教室から始まるおもゆり話

xita

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1-2.トイレの出来事と少しの闇

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 昼休みも中頃。適当に買った菓子パンを腹に入れた私は瑞希さんが食べ終わったのを見計らって話しかける。さて、何といって話そうか。
 今の教室の話題である瑞希さんが何か話してたら目立つだろうし、外で話したいな…

 中川瑞希(なかがわみずき)それが彼女の名前のはず。


「中川さん」
「どうしたの? 葛城さん」
「ちょっとトイレに行きませんか?」

 瑞希さんは少し引きつった顔をした。何でだろう。
 セミロングの髪は何をやっても跳ねるからもう放って纏められてないから威圧感はないし、みんなから無害そうな顔って言われて平和に暮らしている私の何処に怯える要素が?

「はい…」

 とても不安そうだったけど来てくれた。私は瑞希さんを連れて教室を後にする。
 これだけでも瑞希さんは注目の的で、隙間から見えている教室の人達は出ていく私と瑞希さんを見ていた。

「ほらこっち」
「でも近くのトイレはここじゃあ?」
「そんなの方弁に決まってるじゃん」

 教室の隣りにあるトイレ。ずっと誰かは入っていて話すのには向いていないだろう。

「あっちの校舎のトイレに行くよ」

 指差した先にあるのは理科室とか音楽室とかが入っている校舎。わざわざ遠い場所に行く人もいないだろう。
 教室の校舎から離れていく程、瑞希さんの顔色はどんどん悪くなっていく。え、なんで?

「ここなら誰も来ないね」
「あの、ごめんなさい!」

 トイレに入った途端、瑞希さんは教科書に載っているようなお辞儀を見せる。

「どうしたの!?」
「私のおしっこで濡らしちゃって!」

 濡れたもの…?

「そんなのあったっけ?」
「あの、上履きです。葛城さんの下まで流れて行ってて」

 あれか? あれはでも。

「下が濡れたからってなんなの? 別に染みにもなんないし」
「す、すみませんお願いですから叩かないで下さい!」

 瑞希さんはとうとうお辞儀ではなくトイレの床面に座って土下座の体勢を取った。

「すみません、すみません、こんな汚い私ですみません」

 え、なんで私瑞希さんから土下座するくらい謝られてるの? 重要な話はしてないのに。

「いや、あの、取り敢えず立って下さい」
「は、はい」

 上げた顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。いや、だからなんでそんな怯えられてるの?

「私が叩くような人に見えるの?」
「違うんですか? こんな人気の無い場所に連れてきて。この前の私の漏らした時の報復じゃないんですか?」

 違う。

「そういうのじゃないよ。ただ2人で話したかっただけ」
「そうですか」
「取り敢えず顔、洗ったら?」
「はい」

 トイレの手洗い場で瑞希さんは顔を洗った。

「クラスの皆は別に中川の事をいじめようなんて考えてないよ。意外と優しいクラスだったんだね」

 本当に良かった。そんな学級崩壊した雰囲気の悪い場所に居たくないから。

「そうなんですね。私はてっきりクラスでいじめられる前兆で、葛城さんが1番に来たのかと」

 1番にいじめに来る人と思われてるなんて心外だった。私は無害そうな顔ってずっと言われてるのに。

「私がいじめる人に見えるの? そう言う人達は本田とか田中とかでしょ」
「まあ、はい。葛城さんはいじめてる人の奥で見ている気がします」




「でもいじめられていないって言われてもそんな気はしないんですよね…」
「なんで?」

「だって、皆私のこと漏らした女だって、変な目で見てくるんですよ。葛城さんもそんな人だと思ってました」
「いや、私は…」
「だって葛城さん今までの私のこと気にしていなかったのに、最近チラチラと見てくるようになったじゃないですか」

 それは……おもらしした時の瑞希さんに興奮を覚えたからであって変な目といえば、変な目だけど、どちらかと言うと性的な目で…

 チラチラと変な目で見ていたって言われたのを訂正しようと思ったけど、ここで最初の目的を思い出す。

 私をおもらしさせてほしい…と。

「…」
「ほらそうじゃないですか。いじめてないなんて言ってますけど、心の中では馬鹿にしてるんですよ」

 馬鹿になんてしてない。ただ、ただ羨ましいだけ。


「だったら良いよ」

「え?」
「中川さんがしたように、私も漏らさせたら良いじゃん!」
「何言ってるんです!?」




「葛城桃香、中学2年生。葛城家の一人娘!

