教室から始まるおもゆり話

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3-1.お出かけケーキ

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 学校終わり。人の噂にも七十五日ということわざがあるが、ずっと顔を見合わせているクラスの人達には当てはまらないらしい。瑞希はずっと少し変な目で見られている。そんな瑞希とよく一緒にいる私も変な目で見られている気がした。

「瑞希、一緒に帰ろう」
「うん」

 一緒に教室を出る。瑞希の数少ない友人はあれから疎遠になったみたいだし、私は万年ボッチの身分。変な目で見られるだけで誰にも話しかけられない。
 1人だったら耐えられないかもしれないが、今は2人だ。

「なんかずっとあんな感じだね」
「だね。嫌だったら桃香も私から離れたほうが良いよ」
「離れるわけないじゃん……あんなことやってて」

 あの時のことを思い出して2人して顔が赤くなる。

「顔真っ赤だよ」
「瑞希もね」

 あれからまだ次の機会は訪れていない。

「次はいつやるの?」
「うーん、欲しいなら…やる?」

「どっちなの?」

 瑞希はニヤニヤと笑みを浮かべた。

「や、やりたい」

 瑞希の提案に食い気味になっていないか少し心配した。




 提案されたのはピクニックだった。今の時代に!? と思ったけど今回のテーマは食事らしく、おしっこを我慢する時に万が一にでもお店に迷惑は掛けられないということで、各自食べ物を持って公園に集まることになった。

 何を持っていくのか少し迷う。主な食料は瑞希が持ってくるとはいえ、私も何か多少は持って行きたい。
 悩んだ末買ったはいいもののまだ半分以上残ってるクッキーに、スナック菓子を数個持っていくことにする。メインは瑞希が用意するので要らないだろう。


━━◇


 当日、公園の端っこの木陰で私達2人はシートに座っていた。
 家族連れが多く公園に来ていて昼ご飯を食べる人も多いけど、流石にこんな端っこの何にも設備がない場所まで来る人はいなかった。

「ほら、適当にお菓子を持ってきたよ」
「私が用意するって言ったのに…ありがとね」

 袋の中のお菓子を2人でつまむ。前日が雨だったからか結構過ごしやすい気温で、地獄のような環境ではない。今日が計画の日で丁度良かった。

「私ね、前回は絶対に手を出さないって言って何もしなかったけど今回から手を出そうと思って…これを食べてもらおうかなって」

 瑞希は持ってきたクーラーボックスの中から箱を取り出し、大量の飲み物を取り出す。シートの上には存在感のある箱が置かれ、周りを飲み物が囲っていた。

「え、何これ」
「ケーキだよ。桃香好きって言ってたじゃん」

 半信半疑で箱の中身を取り出すと、真っ白なワンホールのいちごケーキが出てくる。そこら辺の安物とは違ってクリームがきめ細かいし、スポンジもふわふわとしてる。

「え、本当に美味しそうなんだけど」
「でしょ。私の兄がケーキ屋で、友達にケーキ好きな人が居るって行ったら安値で売ってくれたの」

 瑞希は既に切れ目の入っているホールケーキから皿にひと切れ置いて目が輝いている私の目の前に置く。

「ほら、食べないと温かくなって微妙になるよ」

 瑞希は自分の皿は持たず、私に勧めた。

「瑞希は食べないの?」
「言ったじゃん。これを食べてもらおうって」
「流石にこの量は食べれない気がするんだけど……」

 何時もはショートケーキ1個とかで甘いのとスポンジケーキの容積でいっぱいいっぱいになるのに、今回食べろと言われたのは丸々ワンホール。

 確かにワンホール食べるのがちょっとした夢になる事は間違いない。でも本当に食べれるかと言われればそれは無理だと言えるだろう。

「そのために飲み物があるんだよ」

 瑞希は周りに置いたペットボトルの飲み物を指さした。

「それに桃香がこれを食べないと…そのために用意したから全部捨てることになっちゃうな…せっかく作ってくれて、私もお金を出したのに」
「分かった」

 食べ切れるか切れないかは別としてこの美味しそうなケーキの味を早く知りたい。私は切り分けられたケーキにスプーンを入れて口に運ぶ。

「消えた!?」
「すごいでしょ! お兄さんの作るケーキってかなりの話題作なんだよ!」

 スポンジの部分を感じさせない柔らかさ。口の中でケーキだったものがスーッと消えて、ほど良い甘さだけが口に残る。
 2口目に行く前に糖分を取って渇いた喉を潤し、ケーキを口に運ぶ。また口の中でスーッと消えて甘さだけが残った。安物のケーキを想像して食べきれないと思ったけど、これなら行けるかもしれない。私は無限にあるケーキにかぶりついた。

