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どうしてこうなった編
プロローグ
しおりを挟む煌びやかなドレスに目が痛くなるほど輝く宝飾品。ホールの中心で踊る貴族達。
一角ではとある人物を囲む令嬢たちの輪が出来ているし、私の周りには下級貴族の令息たちの群がりがある。
私、モブになりたいって言わなかったかしら、シノなんちゃら神さん?
_____________
事の発端は8年前。私が"私"として産まれる前の世界の話。その日は散々だった。
朝はアラームが壊れて寝坊するし、遅刻ギリギリで滑り込んだら風紀に目をつけられちゃうし、苦手な数学の授業で当てられまくったうえに答えられなかった分だけ課題を追加された。鬼畜か。
昼休みには初対面の男子生徒に告白されて、よく知りもしない人とは付き合えないと断ったら、その生徒の取り巻きに変な噂を流された。
それにこれまた知らない女子生徒が急に教室に来たと思えば「この泥棒猫っ!!!」なんて古風なセリフを吐いて汚水をぶっかけてきやがったのよ。
保健室で着替えを借りて1時間休ませて貰ってたら、部活の後輩男子が来て襲われそうになるし、間一髪の所で先生に助けられたと思ったら担任に呼ばれて噂を止めるようにとか言われるし、同じことを風紀にも3回言われたっつーの!!
もう何だかフラストレーションが限界に達しそうだったから早退させてもらったんだけど、帰り道の交差点で白い仔犬が飛び出すのを見たの。
まあ幸い信号は青だったんだけど、視界の右端から猛スピードでトラックが突っ込んでくるのが見えたのよ。飼い主らしき人が周りにいなかったから野良だったんだろうけど、この先いい飼い主に出会うかもしれない仔犬の未来を信号無視のトラックが奪うなんて許せなくて、私は飛び出した。
運動神経をフル稼働させて、何とか仔犬を道の向こう側に押し飛ばすことが出来たのだけど、私は間に合わなくてそのまま轢かれて死んだ。
最後に何か湿った物が顔中を這い回った気がしたけど、もう意識なんてなくなる寸前。
あ、私死ぬんだなって思った時には真っ白な雪原にたってた。
「ノォォォルゥゥゥ!!!だから下界に降りたら危ないって言ったでしょ!?何してるんだよ!!!もうちょっとで死ぬとこだったんだからね!?」
【あああああ主人!悪かった!悪かったから!後ろ!後ろをみてくれ!!】
見た事のある仔犬が人間と同じ言葉を喋ってる。それに後ろ姿しか見えないけど、少年?はかなりの薄着。私も死んだ時のまま、ジャージ姿なんだけどこの雪原は不思議と寒くない。
ふと、背中を向けていた少年がこちらを向いた。
「ああ、良かった!来れたみたいだね!
僕はシノフィリア。今回はノルが危ないところを助けてもらったみたいで、本当に感謝しています。」
「ノル?何のことかしら?」
「この白い毛玉ですよ。神獣フェンリルの幼獣体なんだ。仔犬に見えるでしょ?
本来ならもっと成長も早いんだけど、僕と契約したからゆっくりなんだ。」
「毛玉って… てか、飼い主いたんだ。なんであんな所で野放しにしてたの?死ぬとこだったのよ?」
「それが、最近僕が仕事ばかりで構ってあげられなかったから、早めの反抗期が来ちゃったみたいで… いつも下界は危ないから降りちゃダメっていってるんだけどね…」
【違う!主人が疲れた顔をしてたから、あの近くに咲いていたタンポポとやらを摘んでプレゼントしようとしたのだ!反抗期などではない!!】
「あー、もう頭ぐちゃぐちゃ。とりあえず、私は神獣フェンリルとやらの命を助けたってのは分かったけど、面倒ごとは嫌いだから簡単に質問を3つ。1つ、ここはどこ?2つ、貴方は何者?3つ、これから私はどうなるの?」
「ここはフェンリルの住まう霊峰クリジスタ。僕は複数の世界を管理する神界の中間管理職みたいなものだよ。君にはいくつか選択肢を用意出来る。ただし僕もまだ万能じゃないから、条件が着いちゃうけどね。」
「聞かせて。」
「まず僕は、君がいた にほん の おとめげーむ だったかな?その世界全てを管理してるんだ。君からすればげーむかもしれないけど、その中身もまた別次元に存在しているから、その管理者も必要になるってことだね。ここまでは大丈夫?」
「ええ、所謂世界線ってやつよね?それで?選択肢っていうと転移、転生、輪廻のどれかかしら?」
「君は話が早くて助かるなぁ… その3つで合ってるよ。転移は今の君の容姿そのままで乙女ゲームの中に飛び込むこと。転生は新生児の状態から人生をやり直すこと。輪廻は魂の状態で然るべき転生の輪に並び入ること。
転移と転生の場合は前世の記憶を残すことができるけど、輪廻の場合はできないよ。稀に思い出す人がいるみたいだけど、それはただの偶然だ。オススメは転生。とっても幸せになれそうな家族を僕が選ぶからね!」
「じゃあ、転生でいいわ。それよりも神が一端の人間の人生をいじくっていいの?」
「今回のことは僕達神界でもイレギュラーだからね。僕が責任をもって、第2の人生を謳歌させようと思ったんだ。迷惑なら輪廻の輪にねじ込むけど、どう?」
「退屈は面倒ごとよりも嫌いよ。」
「そう、それなら転生で決まりだね!んーっと、あ!君くればらのユーザーだったの??しかもかなりのクラスタだね!よーし、転生先はここにしよう!希望の職業とかキャラはある?」
「絶っっっ対にモブ!!王都の街人Fくらいがいいわ!!」
「えー?まあその辺はいい感じにチョキペタしちゃおー!あ、魔力は ちーと ってやつで高め高め!僕の加護と、MP・HP・SPのゲージ無限を忘れちゃいけないよね!
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まあ、幸せとやらを掴みに行きますか。チート少女モブ山モブ子の人生開幕よ!!
「あ、言い忘れてたー!記憶がもどるのは3歳からだよー!それくらいからみんな喋り出すから、普通にしゃべって問題ないからね!精霊も見えちゃうけど、ビックリしないでね!あと見えることは秘密の方がいいかも!じゃっ!頑張れ!」
ほんっっっっと、この神様呪ってやろうか…
私が悪役令嬢だなんてこれっぽっちも、1mmたりとも聞いてないんですけど!!!!
こんなんで幸せなんかつかめるかぁぁぁぁぁあぁあ!!!!!!
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