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第五話
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息を飲んで固まっていた。拳銃を突きつけられた状態では、身動き一つできない。ゆっくりと、目玉だけを上に動かしていく。しかし、その者の姿は、視界に入ってこない。俺は観念して、大きく息を吐いた。
「言い残す言葉はないが、最後に煙草を一本吸わせてくれ」
「ああ、分かった」
汗でベトベトになった手で、煙草とジッポを抜き取った。一瞬、拳銃を素早く抜き出そうかとも思ったが諦めた。笑ってしまいそうなほど、冷静だった。人間の死の間際は、こんなにも呆気ないのだろうか。俺が見てきた連中のように、醜く命乞いをする事だけは、したくなかったのも原因なのかもしれない。煙草を咥え、ジッポで火をつけた瞬間であった。
発砲された。しかし、飛び出したのは、弾丸ではなく、液体であった。その液体によって、煙草の火が消されてしまった。俺が呆気にとられていると、膝の上で少女が笑い出した。
「もう、ママ遅いよお」
「ああああ! ごめんなさいねえ、サラ」
俺に拳銃を突きつけた人物は、少女の母親のようであった。俺は、頭が混乱している、なぜ、この女は、生きている? 最上級に位置する殺し屋二人に狙われて、逃げられる訳がない。俺の膝の上から、飛びのいた少女は、母親に抱き着いている。
「ねえ、ママ? さっきのなに? お芝居?」
「ええ、そうよ。この人の真似をしてみたの」
親子そろって俺を見て、笑っている。苛立ちもなにも感じない。体だけではなく、思考も固まっていた。何がなんやら、訳が分からない。母親に詰め寄ろうとしたが、体の痛みで言う事をきかない。痛みで悶絶していると、徐々に頭の中の靄が晴れていく。
「お前は、どうしてここにいる? どうして、生きているんだ?」
「どうして? そんなの簡単よ。私の方が強いからよ」
確かに、強い方が生き残る、至極真っ当な意見だ。しかし、腑に落ちない。相手は、あのカマキリとスズメバチだぞ?
「虫より、蛇の方が強いに決まっているじゃない?」
「蛇・・・だと? ・・・コブラか!? お前が!?」
俺が目を丸くしていると、親子は互いに見つめ合い『ねえー?』と、首を傾けている。この女が、あのコブラとは・・・瞬間的に、俺は口と鼻を手で塞いだ。今更、こんな動作なんの意味もなさないが、反射神経とはそんなものだ。コブラの得物は、毒だと聞いた事があった。毒ガスを散布したり、液状の毒を放出するらしい。それゆえに、コブラ。
「安心なさい。あなた、解毒剤食べたでしょ?」
「・・・解毒剤だと?」
「ええ、この子に飴もらったでしょ? あれがそうよ」
視線を少女に向けると、彼女は『ニシシ』と白い歯を見せた。そして、母親の首に腕を回し、抱き着いた。
「ねえ、ママ! 聞いて聞いて! あたしね、お姫様抱っこしてもらったの! しかもね、命がけで守ってもらったの! あたしドキドキしちゃった! 本物のお姫様みたいだったのよ! それからねえ、このおじちゃんとても運が強いの。あたし、おじちゃん気に入っちゃった! だからね・・・」
少女は、母親から離れて、俺の方を見た。
「殺しちゃダメだからね」
「分かったわよ。運が強いのは、一目瞭然ね。生きているのだから」
親子は、俺を見つめて、目を細めた。俺は、まるで笑えない。
「言い残す言葉はないが、最後に煙草を一本吸わせてくれ」
「ああ、分かった」
汗でベトベトになった手で、煙草とジッポを抜き取った。一瞬、拳銃を素早く抜き出そうかとも思ったが諦めた。笑ってしまいそうなほど、冷静だった。人間の死の間際は、こんなにも呆気ないのだろうか。俺が見てきた連中のように、醜く命乞いをする事だけは、したくなかったのも原因なのかもしれない。煙草を咥え、ジッポで火をつけた瞬間であった。
発砲された。しかし、飛び出したのは、弾丸ではなく、液体であった。その液体によって、煙草の火が消されてしまった。俺が呆気にとられていると、膝の上で少女が笑い出した。
「もう、ママ遅いよお」
「ああああ! ごめんなさいねえ、サラ」
俺に拳銃を突きつけた人物は、少女の母親のようであった。俺は、頭が混乱している、なぜ、この女は、生きている? 最上級に位置する殺し屋二人に狙われて、逃げられる訳がない。俺の膝の上から、飛びのいた少女は、母親に抱き着いている。
「ねえ、ママ? さっきのなに? お芝居?」
「ええ、そうよ。この人の真似をしてみたの」
親子そろって俺を見て、笑っている。苛立ちもなにも感じない。体だけではなく、思考も固まっていた。何がなんやら、訳が分からない。母親に詰め寄ろうとしたが、体の痛みで言う事をきかない。痛みで悶絶していると、徐々に頭の中の靄が晴れていく。
「お前は、どうしてここにいる? どうして、生きているんだ?」
「どうして? そんなの簡単よ。私の方が強いからよ」
確かに、強い方が生き残る、至極真っ当な意見だ。しかし、腑に落ちない。相手は、あのカマキリとスズメバチだぞ?
「虫より、蛇の方が強いに決まっているじゃない?」
「蛇・・・だと? ・・・コブラか!? お前が!?」
俺が目を丸くしていると、親子は互いに見つめ合い『ねえー?』と、首を傾けている。この女が、あのコブラとは・・・瞬間的に、俺は口と鼻を手で塞いだ。今更、こんな動作なんの意味もなさないが、反射神経とはそんなものだ。コブラの得物は、毒だと聞いた事があった。毒ガスを散布したり、液状の毒を放出するらしい。それゆえに、コブラ。
「安心なさい。あなた、解毒剤食べたでしょ?」
「・・・解毒剤だと?」
「ええ、この子に飴もらったでしょ? あれがそうよ」
視線を少女に向けると、彼女は『ニシシ』と白い歯を見せた。そして、母親の首に腕を回し、抱き着いた。
「ねえ、ママ! 聞いて聞いて! あたしね、お姫様抱っこしてもらったの! しかもね、命がけで守ってもらったの! あたしドキドキしちゃった! 本物のお姫様みたいだったのよ! それからねえ、このおじちゃんとても運が強いの。あたし、おじちゃん気に入っちゃった! だからね・・・」
少女は、母親から離れて、俺の方を見た。
「殺しちゃダメだからね」
「分かったわよ。運が強いのは、一目瞭然ね。生きているのだから」
親子は、俺を見つめて、目を細めた。俺は、まるで笑えない。
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