 ケーキを皿にとり、食べる。喉が渇いたから飲み物を飲む。

 ケーキを皿にとり、食べる。喉が渇いたから飲み物を飲む。

……





 ……3分の1位食べた時から私の手はたまに止まるようになり、半分食べ終わった所で私の手は完全に止まった。
 何だか胃がムカムカするし、糖分を一気に摂りすぎたせいで頭もぼうっとする。

「どうしたの? 食べないの」
「た、食べるよ」

 口でそう言いながらスプーンにケーキを乗っけてるのに、口元までスプーンが運べない。

 今口に何か入れたら確実に胃に入ってる物を吐きそうだった。

「や、やっぱりもういいかな」

 スプーンを置いてお腹を擦る。あれだけ食べて飲んだからかお腹はだいぶぽっこりと膨らんでいる。胃は甘さからかずっとムカムカしてて落ち着かない。

「言っとくけど、もし桃香が吐いちゃったらこのケーキはゴミと一緒ってことになるから吐かないでね」
「ゴミだなんてそんな。とっても美味しかったのに」



 最初は美味しかった。……今は正直もう見たくない。ケーキが好きっていうプロフィールも今から消しておきたい位。



 瑞希が食べかけのスプーンを手にとって私の口元に運ぶ。

「最低でもコレぐらいは食べ切れるよね?」

 私の口は何か入れられるのを嫌って開けなかった。閉じた口にケーキが当たる。

「ほら、こんな美味しいケーキなのに食べないの? 食べないならその辺に捨てちゃうよ?」

 おばあちゃんが言っていた私の道徳観念が邪魔をする。食べ物を粗末にしてはいけない、食べれる時に腹一杯食べておけ、と。

 一瞬の迷いと、瑞希からの催促で私は少し口を開けたみたいだった。それに気づいたのは強引に瑞希がスプーンに入ったケーキを口内に放り込んだから。

「ふぐっ……うぅ」


ギュリュリュリュ


 口の中がまた甘くなって変な声が出る。もう駄目だと言っていた胃はグルグルと回り、正常な方向性ではない逆方向に動こうとしていた。

 気持ち悪いっ………

 気持ち悪くて吐きたい。吐きたいけど瑞希が言ってた通りにここで吐いてしまうと今まで食べた分全てがゴミだったことになってしまう。

 私は胸に手を当てて全身に力を入れ、吐きそうになるのを抑える。全身に寒気がして、額に脂汗が流れる。




 でも出てきたのは別のものだった。



チョロチョロチョロチョロ


「え、あ、嘘!?」

 シートに流れるのは私の股から広がったもの、つまりはおしっこである。流れたおしっこはおしりを濡らし、やがてシートへと伝ってきたのだ。

「あーあ、やっちゃった」


 全身に力を入れた時、同時に私は下半身にも力を入れていた。結果的に胃に押されて容量の少なくなった膀胱はすぐに液体を放出したのだ。

 もはや吐き気なんてどうでもいい。これを止めようとしてお腹に力を入れれば今度こそ吐きそうだし、出口を押さえるのもおしっこで濡れる被害が広がるだけで得策ではない。

 私は流れるおしっこを止めることも、勢いを付けることも、何も出来ずに一定の勢いで流れていくおしっこを見ていることしかできなかった。


 そしてもう一つ重大な問題が襲いかかる。


キュルルルル


 吐きそうなくらい食べたケーキに押されて大きい方もしたくなってきた、

「瑞希、ちょっとトイレ…」
「その格好で行くの!?」

 立ってからお尻の方を触るとスカートごと濡れているのがわかる。おしっこの匂いもするから何が起こったのか丸わかりだ。でも私は行かなければならない。

「ここでおしっこすれば良いじゃん。もう濡れちゃってるし、わざわざ人目がある場所に行く必要もないよ」

 瑞希は私に漏らさせようとしながらも他の目には触れさせようとしなかった。それは優しさであり、彼女自身のトラウマでもあり、桃香は友人だからでもある。

「む、無理だよ。私っ」


グキュルルル


 またお腹がなって、全身を寒気が襲う。おしっこだけなら最悪拭けば跡は残らない。でも大きい方をこの場で出すのはさすがに無理!

「ひょっとして大きい方…?」
「ちょっと、もう行くね!!!」

 私はお腹を押さえてそのまま走り出す。後ろで瑞希がタオルを用意しようとしていたのも見ずに。
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