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7-3.最悪な夢
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森の中を登っていく車の中には私と両親が乗っている。荒れた道の中を進んでいった車はやがて目的地についたのか動くのをやめた。
「ほら桃香降りなさい」
「何? いらなくなったらその辺に捨てるってわけ?」
「御託はいいんだよ。お前なんかいなくなっちまえばいい」
「ちょっ、やめて!」
両親から車を投げ出される。
私を引きずり出した車は、私のことなんて知らないかのように凄まじい勢いで街の方に戻っていった。
「どうすんのこれ」
スマホは圏外だし、所持品も学校終わりにそのまま乗せられてきたから制服以外何も持っていない。
「なんだよ……今頃になって捨てるの……」
両親からはあまり好かれてないし、私自身も好きじゃないけどこうして捨てられるのならもっと早く捨ててほしかった。それこそなんの知識もない歳の頃に。
そうすれば何も考えることなくこの場所で勝手に死ぬことが出来ただろう。でもそうはならなかった。親はこの歳になるまで何故か放置して今頃捨てたのだ。
「取り敢えず降りよう」
このまま死ぬのは怖い。水がなくて脱水症状や、飢餓で死ぬのはとても辛いと聞く。更に熊とか野犬とかに生きながら喰われるかもしれない。そんなのは嫌だ。
取り敢えず足を進める。道がデコボコしてるし、ローファーを履いているからとても歩きづらい。
車で2時間位登ってきたこの場所。もう日は落ちそうになっている。ただでさえ生えている木に空を遮られているのだ。頼りになるのはこの死にかけの道だけだった。
落ち葉が濡れている。日差しが遮られているからずっと前の雨で濡れたものが乾かないのだろう。道も濡れていて革靴の1種のローファーじゃ滑りやすくて歩きづらい。
「うわ!」
受け身は取れたけど真っ白な制服が泥まみれになってお尻とかもちょっと痛い。
思っていた通りのことになった。歩きづらい歩きづらいと言いながら本当に転倒する。
尻餅を付く感じなので怪我はあまり無いもののお尻の部分のスカートは落ち葉で濡れて気持ち悪い。
立ち上がってお尻を払うけど、既に水分を吸い取ったスカートはどうしようもなく、手には大量の泥と葉っぱがついた。
「もうやだ」
とても惨めな気分。でも生きたいのなら街まで降りるしかない。一度止めてしまった足はまた動かすまで時間がかかったけどなんとか動いてくれた。
限界まで朽ちている標識には、かろうじて動物注意の文字が書かれているのが読み取れる。
こんな人里離れた場所で何も持っていなくて運動部でもない学生に太刀打ちが出来るわけがない。何も来ないことを祈るしかなかった。
ずっと歩く。街はまだ見えない。日はもはや暮れており、月明かりでかろうじて足元が見えるくらい。なんとなく下っているとわかる感覚だけが頼り。
ガサガサ
「ひっ」
時たま草をかき分ける音がする。影は見えないから大型の動物じゃなくて狸とかなんだろうけど、生身の人間だとそれでも脅威だからその場に留まるのは怖い。
怖いからさっきからの欲求が解放できない。
人目がないからと完全にスカート越しに前押さえして出そうになった物を引っ込める。
もうこの状態は長くは持たないから早く出したいのだけど、こうも動物が通り過ぎる音を聞くとその場に立ち止まることは出来ない。
「おしっこ……」
真っ暗な山道を降りながら、頭の中の中が夜の山道を通る怖さではなく、おしっこのことで埋め尽くされていく。
ズル………
「あっ!」
道に通された網状の排水口。暗くて見えなかったから何も考えずに踏み出した足は普通の路面だと思っていた。乾ききっていない路面の金属はとても滑りやすい。
━ドン!
