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第三章 世界創造ー三五〇年前ー
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地獄絵図。これほどまでに、その言葉を具現化した状況があるのだろうか。家屋は朽ち果て、田畑は荒れ果てている。なによりも、悪臭が眩暈を起こすほど、鼻孔を刺激する。人が焼かれた匂いだ。もはや、誰が正義で誰が悪なのかも分からない。やらなければ、やられるだけだ。我が身を守る為、大切な者を守る為、人を殺す。そこに正義があるのだろうか。自分が正義で、相手は悪である。そう言い聞かせなければ、精神が崩壊してしまう。
人の子を守る為に、人の子の命を奪う。
足し算や引き算では整理できない現実が、目の前に広がっている。
嗚咽を繰り返し、涙を流している氷雪の女神アルプ=ウィントは膝から崩れ落ちた。呆然と目の前の惨状を眺めている。血の匂い、肉が焼ける匂い。大切な者を失った人の子の泣き叫ぶ声。耳を塞いで、目を閉じた。
「それは、現実逃避だ。アルプよ。己を正当化する事などできぬ。己の犯した罪は背負うべきだ」
大柄の女性、灼熱の女神グルー=マーサは、厳しい表情でアルプを見下ろしている。
「グルー様、私達に正義はあったのでしょうか? 人の子を守る為に、人の子の尊い命を奪う行為に・・・」
「これは戦争だ。どちらも正義であり、どちらも悪だ。我々は、この地の民を守らなければならぬ」
「しかし、私達の過ぎた力が、争いを生んでいるのでは、ありませんか?」
泣きながら見上げるアルプに、グルーは腕組みをして遠方を眺めた。
「争いは争いを生む。どれだけ、己を正当化しようとも、身内を殺された者は、殺意を抱く。しかし、殺意を払わなければ、この地の民は根絶やしにされた。全ての業は、我々が呑み込まねばならぬ」
「共存共栄は、できないのですか?」
「不可能だ。人の欲望は際限がない。富で溢れた地は、格好の的だ。この海に囲まれ独立した土地は、世界中の国が喉から手が出るほど、手に入れたいのだろう」
「富や幸福を求める為に、命を落とす。本末転倒ではございませんか?」
「人の子とは、愚かな者だ。欲に上限はなく、欲こそが原動力なのだ。酷く脆く、酷く醜い。しかし、そんな矮小な人の子だからこそ、我々は愛おしく想うのだ」
最も強くリーダー格であるグルーは、眉一つ動かさず、惨状を目に焼き付けるように、方々を見つめている。
「我の熱で人を焼き殺し、アルプの氷で人の心臓を止め、ゾマの風で人を切り刻み、イスブクの霧で人の精神を崩壊させた。それが逃れる事のできぬ現実だ。受け入れ立ち上がるしか道はない。泣き叫び、うずくまっておれば争いが止まるのであれば、我もそうしよう」
灼熱の女神、グルー=マーサ。
氷雪の女神、アルプ=ウィント。
風雲の女神、ゾマ=スリング。
霧雨の女神、イスブク=フォル。
四人の女神が、人の子を守る為に、人の子を殺害した。
海に囲まれた島国には、四人の生ける伝説である女神が君臨している。豊富な資源は勿論、魔力を用いて圧倒的な戦闘能力を誇る四人は、驚異のなにものでもない。しかし、圧倒的な戦力は、どこの国も欲して止まない存在だ。手に入らないのであれば、排除してしまえ。この名もない島国は、世界中から狙われていた。
『我々は、何も求めない。だから、干渉するな』
幾度となく警告をしているにも関わらず、欲をかいた他国の戦力は、この地を攻めてくる。四人の女神は勿論、この地に住む民も疲弊し、辟易していた。
「グルー姉様」
「状況はどうだった? ゾマよ」
「・・・はい。人の子の戦士は、一人を除いて全滅です。多くの非戦闘員も被害は甚大でございます。今回の戦いは、これまでに類を見ない惨状でございます・・・もはや、悲劇としか言いようのない有様で・・・」
「・・・そうか・・・無念だ」
腕組みをしたグルーは、固く目を閉じた。ゾマは、疲れ切った顔で、その場で座り込んだ。皆の様子を伺っていたイスブクが、戸惑いながら歩み寄った。