 お母さんは死んで、育てのおばあちゃんも死んで、お父さんは家に帰ってこない!

 趣味はゲーム!

 好きな食べ物はケーキで、嫌いな食べ物はトマト!

 部活はサボってて実質フリー!

 トイレは長い方で最後におねしょしたのは小学五年生!」




 瑞希さんは口を開けて私を見ていた。

「どうしたの!? 私を漏らさせるのにまだ何か情報がいる?」
「何言ってるの!?」



 私は連行された



「えっと、何?」

 校舎裏の木陰。たまにカップルが来ることで噂の場所に私達は居た。

「あれだけ言うならあなたは別に馬鹿にしてないって事で良いよね?」
「そう…だよ?」

 冷静になってみると何かとんでもない事を口走ってた気がする。小学五年生でやったおねしょなんて墓場まで持っていこうとしていたものだ。

「というより、敬語じゃなくなってるけど…」
「敬語のままが良かった?」 

 瑞希さんの適当な敬語はいつの間にか消えていた。

「どっちでも気にしないよ。ただ、同じクラスなのに敬語の方が不思議だっただけ」
「絡みなかったからね。だから私を呼び出した時も何かされるのかと思った…」

 顔には消えない影が映り込んでいた。

 今までも、これからもあのクラスでいる限りこの影は消えることはないだろう。いわば脅迫されているのと同じ。
 下手に何か言えば、蒸し返されるのは瑞希さんの方だから。

 でも瑞希さんは明るい声色で言った。

「何か、ありがとね葛城さん。クラスの中で一人でも味方が居るってだけで気が楽になったよ」

「別にさん付けじゃなくて良いよ」

 何か恥ずかしくて顔を逸らす。敬語の中に混じったさん付けは、何処か違和感があった。


「え、じゃあ桃香?」

「飛ばしてそこまで行くんだ…じゃあ瑞希?」
「そうだよ、私は瑞希だよ桃香」

 いつの間にか私達は仲良くなっていた。


 時計を見るともうそろそろ昼休みも終わりの時間に近付いている。教室に戻った方が良いだろう。

「瑞希、そろそろ戻ろう」
「そうだね」




「あ、桃香、「私を漏らさせていい」とか言ってたよね?」
「言ったけど?」

 そういえば最初の目的はそうだった。何かあるのかな?

 正直瑞希も私が言ったことはあまり真に受けていない気がしている。
 私はおもらしさせて欲しいと思って瑞希に話しかけたし、あんな恥ずかしいことも言った。
 けれど何か仲良くなれたし、私の欲望通りに進まなくても取り敢えずこれで良いかなと思っていた。

 教室に戻る途中、瑞希が話し出す。

「私ね、確かに思っていたことがあったんだ。直接的に何も言われないし、無視されてる訳じゃない。でもなんだか空気感が違ってる気がして、何だかモヤモヤしてたの…」

「だから何だか嫌になって。皆教室の中で漏らせばいいのにって」

 立ち止まる。私は瑞希を見た。

「だかろ桃香の要求通りあなたを漏らさせるね。」

 そう言われただけなのに顔が熱くて、ドクドクと心臓の音が煩い。どうしてだろう。



「あ、でも友だちに私と同じ思いをさせるのも嫌だし、最初は休日で良い?」

「拒否権は無いよ。桃香が言ったからね!」

「うん」

 そう話す瑞希は何故か目が輝いていた。


(なんか上手くいったな…)

 隣に座る瑞希と話しながらそう思く。



 教室に入って座った時、これから始まることへの期待で少しだけパンツが濡れた。
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