ショオオオオオ
「や、やだ、止まって!」
尻餅をまたついた。今度はそれに付随して下から暖かい水流を感じる。おしっこを結構我慢していた中、この衝撃は決壊させるのに充分なものだった。
「も、もうっ」
勝手に流れていくおしっこを止めるため、スカートの上ではなく直接パンツの中に手を入れて出口を押さえる。
大分おしっこが膀胱から出て軽くなったのも相まってなんとか止まってくれた。
でも被害は甚大なもので制服のスカートはおしっこで巨大な染みが出来ているし、地面に接したパンツは、一瞬おしっこで温かくなったのが路面の雨水で濡れてもう冷たくなり始めている。
「うっ、うう」
出口を直接押さえているのにプシュプシュと出てくるのを気にしないようにしながら立ち上がり、また歩き始める。転けた拍子に片方のローファーが脱げたのか片足が痛いし、冷たい。
もう片方のローファーも濡れたパンツから垂れてきたおしっこで湿っている。
「なんでこんなことに……」
なんで今頃になって、両親は自分を捨てたの? もう放っておいてくれてもよかったじゃん。
別に大学に行かなくてもいいから、そのまま放置してたら勝手に独り立ちするんだよ……? それも待てなかったの?
自分達の子持ちという看板も捨てたかった?
私が話す時いつも話半分でしか聞いていないよね? 次の時に前話したことを聞いても答えてくれないし。
私の誕生日知ってる? 秋なんだけど、一度も祝ってくれたことないよね?
そう言えばなにか買ってくれたことも無いよね。いつも封筒に入れられた紙幣が置かれるだけ。
ねえ知ってる? 他の子達ってお金じゃなくてプレゼントっていうものをもらってるらしいよ。
下はおしっこで濡れてるし、上からは何故か涙が出てきた。精神的にちょっとやられてきたその時だった。
ドサッ!
何かが落ちる音がする。同時にこっちに向かってくる重たい足音と、荒い鼻息。間違いない、大型の動物。
「もうやだー!」
走る。とにかく走る。おしっこで重たい下半身も、いつの間にか両足無くなったローファーも、小石で血まみれになっていく足も全て関係ない。ただただ生きるために走るのだ。
でもそもそも生身の人と動物が走って人が勝てるわけがない。
直ぐ様に追いつかれた私は動物に上から押し倒される。とてつもない獣臭に顔に生暖かい唾液がかかり、到底人間ではどうしようもない力で押さえつけられる。
「あぎゃあ!」
もはや女の子が発してはいけない声。でも胸を押さえつけられて息ができなくて、抵抗した腕の感覚は無くて現状を見るのも怖い。見れるのかどうかすら怪しいけど。
あ、死ぬんだ。
素直にそんな考えが頭によぎる。大型動物に上から乗られて生きていけるほど、私の体は丈夫じゃない。
グチャッと何かが潰れる音がした。
………
……
…
「ここは?」
気がつけば何処までも広がる白い空間に私はいた。さっきまでの動物に乗られて体の自由が利かなくなる感覚はまだ続いているものの、何処か安心する空間。
「桃香、大丈夫?」
そこにいたのはツインテール姿でゆるふわな格好をした瑞希。
「瑞希、怖かったああああ!」
抱きつく。
「よしよし、怖かったね」
赤子でもあやすかのように瑞希は私を抱いてくれて背中をポンポンと叩いてくれる。
ショロロロロォ
その衝撃からか、それとももう苦しむことはないという安堵感からか、トイレでもないのに私はおしっこを解放していた。
━あれ? なんかおかしいな
━私は今座っているのに、背中まで濡れてるんだけど
━━◇
「うわあ!!!」
一気に覚醒。そこに広がっていたのは何処までも続く白い空間ではなく、いつもの自分の部屋だった。
相変わらず瑞希から抱きつかれていて体は動かせない。体は動かせないけど手はなんとか抜ける事ができた。
「やっちゃった?」