「グルー姉様。今回の敵は、他国の連合軍でした。魔力と化学兵器を融合させた戦力は、わたくし達に引けを劣らないものでしたわ。今回は、退ける事ができましたが、次はどうなる事か・・・何か手を打たなければ、こうしている内にも、次の敵が攻撃をしかけてくるかもしれませんわ」
「そうだな。今回の連合軍を退けた我々を打ち倒せば、一気に名が上がる。富だけではなく、名声を求める者どもが押し寄せてくる可能性は高い」
「おっしゃる通りですわ。今回の件は、すぐに世界中に知れ渡るでしょう。魔力だけならば、わたくし達の足元にも及びませんが、科学技術の向上には目を見張るものがございました。そして、魔力と科学技術の融合が、これほどまでの威力を持つとは、想定外の事ですわ」
「この地の人の子に、科学技術の向上を求める事はできぬ。独立した島国、ましてや標的となっているこの国に、技術や知識の流入など不可能だ。さて、どうしたものか・・・」
グルーは、腕組みをし、目を閉じた。他の三人の女神は、息を飲んで、グルーの様子を伺っている。しばしの沈黙が下りた後、グルーはゆっくりと瞳を開いた。
「残党を生け捕りにし、捕虜とする。科学技術を取り入れるのだ。奴らを自国には、帰さぬ。さすれば、復讐の連鎖も断ち切れるであろう。我々が甘かったのだ。やるなら、徹底的にだ。二度と歯向かうなどと想像すらできぬほど、圧倒するべきであったのだ」
「お待ち下さい! グルー様! 無益な殺生は、望むところでは、ございません! 生まれは違えど、同じ人の子でございます!」
「有益だ。我々が加護する人の子を守るのだ。これまでは、お前の顔を立てていたが、この惨状が結果だ。アルプよ、二兎追う者は一兎をも得ずだ」
「二兎を追う事を放棄した者は、決して二兎は得られません!我々が理想を捨ててはなりません! 殺すのは、簡単な事です。しかし、最適解を見誤ってはなりません!」
「その最適解を見つけるまでに、どれほどの人の子が死んだ? 理想論を吐くだけでは、誰も救われない事を目の当たりにして、よくもぬけぬけと吐けたものだな!?」
怒鳴り声を上げたグルーの背後に、爆炎が立ち上った。グルーを睨みつけるアルプの周囲が、凍っていく。
二人の女神が、今にも殺し合いを始めてしまいそうなほど、殺伐とした空気が流れていた。
人の子を守る為に、人の子の命を奪う。
足し算や引き算では整理できない現実が、目の前に広がっている。
嗚咽を繰り返し、涙を流している氷雪の女神アルプ=ウィントは膝から崩れ落ちた。呆然と目の前の惨状を眺めている。血の匂い、肉が焼ける匂い。大切な者を失った人の子の泣き叫ぶ声。耳を塞いで、目を閉じた。
「それは、現実逃避だ。アルプよ。己を正当化する事などできぬ。己の犯した罪は背負うべきだ」
大柄の女性、灼熱の女神グルー=マーサは、厳しい表情でアルプを見下ろしている。
「グルー様、私達に正義はあったのでしょうか? 人の子を守る為に、人の子の尊い命を奪う行為に・・・」
「これは戦争だ。どちらも正義であり、どちらも悪だ。我々は、この地の民を守らなければならぬ」
「しかし、私達の過ぎた力が、争いを生んでいるのでは、ありませんか?」
泣きながら見上げるアルプに、グルーは腕組みをして遠方を眺めた。
「争いは争いを生む。どれだけ、己を正当化しようとも、身内を殺された者は、殺意を抱く。しかし、殺意を払わなければ、この地の民は根絶やしにされた。全ての業は、我々が呑み込まねばならぬ」
「共存共栄は、できないのですか?」
「不可能だ。人の欲望は際限がない。富で溢れた地は、格好の的だ。この海に囲まれ独立した土地は、世界中の国が喉から手が出るほど、手に入れたいのだろう」
「富や幸福を求める為に、命を落とす。本末転倒ではございませんか?」
「人の子とは、愚かな者だ。欲に上限はなく、欲こそが原動力なのだ。酷く脆く、酷く醜い。しかし、そんな矮小な人の子だからこそ、我々は愛おしく想うのだ」
最も強くリーダー格であるグルーは、眉一つ動かさず、惨状を目に焼き付けるように、方々を見つめている。
