3 / 4
三。
しおりを挟む
『皆さん、お食事中に失礼します』
高鳴る鼓動を抑えることができないでいた。額からは、冷や汗が流れてくる。俺は放送室のマイクの前で座り、口元を押えて小さく咳をした。背後には、担任教師が腕組みをしている。
『少しだけで良いので、俺の話を聞いて下さい』
職員室で必死になって懇願し、担任教師が一緒に、学年主任・教頭・校長と説明し許可を取り付けてくれた。
『俺の大切にしていた銀時計が、無くなってしまいました。それは、亡くなった祖父が大切にしていた時計です。どうか、心辺りがある人は、返して下さい』
俺は、少しマイクから離れ、俯いた。そして、小さく息を吐く。
『俺は犯人探しがしたい訳ではありません。大切な銀時計を返してくれさえすれば、それで十分なんです』
心臓が警鐘を鳴らすかのように、大暴れしている。制服の左胸を掴んで、目を閉じた。
『俺は、嘘をつきました。祖父や親友そして、多くの友人に。俺が大切にしている銀時計は、俺の物じゃありません。俺が祖父から、盗んだんです。大切な銀時計がなくなって、悲しんでいる祖父を見ながら、嘘をつき続けました。そして、正直に打ち明ける前に、祖父は亡くなってしまいました』
―――マサキ・・・じいちゃんの懐中時計を知らないか?
祖父の最後の言葉が頭の中を駆け回る。祖父の悲しそうな顔が、刻印のように張り付いている。
祖父のあの悲しそうな顔は、銀時計がなくなったからでは、ないのかもしれない。
祖父は大切な銀時計を、俺が盗んだことを知っていたのかもしれない。
そして、最後に、告白するチャンスを与えてくれたのかもしれない。
『お願いします。心当たりがある人は、返してください。直接、返すのが気まずかったら、俺の机に入れておくなり、先生に預けるなりどんな方法でも構わないので、お願いします』
俺はマイクに向かって頭を下げた。重力に負けるように、涙が零れそうになった。
『どうか、お願いします』
声が震えて、しっかり伝わったのか、分からなかった。
高鳴る鼓動を抑えることができないでいた。額からは、冷や汗が流れてくる。俺は放送室のマイクの前で座り、口元を押えて小さく咳をした。背後には、担任教師が腕組みをしている。
『少しだけで良いので、俺の話を聞いて下さい』
職員室で必死になって懇願し、担任教師が一緒に、学年主任・教頭・校長と説明し許可を取り付けてくれた。
『俺の大切にしていた銀時計が、無くなってしまいました。それは、亡くなった祖父が大切にしていた時計です。どうか、心辺りがある人は、返して下さい』
俺は、少しマイクから離れ、俯いた。そして、小さく息を吐く。
『俺は犯人探しがしたい訳ではありません。大切な銀時計を返してくれさえすれば、それで十分なんです』
心臓が警鐘を鳴らすかのように、大暴れしている。制服の左胸を掴んで、目を閉じた。
『俺は、嘘をつきました。祖父や親友そして、多くの友人に。俺が大切にしている銀時計は、俺の物じゃありません。俺が祖父から、盗んだんです。大切な銀時計がなくなって、悲しんでいる祖父を見ながら、嘘をつき続けました。そして、正直に打ち明ける前に、祖父は亡くなってしまいました』
―――マサキ・・・じいちゃんの懐中時計を知らないか?
祖父の最後の言葉が頭の中を駆け回る。祖父の悲しそうな顔が、刻印のように張り付いている。
祖父のあの悲しそうな顔は、銀時計がなくなったからでは、ないのかもしれない。
祖父は大切な銀時計を、俺が盗んだことを知っていたのかもしれない。
そして、最後に、告白するチャンスを与えてくれたのかもしれない。
『お願いします。心当たりがある人は、返してください。直接、返すのが気まずかったら、俺の机に入れておくなり、先生に預けるなりどんな方法でも構わないので、お願いします』
俺はマイクに向かって頭を下げた。重力に負けるように、涙が零れそうになった。
『どうか、お願いします』
声が震えて、しっかり伝わったのか、分からなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ESCAPE LOVE ―シブヤの海に浮かぶ城―
まゆり
青春
フミエは中高一貫の女子高の3年生。
長身で面倒見がよく、可愛いと言われたことがなくて、女子にはめちゃくちゃモテる。
学校帰りにシブヤで、超かわいいエリカちゃんの失恋話を聞いていたら、大学生の従兄であるヒロキに偶然会い、シブヤ探訪に繰り出し、予行練習にラブホに入ってみようということになり…。
夏の出来事
ケンナンバワン
青春
幼馴染の三人が夏休みに美由のおばあさんの家に行き観光をする。花火を見た帰りにバケトンと呼ばれるトンネルを通る。その時車内灯が点滅して美由が驚く。その時は何事もなく過ぎるが夏休みが終わり二学期が始まっても美由が来ない。美由は自宅に帰ってから金縛りにあうようになっていた。その原因と名をす方法を探して三人は奔走する。
偽者の飼い主と二十分の散歩
有木珠乃
青春
高校一年生の児玉葉月は毎夜、飼い犬のバニラを散歩させていた。同じくクラスメイトで人気者の関屋真宙も、飼い犬のあずきを夜にさせていたため、一緒に散歩することに。
いくら犬の散歩でも、夜は危険だからという理由で。
紳士的で優しい関屋に、好意を寄せていた葉月にとっては願ってもいないことだった。
けれどそんな優しい関屋に、突然、転校の話が飛び込んくる。
葉月は何も聞いていない。毎夜、一緒に散歩をしているのにも関わらず。
昨夜は何で、何も言ってくれなかったの?
ショックのあまり、葉月は関屋にその想いをぶつける。
※この作品はノベマ、テラーノベルにも投稿しています。
練習帰りのソフトクリームがいつも楽しみだった
月並海
青春
「一足早い卒業のお祝いに花束をあげよう」
吹奏楽部を退部した親友と私の話。
(web夏企画様への提出作品です。素敵な企画開催ありがとうございます。)
裏切り掲示板
華愁
青春
カテゴリーは〈童話〉ですが〈その他〉です。
それを見つけた時、あなたはどうしますか?
あなたは誰かに
裏切られたことがありますか?
その相手を憎いと思いませんか?
カテゴリーは〈童話〉ですが〈その他〉です。
ここには何を書いても
構いませんよ。
だって、この掲示板は
裏切られた人しか
見られないのですから……
by管理人
ボックスアウト~リングサイドより愛をこめて~
弐式
青春
地方都市にあるキグレボクシングジムに入会してきた女子高生・高野つかさ。中学生以下の大会で優勝した経験のある将来有望な女子ボクサーである。
そのキグレボクシングジムでアルバイトをしている大学生の清水サトル。夢破れた男にとって、彼女の存在は眩しく見えた。
そのつかさは、ジムでトレーナーを務める川内将輝に複雑な感情を抱くようになる。
サトルは、そんな彼女の複雑な感情の正体を知ってしまい……。
※作中の舞台は2014年に設定しています。そのため、現在では開催されていない大会名が出てきたりしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる