つまりそれは運命

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BL小説大賞 エントリー記念番外編置き場

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 知っていた。この瞳を見れば俺はもう隠せないことを。この瞳も、この匂いも、この声も、レオルの全てが俺を包み込んで、引き摺り堕としていくんだ。

 どうして、どうして追いかけるんだ。どうして捨ておいてくれないんだ。俺は、俺は何を間違ったんだ?どうして?なんで?分からない、ワカラナイ。

「セラ、俺はお前を愛している。俺の周りで心無いことを言う野蛮なものたちは皆排除した。君が育ったスラムは直ぐに国の援助が入って、今ではとても綺麗な観光地になった。身寄りのない子供たちは王族が作った孤児院で元気に暮らしている。戸籍がないこと、身寄りがないこと、そのどちらも俺の妻であることに対する汚点などではない。」

「…なんで?俺、アンタから逃げたのに。」

「俺は狼だ。逃げた獲物ツガイはは捕まえないと安心できない。」

「怒って、る、よな…」

「怒っていない。いや、怒っている。ジャンはどうしてこんなに顔がいいんだ!こんなに顔が良かったら、変な虫が沢山着くじゃないか!」

「んなっ!そんなの、かっこいいレオルの血を引いてるんだからしょうがないだろ!?俺だって変な女に捕まんないか心配してんだよ!それに、多分だけどジャンはαだから、その、変なΩにフェロモンレイプされないかとか、気が気じゃないんだぞっ!!」

「だったら俺のところで鍛えればいい!そのためにセラは正式に俺の妻になれ。」

「でもっ、それはやっぱり…」

「だぁー!!!もういいから2人ともここにサインして!!はい、血判も!」

「じ、ジャン?これ、何?」

「俺が用意しておいた婚姻用魔法契約書だな。じゃん、俺のサインは既にしてあるぞ。」

「あ、そっか。はい、じゃあ母さんもサインして?ね?ほら、サイン!」

「で、でもでもっ、ジャンだって大変になるんだぞ?騎士団の先輩に虐められたりとか、変な輩に絡まれたりとかっ」

「母さん心配しすぎ。俺は大丈夫だし、何よりやっと家族全員揃うんだよ?そっちの方が俺にとっては大事だよ?」


 俺の子マジ天使。優しくてかっこよくて笑顔が可愛いってほんと誰に似たんだよ。あ、レオルか。

 俺が2人の顔に弱いのは多分バレバレだし、何より俺だって未だにレオルのことが好きなわけだし、これはもう腹を括るべきなのか?

 いや、でも、だって…


「セラー?おいで。」

「あ、あうっ、それは、反則だろぉ…」


 もう、なんでもいいや。俺、もう一生レオルから離れねえ。































 一月後、ジャンがお兄ちゃんになったのはまた別のお話―






     ~END~
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