瑞希と一緒にかけている布団からはおしっこのアンモニア臭がしている。
もはや確定しているようなものだけど恐る恐る着ていたパジャマのズボンを触る。そこはグッチョリと濡れていて明らかにおねしょしましたと言わんばかりだった。
「……」
汗が出てくる。一緒のベッドで寝ていたから瑞希も私のおしっこで濡れていて、2人しておしっこの中で寝ていたのだ。
「ほら桃香降りなさい」
「何? いらなくなったらその辺に捨てるってわけ?」
「御託はいいんだよ。お前なんかいなくなっちまえばいい」
「ちょっ、やめて!」
両親から車を投げ出される。
私を引きずり出した車は、私のことなんて知らないかのように凄まじい勢いで街の方に戻っていった。
「どうすんのこれ」
スマホは圏外だし、所持品も学校終わりにそのまま乗せられてきたから制服以外何も持っていない。
「なんだよ……今頃になって捨てるの……」
両親からはあまり好かれてないし、私自身も好きじゃないけどこうして捨てられるのならもっと早く捨ててほしかった。それこそなんの知識もない歳の頃に。
そうすれば何も考えることなくこの場所で勝手に死ぬことが出来ただろう。でもそうはならなかった。親はこの歳になるまで何故か放置して今頃捨てたのだ。
「取り敢えず降りよう」
このまま死ぬのは怖い。水がなくて脱水症状や、飢餓で死ぬのはとても辛いと聞く。更に熊とか野犬とかに生きながら喰われるかもしれない。そんなのは嫌だ。
取り敢えず足を進める。道がデコボコしてるし、ローファーを履いているからとても歩きづらい。
車で2時間位登ってきたこの場所。もう日は落ちそうになっている。ただでさえ生えている木に空を遮られているのだ。頼りになるのはこの死にかけの道だけだった。
落ち葉が濡れている。日差しが遮られているからずっと前の雨で濡れたものが乾かないのだろう。道も濡れていて革靴の1種のローファーじゃ滑りやすくて歩きづらい。
「うわ!」
受け身は取れたけど真っ白な制服が泥まみれになってお尻とかもちょっと痛い。
思っていた通りのことになった。歩きづらい歩きづらいと言いながら本当に転倒する。
尻餅を付く感じなので怪我はあまり無いもののお尻の部分のスカートは落ち葉で濡れて気持ち悪い。
立ち上がってお尻を払うけど、既に水分を吸い取ったスカートはどうしようもなく、手には大量の泥と葉っぱがついた。
「もうやだ」
とても惨めな気分。でも生きたいのなら街まで降りるしかない。一度止めてしまった足はまた動かすまで時間がかかったけどなんとか動いてくれた。
限界まで朽ちている標識には、かろうじて動物注意の文字が書かれているのが読み取れる。
こんな人里離れた場所で何も持っていなくて運動部でもない学生に太刀打ちが出来るわけがない。何も来ないことを祈るしかなかった。
ずっと歩く。街はまだ見えない。日はもはや暮れており、月明かりでかろうじて足元が見えるくらい。なんとなく下っているとわかる感覚だけが頼り。
ガサガサ
「ひっ」
時たま草をかき分ける音がする。影は見えないから大型の動物じゃなくて狸とかなんだろうけど、生身の人間だとそれでも脅威だからその場に留まるのは怖い。
怖いからさっきからの欲求が解放できない。
人目がないからと完全にスカート越しに前押さえして出そうになった物を引っ込める。
もうこの状態は長くは持たないから早く出したいのだけど、こうも動物が通り過ぎる音を聞くとその場に立ち止まることは出来ない。
「おしっこ……」
真っ暗な山道を降りながら、頭の中の中が夜の山道を通る怖さではなく、おしっこのことで埋め尽くされていく。
ズル………
「あっ!」
道に通された網状の排水口。暗くて見えなかったから何も考えずに踏み出した足は普通の路面だと思っていた。乾ききっていない路面の金属はとても滑りやすい。
━ドン!
ショオオオオオ
「や、やだ、止まって!」
尻餅をまたついた。今度はそれに付随して下から暖かい水流を感じる。おしっこを結構我慢していた中、この衝撃は決壊させるのに充分なものだった。
「も、もうっ」
勝手に流れていくおしっこを止めるため、スカートの上ではなく直接パンツの中に手を入れて出口を押さえる。
大分おしっこが膀胱から出て軽くなったのも相まってなんとか止まってくれた。
でも被害は甚大なもので制服のスカートはおしっこで巨大な染みが出来ているし、地面に接したパンツは、一瞬おしっこで温かくなったのが路面の雨水で濡れてもう冷たくなり始めている。
「うっ、うう」
出口を直接押さえているのにプシュプシュと出てくるのを気にしないようにしながら立ち上がり、また歩き始める。転けた拍子に片方のローファーが脱げたのか片足が痛いし、冷たい。
もう片方のローファーも濡れたパンツから垂れてきたおしっこで湿っている。
「なんでこんなことに……」
なんで今頃になって、両親は自分を捨てたの? もう放っておいてくれてもよかったじゃん。
別に大学に行かなくてもいいから、そのまま放置してたら勝手に独り立ちするんだよ……? それも待てなかったの?
自分達の子持ちという看板も捨てたかった?
私が話す時いつも話半分でしか聞いていないよね? 次の時に前話したことを聞いても答えてくれないし。
私の誕生日知ってる? 秋なんだけど、一度も祝ってくれたことないよね?
そう言えばなにか買ってくれたことも無いよね。いつも封筒に入れられた紙幣が置かれるだけ。
ねえ知ってる? 他の子達ってお金じゃなくてプレゼントっていうものをもらってるらしいよ。
下はおしっこで濡れてるし、上からは何故か涙が出てきた。精神的にちょっとやられてきたその時だった。
ドサッ!
何かが落ちる音がする。同時にこっちに向かってくる重たい足音と、荒い鼻息。間違いない、大型の動物。
「もうやだー!」
走る。とにかく走る。おしっこで重たい下半身も、いつの間にか両足無くなったローファーも、小石で血まみれになっていく足も全て関係ない。ただただ生きるために走るのだ。
でもそもそも生身の人と動物が走って人が勝てるわけがない。
直ぐ様に追いつかれた私は動物に上から押し倒される。とてつもない獣臭に顔に生暖かい唾液がかかり、到底人間ではどうしようもない力で押さえつけられる。
「あぎゃあ!」
もはや女の子が発してはいけない声。でも胸を押さえつけられて息ができなくて、抵抗した腕の感覚は無くて現状を見るのも怖い。見れるのかどうかすら怪しいけど。
あ、死ぬんだ。
素直にそんな考えが頭によぎる。大型動物に上から乗られて生きていけるほど、私の体は丈夫じゃない。
グチャッと何かが潰れる音がした。
………
……
…
「ここは?」
気がつけば何処までも広がる白い空間に私はいた。さっきまでの動物に乗られて体の自由が利かなくなる感覚はまだ続いているものの、何処か安心する空間。
「桃香、大丈夫?」
そこにいたのはツインテール姿でゆるふわな格好をした瑞希。
「瑞希、怖かったああああ!」
抱きつく。
「よしよし、怖かったね」
赤子でもあやすかのように瑞希は私を抱いてくれて背中をポンポンと叩いてくれる。
ショロロロロォ
その衝撃からか、それとももう苦しむことはないという安堵感からか、トイレでもないのに私はおしっこを解放していた。
━あれ? なんかおかしいな
━私は今座っているのに、背中まで濡れてるんだけど
━━◇
「うわあ!!!」
一気に覚醒。そこに広がっていたのは何処までも続く白い空間ではなく、いつもの自分の部屋だった。
相変わらず瑞希から抱きつかれていて体は動かせない。体は動かせないけど手はなんとか抜ける事ができた。
「やっちゃった?」
瑞希と一緒にかけている布団からはおしっこのアンモニア臭がしている。
もはや確定しているようなものだけど恐る恐る着ていたパジャマのズボンを触る。そこはグッチョリと濡れていて明らかにおねしょしましたと言わんばかりだった。
「……」
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