居ないので管弦楽団やオペラ歌手がアイドルの様な扱いを受けている。
握手会って参加すべきなのかなあ。
面倒だけど勘違い野郎以外の楽団員に見られた場合って印象悪くなるよなあ。挨拶だけはしとくか。
演奏会後ロビーでの握手会はごった返っていた。
本当にアイドルだ。
握手会は誰が出てるかさっぱり解らないが全員では無い。
人気あるやつらだけかな。
「あら?アリア学院の?」
背後から女性の声がして振り返ると楽団員の女性奏者と男性奏者の2人組だった。
「聞きに来てくれたのね。ありがとう!」
そう笑顔で挨拶され此方も笑顔で頭を下げる。
「素晴らしい演奏でした。感動しました!」
楽団員のお姉さんが笑顔で
「握手会参加するの?」
と言われたが、面倒くさいとは言い難い。
「取り敢えずご挨拶はした方が良いかと思いまして。」
と濁しておいた。
「先生には挨拶しておいた方が良いね。」
楽団員のお兄さんにそう言われて案内される。指揮者の方は先生と呼ばれている様だ。
「先生。アリア学院の生徒さんがご挨拶をと。」
お姉さんが指揮者のスミスさんに声をかけた。
「ご挨拶だけはと思いまして。素晴らしい演奏でした。」
私はお辞儀をする。
「あー。先日のアリア学院の生徒さんですね。こちらこそありがとう。」
と笑顔で挨拶された。
次いでに近くにいた楽団員の方々にも挨拶だけはしておいた。
数名に挨拶をした所でねっとりとした視線を感じ辺りを見回す。
今、誰か見ていた。
しかしそれらしき人物は居ない。
この挨拶した目の前の数名だけが除外か。全く、さっさと出てこいよなあ。
最後にファン多数でなかなか隙がなかったコンマスに挨拶をして帰る事にした。
ブルーさんには挨拶してないな。
結局の所、視線を感じただけで演奏会の収穫は無かったに等しい。もう少し殺気でも放ってくれたら解るのに!!
視線は音楽ホールを出る時にまた感じた。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる