希望職種モブって言わなかったかしら?

える

文字の大きさ
上 下
13 / 22
はて、婚約とは編

2

しおりを挟む
そうして未来の皇帝と約束した日が来たわけだが。

「うーん、こまった……」

「どうしたんですか?」

「きんとれのまえに、じこしょうかいしなきゃいけねぇことはおぼえてたんだが……」

「あ、そういえばまえにしませんでしたね。しつれいしました。ぼくは、ディオ・セバールだいさんおうじです」

「お、おお、ありがとな……。ついでにあたいのなまえわかるか?」

「…………………え?」

一瞬固まった未来の皇帝ことディオ。やっぱりそうなるよな。まさか自分の名前を忘れたんですか?そんなわけ……ないですよね?とディオが目で語るのがわかる。そのまさかなんだよなぁ……前世での自分の名前ならわかるんだが。

「おじょうさまとばかりいわれてじぶんのフルネームがわかんねぇんだよ……あ、おじょうさまがあたいのなまえか?」

「さすがにちがいますね」

「だよなぁ」

おう……めっちゃ呆れられてるのがわかるぞ?いや、私でもそうなるだろうけど。いくら勉強から逃げてたとはいえ名前くらい知っとかないとさすがにやべぇもんなぁ。

「ルルリア・サブレこうしゃくれいじょうでしたよね」

「おお……!すげぇな、しってたのか!」

「まあ、こんやくしゃのなまえですし……」

「わ、わりぃ……あたい、あんたのなまえしらなかった……」

「じぶんのなまえをわすれるかたにきたいはしてませんから、だいじょうぶですよ?」

「うぐ……」

そりゃそうだ。なんだろう、胸が痛い。

「でも、これからはおぼえてくれるとうれしいです」

「お、おう!ディオだよな!」

「!………ええ、そうです」

一瞬驚いた顔をされたが、間違ってなかったようだ。さすがにさっき聞いた名前を忘れるほどバカじゃない。

「じぶんはともかく、ディオのなまえはわすれねぇよ!」

名前呼ばれただけでなんかすっげぇ嬉しそうにされちゃあ寧ろ忘れられないしな。なんか顔がいいからいちいち反応が可愛く見えるし。

「じぶんのなまえもわすれないようにしましょうよ……」

「わすれたときはディオにじこしょうかいたのむ。かわりに、あたいがディオのじこしょうかいしてやるよ!」

「はは……っじこしょうかいはじぶんでするものですよ?」

耐えきれなかったとばかりに笑いながらも最もなことを言うディオ。やっぱ人の楽しそうに笑う姿を見るのは好きだ。何よりディオは気のせいか会った時からどうも自分を抑え込んでいるように見えたから。やっぱ神様が言ってた髪の色のせいなのかもしれない。黒髪なんて前世じゃ一番多い色だったっつーのに。外見でとやかく言うやつはろくなのがいないのを私は知っている。

「こんやくしゃなんだからたがいのじこしょうかいぶんどってもいいだろ?きょうゆうざいさんてきななんかでさ」

「じこしょうかいが、きょうゆうざいさんってきいたことないですよ?はははっだめだ、おなかいたいっ」

「そんなおもしろいかー?」

まあ笑うのはいいこととはいえ、ディオは笑いすぎな気がしなくもない。何がディオをそこまで笑わせたのかはわからないが、しばらくディオが落ち着くまで目的の筋トレができることはなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。

ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」 ──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。 「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」 婚約者にそう言われたフェリシアは── (え、絶対嫌なんですけど……?) その瞬間、前世の記憶を思い出した。 彼女は五日間、部屋に籠った。 そして、出した答えは、【婚約解消】。 やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。 なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。 フェリシアの第二の人生が始まる。 ☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない

天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。 だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。

処理中です...