「我の熱で人を焼き殺し、アルプの氷で人の心臓を止め、ゾマの風で人を切り刻み、イスブクの霧で人の精神を崩壊させた。それが逃れる事のできぬ現実だ。受け入れ立ち上がるしか道はない。泣き叫び、うずくまっておれば争いが止まるのであれば、我もそうしよう」
灼熱の女神、グルー=マーサ。
氷雪の女神、アルプ=ウィント。
風雲の女神、ゾマ=スリング。
霧雨の女神、イスブク=フォル。
四人の女神が、人の子を守る為に、人の子を殺害した。
海に囲まれた島国には、四人の生ける伝説である女神が君臨している。豊富な資源は勿論、魔力を用いて圧倒的な戦闘能力を誇る四人は、驚異のなにものでもない。しかし、圧倒的な戦力は、どこの国も欲して止まない存在だ。手に入らないのであれば、排除してしまえ。この名もない島国は、世界中から狙われていた。
『我々は、何も求めない。だから、干渉するな』
幾度となく警告をしているにも関わらず、欲をかいた他国の戦力は、この地を攻めてくる。四人の女神は勿論、この地に住む民も疲弊し、辟易していた。
「グルー姉様」
「状況はどうだった? ゾマよ」
「・・・はい。人の子の戦士は、一人を除いて全滅です。多くの非戦闘員も被害は甚大でございます。今回の戦いは、これまでに類を見ない惨状でございます・・・もはや、悲劇としか言いようのない有様で・・・」
「・・・そうか・・・無念だ」
腕組みをしたグルーは、固く目を閉じた。ゾマは、疲れ切った顔で、その場で座り込んだ。皆の様子を伺っていたイスブクが、戸惑いながら歩み寄った。
「グルー姉様。今回の敵は、他国の連合軍でした。魔力と化学兵器を融合させた戦力は、わたくし達に引けを劣らないものでしたわ。今回は、退ける事ができましたが、次はどうなる事か・・・何か手を打たなければ、こうしている内にも、次の敵が攻撃をしかけてくるかもしれませんわ」
「そうだな。今回の連合軍を退けた我々を打ち倒せば、一気に名が上がる。富だけではなく、名声を求める者どもが押し寄せてくる可能性は高い」
「おっしゃる通りですわ。今回の件は、すぐに世界中に知れ渡るでしょう。魔力だけならば、わたくし達の足元にも及びませんが、科学技術の向上には目を見張るものがございました。そして、魔力と科学技術の融合が、これほどまでの威力を持つとは、想定外の事ですわ」
「この地の人の子に、科学技術の向上を求める事はできぬ。独立した島国、ましてや標的となっているこの国に、技術や知識の流入など不可能だ。さて、どうしたものか・・・」
グルーは、腕組みをし、目を閉じた。他の三人の女神は、息を飲んで、グルーの様子を伺っている。しばしの沈黙が下りた後、グルーはゆっくりと瞳を開いた。
「残党を生け捕りにし、捕虜とする。科学技術を取り入れるのだ。奴らを自国には、帰さぬ。さすれば、復讐の連鎖も断ち切れるであろう。我々が甘かったのだ。やるなら、徹底的にだ。二度と歯向かうなどと想像すらできぬほど、圧倒するべきであったのだ」
「お待ち下さい! グルー様! 無益な殺生は、望むところでは、ございません! 生まれは違えど、同じ人の子でございます!」
「有益だ。我々が加護する人の子を守るのだ。これまでは、お前の顔を立てていたが、この惨状が結果だ。アルプよ、二兎追う者は一兎をも得ずだ」
「二兎を追う事を放棄した者は、決して二兎は得られません!我々が理想を捨ててはなりません! 殺すのは、簡単な事です。しかし、最適解を見誤ってはなりません!」
「その最適解を見つけるまでに、どれほどの人の子が死んだ? 理想論を吐くだけでは、誰も救われない事を目の当たりにして、よくもぬけぬけと吐けたものだな!?」
怒鳴り声を上げたグルーの背後に、爆炎が立ち上った。グルーを睨みつけるアルプの周囲が、凍っていく。
二人の女神が、今にも殺し合いを始めてしまいそうなほど、殺伐とした空気が流れていた。
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