短編集

初恋 × 初恋【オメガバース】

5

　リビングまで俺を運んだ泰治は、寝室の場所を聞いてタオルや着替えを取りに行ってくれた。

　それはもう凄まじい理性と忍耐力だよ。普通のαなら、番が発情してるとすぐ襲っちゃうらしいんだけど、泰治は必死に理性をかき集めて奮闘してくれてる。

　さっきついに鼻ティッシュしだした。フェロモンを嗅がないようにね。間抜け面で面白いよ。


　それでまあ、本題なんだけど。どう切り出したらいいんだろう？発情期に入ってそもそもうまく喋れるかもわかんねぇし…


「それで？一ヶ月も無視し続けたのは何でだったの？」

「……。泰治が悪ぃ。」

「…？俺ほんとに心当たりがないんだ。教えてくれない？このままだんまりされてたら、謝罪も説明もできない。」

「……一ヶ月前、駅前の大通りを歩いてるのを見た。女といた。そんで、なんか、顔も赤かったし、だらしない顔で鼻の下も伸ばしてたから…
　俺ってやっぱオモチャだったんかなって。」

「…っ！？ち、ちょっとまって！前にも行ったけど俺はΩをオモチャだとか思ったことないし、番の夏希より大切で愛してるものなんてないよっ！！」

「じ、じゃあ！誰、なんだよ… あの女…」



　うわ、今の俺面倒くさすぎねぇ？もうちょっとなんかあるだろ…



「あれはっ、姪なんだ…！」

「…へっ？姪…？え、親戚！？」

「ああ、一ヶ月前は親戚の集まりがあって、道中で姪と遭遇したから姪の家族、俺の兄家族になるが、そこに合流したんだよ。」

「え、、、じゃあ俺が見たときの顔はなんだったんだよ…？」

「ああ、合流する前に夏希の話をしてたからそれじゃないかな？自覚してなかったんだけど、夏希のことを話してる時は表情が崩れまくるらしくてね…
　昨日も会社に戻ってから秘書に怒られたよ。だらしないって。」



　んだよそれ、完全に勘違いしてたんじゃねぇか。
　まじ俺ダサすぎ…